第6話 俺の骨は鋼並の重さと強度をもっている
「うおわああああぁぁっぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
「カタカタカタカタカタカタカタカタッ!」
「あっはっはっはっはっはっはっはっは!」
追撃がくる前に後方に転がるようにして距離をとる俺。それを嘲笑うかのように歯を打ち鳴らす白骨死体。それを見て腹を抱えて高笑う母親。くそっ、味方がいない。
とりあえず、若干味方よりの母さんが腰かけてる枝の近くまで下がっておく。
「おや、どうしたんだい。もう終わったのかい?」
「母さん、あれが魔物だと絶対知ってて黙ってただろ」
「そりゃそうさ、この森にある死体があんなに綺麗に五体揃った状態で残ってるもんかね。頭か手足の二・三本を食いちぎられてるのが普通だよ。それに、あれだけ魔力が漏れてたら誰だって分かるさ。」
「ここの普通が俺にとっての異常ってのは分かったよ。でも魔力は無理で感知ってのは無理だ。俺そっち方面の才能からっきしだし」
「ああ、そういえばそうだったね。まあ、あれくらいな魔力なんかなくても倒せるからね。それじゃ、これで頑張ってきな」
そう言って、母さんは背嚢から鋼鉄製の両手剣を投げて俺に寄越した。
え、なにこれ。
「なにボーっと突っ立てるんだい。相手さんがお待ちだよ」
「え、いきなり俺が戦うの?母さんが見本見せたりとかしてくんないの!?」
「何を甘ったれたこと言ってんだい。魔物でも下級なスカルなんてただの動く骨じゃないか。さっさと倒しちまいな」
いや、それ母さん基準だからね!? スカルとか普通に初級冒険者の登竜門的な扱いだからね!?
なんて訴えが通るはずもなく俺は白骨先輩ことスカルに対峙することになった。
こういった死体系の魔物には浄化の使える聖魔法や聖水なんてのが効果的だがあいにく持ってきてない。残る手段は相手が動けなくなる程度に背骨や頭蓋骨を破壊するしかないが、流石に両手剣で砕けないことはないだろう。
そう思っていた頃が俺にもありました。
「こいつ硬ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
いやいやいや、何でたかが骨に「カキィン」とか澄んだ音を立てて俺の剣が弾かれるんだよ! 背骨も頭蓋骨も一撃ずついれたけど、ちょっとかすり傷がついただけとか。
しかもこいつ、かなり動きが素早い。避けきれずに何度かガントレットや胸鎧にかすらせちまってる。まあ、こっちにはかすり傷一つないけどな。一級品の(呪いの)防具なんで。
とか余裕かましてる場合じゃなかった。俺は徐々に息が上がってきているが、相手は呼吸なんかしてるはずもなく速度も衰えない。相対的に段々攻撃を避けきれなくなってきていた。
とういうか、こいつ本当に初級の登竜門? だとしたら、全世界の冒険者のみなさん正直冒険者という職業を嘗めてました。心よりお詫び申しあげます!
ってうわぁっ、いま頭にかすった! 絶対何本か髪の毛もっていかれてる!
「ちょ、母さん助けて! こいつ強い上にめっちゃ硬い!」
「どうやら、そいつはスカルじゃなくてスケルトンウォリアーだったみたいだねぇ。元になった死体が良かったのか、ここで命を吸って強くなったのか。あるいは両方か。まあ、そいつ相手にそれだけ粘れるんならあんたも大したもんってこった」
「いや、今はそんな分析とか珍しく俺を褒めるとかはどうでもいいから助けてくださいお母様!」
ここまで言ってようやく、やれやれといった感じで母さんは重い腰を上げて枝の上に立ち上がった。
「いいかい、そいつらみたいな死体系の上位種はしぶとい上に再生もする。そんな風にちまちまやってても、じり貧で殺されるのがオチさ。そいつらを相手するときは一気に仕留めるんだよ。こうやって、ね!」
瞬間、俺の目の前にあった地面が爆発した。
飛び散る泥、吹き飛び転がる俺、木の幹に頭をぶつける俺、泥に塗れてうずくまる俺、さっきまで骨先輩が立ってた場所に汚れ一つなく仁王立ちする母さん、砕け散った骨先輩。
え、なにこれ。何が起きた。
「一体何したんだよ母さん…………」
「ただの踵落としさ」
「ああ、今朝母さんが俺をベッドごと抉り殺そうとしたやつか」
「そうそう。あれと大体同じ威力があれば、こんな風に木端微塵だよ。今の方が若干威力は抑えてるけどね」
……………………生きてるって素晴らしいね。
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次回も頑張ります ('ω')ノ