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アーサー・リンカ  作者: 由岐
第3章 仲良くなりたい
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3.大盗賊の円舞

 【大盗賊の円舞】イベントで登場したルーガくんは、目にも留まらぬ早業でアヴァロン幹部のロンドの手から盗まれたエクスカリバーを取り返した。

 本来ならルーガくんはこの村で仲間になるはずがないのだが、ロンドの出現が切っ掛けで彼も姿を現したのだろう。

 ゲーム時代では有り得なかった事がこの〈ファンキス〉生活一日目で立て続けに起こっているが、ここまでハプニングが連続すると細かい事も気にならなくなってくる。


「あっちの金髪の旦那さん、具合悪いみたいッスね。赤髪の旦那さん、俺様があいつを追っ払うんで金髪の旦那さんとお姫様をお願いするッス!」

「お、おい!」


 ルーガくんは未だ荒く息をするマルクスさんをチラリと見て、それから私に完璧なウインクをかましてから懐から取り出した短剣を構えアーサーの言葉を無視してロンドに突っ込んで行く。

 ルーガくんは短剣と投げナイフ、そして時には弓まで扱う素早い攻撃がウリだ。

 彼にエクスカリバーを取り返され頭に血がのぼっているロンドが相手なら、ルーガくんのスピードをもってすれば簡単に翻弄出来る。

 一回の攻撃で与えるダメージは小さいが、ナイフを投げてバルディッシュでそれを弾いた隙に背後に回り込み短剣を叩き込み、バルディッシュを振りかざすロンドの攻撃をすぐさま避け、再びナイフを投げまた同じ流れかと思わせたところで意識を後ろに向かせて正面に連続投げナイフ。


ロンド・シェルドン

・HP3210/6000


 小ダメージの積み重ねではあるものの、ロンドのステータスを確認すると最大HPから既に半分近く削っていた。


ルーガ・ルーチェ

HP1357/1670


 ルーガくんはというと、動きの重いロンドの攻撃のほとんどを避けていてHPは最大値から少し減った程度に留めている。

 因みにアーサーは神殿でのソナタ戦の時よりHPが上がっている。

 オリアーちゃんと倒した(というか途中から見守っていた)キノコタケノコ戦争で得た大量のゴブリンの経験値のお陰でレベルアップし、HPは1740まで上がったのだ。

 アーサーは戦士という事もあり、パーティーの中では一番HPが上がりやすい。反対にマルクスさんの場合MPが上がりやすいのだが、ロンドの仕掛けた魔法陣の影響で折角のMP最大値がたったの30ぽっちしかない。

 このマルクスさんのMP最大値が下がるイベントはロンドとルーガくんが出現する【大盗賊の円舞】で強制的に発生するイベントで、一種の呪いであるあの魔法陣によってマルクスさんがほぼ使い物にならなくなってしまうのだ。

 そこで新たに加わるメンバーのルーガくんが貴重な戦力になるのだが、本来ならばまだこのイベントが起きる頃にはエクスカリバーの鞘があるはずであり、回復職不在の今マルクスさんに鞘を持たせ、薬草やポーションでの回復補助を任せるというのが一般的な戦術とされている。

 まあ、あの魔法陣は魔術師封じというだけなのでHPまでは下がらない。ゴブリン戦争で手に入れた一万スピリットで新しい装備品を購入して防御力を上げればそこまで苦しくはないかもしれない。


 そんな事を考えていると、ルーガくんは固有技である『五月雨』を使い、ロンドの周りを投げナイフで囲い込み動きを封じていた。


「動けねェッ!?」

「俺様の五月雨から逃げられると思わないで下さいッスよ!」


 ルーガくんの『五月雨』はナイフで囲んだ地面に沼を発生させ動きを封じる技。ルーガくんの固有属性は土で、風属性であるロンドの弱点でもある為そう簡単には抜け出せない。


「今のあんたは最高の的ッス! 喰らうがいい!」


 どこからか取り出した弓を装備し、狙いをロンドの頭上に定めるルーガくん。


「愛と正義の豪雨、ジャスティスレイン!」


 愛はどこにいったのか、正義の矢の雨を降らせたルーガくん。

 一歩も動けないロンドのHPはみるみるうちに減っていき、着ているコートも貫かれていく。


「くっそォ……こんなのソナタに聞いてねェぞォ!」


 するとロンドはバルディッシュを振り回し、竜巻を発生させ矢の雨を吹き飛ばしてしまった。


「危ねえっ!」


 ロンドが吹き飛ばした矢の何本かが私達に向かって飛んできた。

 アーサーは私とマルクスさんを庇うように前に出て、エクスカリバーで矢を切り落としたではないか。


「おい、矢に当たってねえだろうな!」

「だ、大丈夫です! 私もマルクスさんも怪我はありません。凄いねアーサー!」

「これぐらい出来て当たり前だろうが。それにしても……」


 ルーガくんの戦いぶりはなかなかのものだ。

 矢から守ってくれたアーサーも凄いと思うのだが、さっきまであれだけ苦戦していたロンドを彼一人で相手して追い詰めている。


「ちくしょォ……」


 ロンドの周りにソナタと同じ黒い霧が立ち込めてきた。


「俺様までイメラに説教されちまうじャねェかァ」

「逃げるつもりか……!」

「そ、そうなんスか!? んー、せいっ!」


 ソナタが姿を消したのと同じあの霧。ロンドが逃げる前にルーガくんが矢を放ったが、ロンドに当たる前に彼は消えてしまっていた。


「今回も逃げられちゃいましたね……マルクスさん、立てますか?」

「ああ……問題ない」


 私が普通の人間だったら良かったのだが、お人形サイズの聖霊である私ではマルクスさんが立ち上がる手助けが出来ない。

 代わりにルーガくんがマルクスさんに肩を貸してくれた。


「マルクスさんっていうんスね。そこの宿屋で休んだ方がいいッスよ」

「すまないな……」

「そっちの旦那さんも、良かったらこれ使って下さいッス」


 腰のポーチからポーションを取り出したルーガくんがアーサーに投げ渡し、それをキャッチする。


「俺様はルーガ・ルーチェ。怪しいもんじゃないッスから安心して下さいね!」


 鞘の完成も間近だという事で、アーサーはまたアヴァロンにエクスカリバーを盗まれては困ると武器屋で待機、私とマルクスさんとルーガくんは宿屋で休む事になった。



 

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