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アーサー・リンカ  作者: 由岐
第5章 ときめきは乙女の原動力
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2.白き巫女の山へ

 私達はファルータさんに案内され、イゲイル薬品の王都支店へとやって来た。

 薬師であるシーチエさんが、特別な薬を完成させるのを待つ為だ。


「色んな薬が置いてあるんスねー! 腹痛、頭痛、火傷の薬に解毒薬……おわっ! このポーション安くないスか!?」

「安さと品質の良さが、イゲイル薬品の売りだからな」


 商品棚にこれでもかという程並べられた瓶詰めの薬は、そのどれもが手に取りやすい価格で販売されている。

 ルーガくんはポーションの瓶を手に取り、マルクスさんもその隣で棚を眺めていた。


「そういやよぉ、てめぇらあの洞窟で薬草取ってたよな?」


 気だるそうに壁にもたれかかるアーサー。


「それならマルクスさんが持ってるよ。ですよねマルクスさん?」

「ああ、確かに俺が所持している。これでポーションを作ってもらうんだったな」


 マルクスさんは数種類の薬草が入った袋を取り出し、薬の作成をお店の人に頼んだ。


「これを頼みたい」

「はい。この量ですと……三百スピリットでポーション二つ、解毒薬一つ、解熱薬一つをお作り出来ます」

「ではそれで頼む」


 三百スピリットでこれだけの薬を作ってもらえるのなら、普通に買うよりかなりお得だろう。半額くらいで済んでしまうのだから。

 スピリットストーンで料金を支払い、後は薬の完成を待つだけだ。

 薬草はそのまま使用しても効果を発揮するが、このように薬にすることでよりその効果を引き出すことが出来る。

 薬だけでなく、材料と料金さえ支払えば料理や装備品も通常より安く手に入れられるのだ。


「皆さん、お待たせ致しました……!」


 店の奥から、疲れた様子のシーチエさんがやって来た。後に続いてファルータさんも来る。


「皆さんからお譲りいただいたフェグリス草で、漸く薬を完成させることが出来ました!」

「待ちくたびれちゃいましたよー!旦那さんのその薬、さっさと持って行くッスよ」

「ええ、勿論そのつもりです」


 これから私が向かう場所は、キャメロット神殿だ。

 【幻のハーブを探して】に連動して始まる今回のイベント【白き巫女の病】は、ストーリーを進行させる為には攻略必須。

 前回は昼間に攻略したけど、今はもう深夜になっちゃった……


「俺もシーチエも戦いの心得はありますが、騎士団の方のお話によれば、神殿までの道のりは勿論のこと、内部にまで魔物が出現しているとの報せを受けております」

「巫女が居る神殿に魔物が出るなんて、聞いたことねぇぞ?」

「多分聖剣の神殿と同じような状況になっているんだと思います」

「通常ならば魔物が出現しないはずの聖域……それはどこにある神殿も変わらない。エクスカリバーの力の消失が原因で、他の神殿にまで影響が出ているという事か」

「それもあると思います。加えて、今キャメロットの巫女様は弱っていますから、結界が揺らいでいるのではないかと」


 巫女も聖霊と同様に、光の存在だということは〈ファンキス〉のデータが消える前までで学んでいる。

 特に、このキャメロットにある神殿は光の精霊を祭る神殿だ。

 光と闇のバランスが崩れた今、光の巫女が一番強い影響を受けるのは当然だと言えるだろう。


「それじゃあ早く行かないと巫女さんが辛いままじゃないスか!」

「準備が整っているなら、早々に神殿へ向かおう」

「問題ねぇ」

「俺様も準備万端ッス!」

「私もいつでも行けます!」

「私達も」

「抜かり無く」


 パーティーメンバーに、一時的にシーチエさんとファルータさんが加わった。


「行くぞてめぇら」

「はい!」


 一番に店を出たアーサーに続いて、私も外に出る。

 シーチエさんが巫女様の為の薬を作っている間に、街の明かりはすっかり消えてしまった。

 夜中には街灯も消えてしまうので、MP30のマルクスさんに代わりシーチエさんが杖の先に魔法の明かりを灯してくれた。

 私達が向かっているキャメロット神殿は、王都のすぐ側にある山の頂上にある。

 神殿までの道のりには、ファルータさんが言っていたように魔物が出る。暗い中での戦闘は危険を伴うし、夜中は魔物の活動が盛んになる時間帯でもある。人数が多いからといって油断は出来ない。

 王都の門を抜けて山を登り始めると、早速脳内マップに敵を発見した。


「前に敵が四体居ます!」

「いきなり出やがったか」


 現れたのはウルフの群れだった。


「マルクスの旦那はリンカちゃんをお願いするッス!」

「ああ」


 私はマルクスさんの肩に避難し、アーサーとルーガくん、そしてシーチエさんとファルータさんが前へ出た。


「こんなザコ、すぐにカタ付けてやるよ!」


 アーサーが剣を振るい、あっという間にウルフを一匹切り伏せた。


「わ、私も……!」


 杖を構え、攻撃魔法を詠唱し始めるシーチエさん。


「あ、あの! シーチエさんは後ろで控えてて下さい!」

「弾ける雷電、乱れ舞え……」

「止めなさいシーチエ!」


 私とファルータさんが詠唱を止めようとするものの、集中していて聞こえていないのかシーチエさんは残りのウルフに杖を向ける。


「逃げてアーサー! ルーガくん!!」

「サンダーボム!!」


 激しい光で目の前が見えなくなり、木々がへし折れる音と爆発音が山に響き渡る。

 マルクスさんに爆風から守ってもらった私は、恐る恐るステータス画面を確認した。

 よ、良かった……。二人共巻き込まれなかったみたい。

 アーサーとルーガくんのHPに変化は無い。シーチエさんもファルータさんも無事だ。


「……何だったんだ」


 静かに驚くマルクスさん。

 尻餅をつくシーチエさん。

 溜息を吐くファルータさん。

 安全な場所に逃げていたルーガくん。


「うわぁ……」


 そして、思い切り不機嫌な顔を(すす)で黒く汚したアーサーが、シーチエさんを睨んでいた。



 

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