第4話 お前の意志は私のもの、私の意志は私のもの
「あ、あれー、おかしいなー。何か呪い(のろい)とか聞こえた気がしたぞー? 呪い(まじない)の間違いだよね? やだなー母さん、そんな言い慣れない冗談を言うなんてー」
「いいや。言い間違いでも聞き間違いでも冗談でもなく、そいつらは一級品の呪詛が籠った装備達さ」
あははーなるほどねー、一級品の装備かと思ったらそこに籠められた呪いが一級品でしたー。わーおもしろーい。
「って、何をやってくださってますか!? どこから見ても普通の鉄装備に呪詛って!」
「いやぁ、その装備を着けてる時にうっかり悪魔を蹴り殺しちゃってねぇ。そいつの返り血を浴びたもんだから、装備は汚れるは呪われるわであの時は大変だったねぇ。あっはっはっはっは!」
「いや笑いごとじゃねぇだろ!? 呪われてる装備なんて着てられっか! こんなもんすぐに脱いでやる……、あれ、すぐに脱いで………」
あ、あれ…………脱げない…………とういうか、さっきまであった留め金とか金具が無くなってる!?
「ああ、もちろん脱げなくなる呪いは標準的にかかってるよ。脱ぎたかったら大司祭にでも頼むしかないね。ま、諦めて受け入れな」
なんて母さんは軽く言ってくれてるけど、大司祭しか解けない呪いってなにさ!? そんなもん上級悪魔クラスの呪いじゃないか!
確か、上級悪魔一体で一国の戦力に匹敵するんだったか…………え、じゃあそれを蹴り殺した母さんは何者? ああ、戦乙女様でしたね。
「簡単に外せないのは分かったし受け入れるけど、こいつら他にどんな呪いがかかってんだよ。さすがに即死級のものはないみたいだけど」
「何だったかねぇ。うーん……外せないのと………昔すぎて忘れちまったよ」
「ああ、なるほど。忘れたんならしょうがない。うん、しょうがない。………とでも言うと思ったか馬鹿母! 何だよ忘れたって!息子の一大事だぞ!?」
「ああもう五月蝿いねぇ。何も死ぬようなことにはならないよ。男が細かいことをグジグジ言うんじゃないよ、まったく」
「ちょま、呪われることが細かいとかどんだけ非道」
「それとも何かい? 森に行くのを止めて、三日間くらいぶっ通しで私と組手でもする方がいいかい? 私はそれでも構わないさ」
「いいえ、滅相もございません。お供させていただきますお母様」
残像が残る速度で土下座フォームへと変形する俺。
いやほら、やっぱ親の言うことはちゃんと聞いとかないとね。決して組手が怖いとかじゃあありませんよ。今(組手で)死ぬか、後(森で)死ぬかの二択で後を選んだなんてこともありません。
それに、母さんも何の勝算もなく無茶を言いだしてる訳じゃないだろうし。
「さて、それじゃあ早速出発するよ。なに、あたしがついてるんだ大船に乗ったつもりでいなよ」
「分かったよ。それで、荷物とかは準備出来てるんだろ?どこに置いてんの?」
「…………………」
「………………思いつきだから何も準備してない?」
「………冒険ってのは準備の段階から始まってるんだ。そこで、その準備からあんたに任せようと思ってたんだ。さあ、早速準備に取り掛かりな」
………………大丈夫かなこの大船。
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