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アーサー・リンカ  作者: 由岐
第5章 ときめきは乙女の原動力
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6.嫉妬のラプソディ

 扉の先は、風に揺れる草の音だけが聴こえる物静かな丘だった。

 そして、この場所には私達を待ち受ける者が息を潜めているはずだ。

 やっぱり……ここに居る!

 ただならぬ殺気と、脳内マップに表示される敵マーカー。


「……待ってたよ。待ちくたびれちゃうじゃないか」


 月明かりを背に、祭壇へと続く階段に腰掛けていた青年が立ち上がる。

 逆光で顔は見えないけれど、この声は間違いない。アヴァロン幹部の一人だ。


「貴様は誰だ!」


 私を肩に乗せたマルクスさんと、アーサー達も目の前の敵に警戒する。


「僕はソディ。ソディ・リドラスだ」

「アヴァロンっスか?」

「そうだよ。リーダーの命令でね。イドゥラアーサーとエクスカリバーを渡してもらいたいんだ」


 アヴァロン幹部ソディ・リドラスは、アーサー達メインキャラに次ぐ人気を誇るイケメンだ。


「またかよ……渡すわけねぇだろうが!」

「イドゥラアーサー、あの男は何なんだ?」

「何でか知らねぇが、俺とエクスカリバーが欲しい妙な組織のメンバーらしい。こんなとこまで出て来やがるとは……ゴキブリみてぇな奴らだな」


 アーサーのその言葉が引き金になったらしく、ソディの放つ殺気に怒気が混じった。

 本来ならば、最初に私達を襲って来るはずだったアヴァロンはこの男だった。ソディはアヴァロンのリーダーであるイメラという男に忠実で、彼から与えられる命令には何でも従う。

 ゲームではイメラにだけは会ったことがないから、アヴァロンがどんな目的を持って動いているのかはよく分からない。

 ただ、ソナタもロンドもソディもアーサーとエクスカリバーを狙っているのは、ゲームが現実になった今でも変わらない。多分、聖杯を手に入れたいのだろうけど……

 エクスカリバーは持ち主を選ぶ。アヴァロンがエクスカリバーを手に入れただけでは、本来の力を発揮しない普通の剣と同じになる。

 私のような聖霊は、エクスカリバーの持ち主と力を合わせることで勇者を聖杯のもとへ導くもの。だから現在エクスカリバーを所有するアーサーごと連れ去ることで、その力を無理矢理にでも使わせるつもりなのかな。


「ゴキブリかぁ……ゴキブリ扱いはちょっと遠慮してもらいたいな。寧ろ僕らからしたら、君らの方がゴキブリ並みに邪魔で疎ましい穢れた存在なんだけど……やっちゃっていいかな?」


 暗い茶色の髪を風に揺らし、カチャリと武器を取り出したソディは一段一段階段を降りていく。

 まるで、一段足を踏み出すごとに確実に私達を仕留める決意を強固にしていくように、重い足取りだ。


「何度来ても結果は変わらねぇ。変えさせねぇ! かかってきやがれゴキブリ野郎!!」

「……っ、リーダーの命令が無けりゃお前なんかすぐ殺してやんのになぁ!!」

「来ます!」


 ソディが振り下ろした棒の先端から鎖が伸び、幾つもの棘が付いた鉄球が私達に向かって飛んで来た。

 アーサーとルーガくんはそれを軽々と避けて、テノジェさんを守るエルザさんとシンクさんは彼女を後ろに匿い、マルクスさんは後衛に回って私はそこから戦場を見渡す。

 ソディの武器はモルゲンスタイン、又はモーニングスターと呼ばれるメイスの類だ。棘の付いた球体は重い一撃を浴びせることが可能で、鎧を着ていてもその威力はとんでもない。

 更に、彼が使うモルゲンスタインはその先端からスイッチによる操作で鎖を伸ばすことで、遠くの敵にも攻撃することが出来るのだ。


「エルザさんとシンクさんは巫女様をお願いします! 出来れば攻撃が届かない場所まで避難していて下さい!」

「オッケー!」

「任せておけ」

「みなさんもお気を付けて!」


 テノジェさん達は一旦神殿に戻ってもらい、残った私達でソディを撃退する。

 さてと……戦略を練らないとね。

 今のアーサー達はクイーンスカルを倒したお陰で、いい感じに経験値が稼げた。


イドゥラアーサー・レオール

LV.24

・HP2970/2970

・MP156/156


マルクス・リッグ

LV.24

・HP1920/1920

・MP30/30


ルーガ・ルーチェ

LV.23

・HP2630/2630

・MP210/210


ソディ・リドラス

・HP5700/5700

・MP230/230


 もしもの時の為にと、神殿に到着してからあらかじめHPやMPをアイテムで回復させておいた甲斐があった。

 新しい技も覚えたし、この三人のチームワークも良くなってきた。勝算はあるはずだ。

 そして、相手のソディのHPは5700。まだストーリーの序盤だからか設定されているHPは比較的低めな気がする。

 だけど、ソディは遠距離も近距離も兼ね備えた攻撃を仕掛けてくる。MPが制限されたままのマルクスさんの魔法攻撃はそう何度も使えない。

 HPが上がったからといっても、マルクスさんは防御の低い魔法職だ。後方支援といってもやれることは限られてくる。

 この戦い、もしかしたらキツいかもしれない。

 だけど、私はここで負けられない。

 死なないように、アーサー達をサポートして、元の世界に帰る方法を探さなきゃならないんだから。

 考えなきゃ。ソディに勝つ為の戦略を……!



 

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