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アーサー・リンカ  作者: 由岐
第5章 ときめきは乙女の原動力
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5.光のもとへ

 光の白巫女テノジェさんは、ついさっきまで床に伏せていたのが嘘のように、細身の女の子にしては少し力強過ぎる迫力で私とアーサーに迫ってきた。

 彼女はエクスカリバーの聖霊の私と、エクスカリバーを持つ現代の勇者アーサーと協力することで、このキャメロット神殿に強固な結界を張ることが目的なのだ。


 ここにある神殿は勿論のこと、私とアーサー、マルクスさんが出会った聖剣の神殿も内部は複雑で、魔物が出現するエリアになっている。

 それはやはり、神殿に張り巡らされた結界が膨れ上がる闇のエネルギーに負け、綻びが生じたことが影響している。

 結界の破れた箇所は、外から魔物の気が入り込むことで神殿内に汚れた気を溜め込んでいってしまう。そうなると、どんどん闇の気に呑まれていき、聖域すら魔物の住処となってしまうのだ。

 幸いキャメロット神殿は王都のすぐ側にあることで、テノジェさんや神殿の信徒の人々はエルザさん達騎士団の手で安全を確保出来ている。

 しかし、それは巫女様や信徒達が生活するエリアのみに留まっていた。

 光の精霊を祀る、神殿の最も奥。そこは魔物の邪気が溜まりに溜まった、危険な場所だ。

 人間は、濃すぎる邪気に触れ続けると精神を病み、普通の状態ではいられなくなる。そうなってしまうと、巫女の力で邪気を祓うしかないのだ。


「現世の勇者アーサー様、聖霊リンカ……お二人のご助力があれば、この神殿の穢れを一気に祓うことが出来ます。薬師様のお薬のお陰で、こうして身体が自由になりました。再びわたしの身体に影響が出る前に、一刻も早く結界を張り直さなければ……!」


 巫女は、精霊の力を借りることで邪気を祓うことが出来る。

 しかし、光の精霊の祭壇は、濃密な邪気が溜まった奥にある。彼女の身体が薬によって楽になっていても、世界が闇に呑まれかけている今、油断は出来ない状況だ。


「危険が伴うことは、充分わかっているつもりです。しかし、こうしている間にもわたし以外の巫女も闇の気の影響を受けているはず……。光を司るわたしの神殿に、もう一度結界を張ることが出来れば……」

「ちったぁマシな状況になるってことか」

「はい、その通りです」


 面倒臭そうな顔をするアーサーと顔を見合わせる。


「行くしかないだろうな」


 マルクスさんが言う。


「失われたエクスカリバーの光……それを取り戻すには、神殿で精霊の気を取り込み、少しずつ光を取り戻していかねばならない。つまり、このキャメロット神殿に魔物が蔓延る現状を変えなければ、俺達の旅の目的は果たせない」

「聖杯ッスね」

「ああ。この神殿も、アルマク島の伝染病も放置して良い問題ではないからな」

「……まぁな」


 幾ら面倒だと思っていても、エクスカリバーが選んだのはアーサーだ。彼にしか、この世界は救えない。


「やるっきゃねぇよな……だりぃけど」


 覚悟を決めたアーサーは、テノジェさんに向き直った。


「案内頼めるか?」

「はい」

「エルザとてめぇはどうすんだ?」

「私とシンクは白巫女様を警護する任務がある」

「白巫女様が行くところは、お手洗いと風呂場以外どこまでもついていくからね! それに、オレのことはてめぇじゃなくてシンクって呼んでよ」


 と、笑顔を向けるシンクさん。


「てめぇらは?」

「ご迷惑でなければ、ここまで来たからには、俺もお供させて頂きたいと思います」

「わ、私はその……怪我人が居るのであれば、治療にあたりたいと……思います」


 道中でアーサーにかなり罵倒されたせいか、シーチエさんはすっかりアーサーに怯えているようだ。


「それは有難い。魔物に傷を負わされた騎士を休ませている部屋がある。そこで治療をしてもらえると助かる」

「お任せ下さい」

「本当に助かるよ薬屋さん!」


 エルザさんとシンクさんに感謝されたシーチエさんは、嬉しそうにはにかんだ。

 早速シーチエさんは別の騎士に案内され、怪我人のもとへ向かっていった。

 残った私達とファルータさん。そしてテノジェさんと護衛のエルザさんとシンクさんで光の祭壇へ向かうことになった。

 アーサーとエルザさんを先頭に、テノジェさん、シンクさん、マルクスさん、ルーガくん、ファルータさんと続いて生活スペースになっている区画を歩いていく。


「騎士団は今どうなってんだ?」

「私やシンクのように隊を率いる騎士は、各地の神殿に赴き、巫女様をお護りする任務を言い渡されている。その任務には回復魔術師も同行させているのだが……ただでさえ回復魔法を扱える魔術師は少ない。王都に近いこの神殿には、魔術師は連れて来られなかった」

「だから薬屋さんが騎士達の治療を引き受けてくれて、オレ達も安心したんだよね。ギリギリの人数で護衛してるから、街まで怪我人を運ぶのも大変だし」

「パンウィラートも任務で遠くに出ている。やはりそちらの神殿にも魔物が出ているらしい」

「全く、厄介なもんだぜ……」


 しばらくすると、外へ続く扉が見えてきた。

 光の祭壇へは、一度この扉を通って外に出て、階段を上がった先にある離れまで行かなければならないのだ。

 扉の両脇で警備する騎士二人に見送られ、私達は扉を抜けた。



 

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