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アーサー・リンカ  作者: 由岐
第3章 仲良くなりたい
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1.災難続き

 〈FANTASY OF SWEET KISS〉、通称〈ファンキス〉はアーサー王伝説をベースにした恋愛ファンタジーVRRPGである。

 異世界アスタガイアを舞台に、プレイヤーはエクスカリバーの聖霊としてイドゥラアーサーの旅をサポートし、その旅を妨害してくる謎の組織アヴァロンと敵対する。

 私、浦鈴歌は原因不明の故障か何かでこの〈ファンキス〉の世界、もしくは〈ファンキス〉に酷似した世界に閉じ込められてしまった。

 発生するはずの敵との戦闘イベントが発生しない、登場しないはずのゾーンでとあるキャラクターが登場する等、私が知っている〈ファンキス〉とは異なった展開を見せているこの異世界。

 元の世界に帰る方法も分からないうえに、帰る方法が見付かるという保証も無い。

 私とアーサー達の終わりの見えない冒険は、まだ始まったばかりなのだ。


 オリアーちゃんは無事仲間のシーチエさん、ファルータさんと合流し私達と別れた。

 今私達はルスク村の武器屋にエクスカリバーを預け、鞘を作製してもらっている。


「夜には完成するそうだ」

「それまで暇ですね……」


 鞘が出来上がるまで、ひとまず宿屋で休む事になった。

 私とマルクスさんはテーブルの上に地図を広げ、これから向かう目的地の確認をしている。

 その横のベッドでは重い鎧を脱いで寝転がっているアーサーが、気怠そうにこちらを眺めていた。


「リンカ、俺達の旅の目的は知っているな?」

「はい。エクスカリバーの正統な所持者であるアーサーは、聖霊である私の導きによって聖杯を手に入れる──その為に旅をしているんですよね?」

「その通りだが……何でてめぇがそこまで知ってんだよ」

「私はエクスカリバーの聖霊ですから、それくらい分かりますよ」


 本当は途中までプレイしてるから知ってるだけなんだけどね。

 アーサー達が探している聖杯というのは、どんな願いも叶えると言われる伝説の秘宝の事だ。

 エクスカリバーを持つ者のみが手にする事が出来る、奇跡のアイテム。

 彼らはそれを求めて聖剣の神殿にやってきたのだ。


「エクスカリバーさえありゃ聖杯は簡単に手に入るんだろ?」

「いや、それは無い」

「ああ?」


 マルクスさんは鞄から一冊の古い書物を取り出し、ページをパラパラと捲って挿し絵のあるページを開いて見せた。


「この古文書にはこう記してある。聖剣の力は闇を払い、遠ざける。つまりエクスカリバーが祭られているあの神殿には、魔物が立ち入る事が出来ないはずなんだ」

「ちょっと待てよ! 神殿には魔物がゾロゾロ居やがったじゃねえか!」


 そう。アーサーとマルクスさんは私と出会う前に、多くの魔物を倒していたのだ。

 その後魔物が再度出現しなかった理由は分からないままなのだが。


「まさかあの剣偽物なんじゃねえのか?」

「それならば何故リンカが居る?」

「あ……でもよ、それじゃあおかしくねえか? エクスカリバーに魔物は近寄れねえんだよな?」

「実は……エクスカリバーの力が消えてしまったんです」


 聖剣の力は、先代の所有者の時代ではまだ十分残っていたらしい。

 しかし、世界の光と闇の均衡が崩れ、エクスカリバーが強大になっていく闇の力に耐えきれず闇に飲まれ、力を失ってしまった。


「聖杯の下へ辿り着く為には、失われてしまったエクスカリバーの光の力を集める必要があります。それと……鞘も」

「エクスカリバーの鞘には特別な力があるんだ。鞘に込められた魔力によって、傷を負っても一滴の血も流さない。どれだけ酷い傷を負おうと癒やす力がある」

「あの鞘にそんな力があったのかよ……」


 鞘の力があれば回復職の居ない現在、冒険に役立つ事は間違い無しだ。

 だがその鞘はアヴァロンのソナタに奪われてしまった。

 エクスカリバーまで取られなかっただけまだマシかもしれないが、こうなってしまった以上、いち早く回復職をパーティーに加えなければならない。

 今後の旅は勿論、アヴァロンとの戦いにも影響が出てしまうだろう。


 ルフレンくんが居るのは……


 記憶を掘り起こしているその時、ドタドタと激しい足音が聞こえてきたかと思うと勢い良く部屋のドアが開かれた。

 そこに立っていたのは、鞘の製作を頼んだ武器屋の主人だった。


「何かあったのか?」

「た、大変なんだ! 預かっていた剣が、変な男に盗まれて……」

「そんなっ!」

「まさかまたあのソナタってヤツじゃねえだろうな!」


 この短時間で二度もアヴァロンの襲撃に遭うとは予想外だった。

 アヴァロン幹部は計六人。あれだけのダメージを与えたナス野郎ソナタが来るとは考えにくい。


「兎に角その男を追いましょう! 私についてきて下さい!」


 犯人がアヴァロンだったらマップに敵アイコンが表示されるはず!

 羽根を羽ばたかせ、脳内でマップを開いてアイコンを探す。

 宿屋を飛び出して外のマップに切り替わると、宿屋に赤いアイコンが表示されていた。


 宿屋の中に敵!? 

 ……違う、そうじゃない。

 外に切り替わってから表示されたという事は、敵は外に居るという事。

 つまり敵は……!


「屋根の上です!」


 振り返り上を見上げると、太陽に反射し煌めいた金属の光が二つ。

 マルクスさんは素早く杖を構え、屋根の上の男に向けて魔法を放った。


「熱き鮮紅、彼の者を貫け! ファイアアロー!」


 

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