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第48話 卓上の錬金術師

 ご無沙汰しております。ネットの環境等々により、しばし離れておりました。

 また、ぼちぼちと再開していきたいと思います。


 以下、何事もなかったかのように本文スタート。

 ガタッ……


 …………もう朝か。んー……昨日はロックイーター相手に大立ち回りをしたせいか、なんか疲れが残ってる気がするな。


 ガタガタッ……


 いやこれはあれか、鎧の解呪に失敗した時に生命力をギリギリまで吸い取られたからか。


 ガタガタガタッ……!


 まさか、教国の聖女様でも解呪出来ない呪いだとは思わなかった……。もうこれ以上ってなると、枢機卿とか教皇とかになるんじゃね?

 さすがに、そんな伝手は持ってないしなぁ。母さんなら持ってるかもしれないけど。


 ガダガダガダッ……!


「……って、朝からガタガタガダガダうるせぇぞ、ライオ!」

「主がさっさと外に出さぬのが悪いんであろうが! いつまで我をその狭い鞘に閉じ込めておくつもりか!」

「出さねぇも何も、王都から帰ってこっちろくな反応も示さないお前が悪いんだろうが!」

「ふはははは。なに、少し考え事をしていたものでな」


 考え事っつうか、自分の存在が忘れ去られてたことに衝撃を受けて落ち込んでただけだろうに。しかも、寝てたろお前。

 落ち込んで引きこもる魔剣とか聞いたことないわ。 


「考えてもみれば、永き時間の中で人々の記憶から我の伝説が消え去るのも自然の摂理というもの。これは仕方なきこと」


 おお、何かライオが初めて知的なことを話してる。でもアーサー国王の話だと、永き時ってか最初っから存在しないことにされてるらしいぜ?


「そこで我は考えた。ならば、今この時より新たな我の伝説を作り上げればよいのだと!」


 お、おお……。何か分からんけど自然と拍手をしたい気分になってくる。言ってること滅茶苦茶だけど。


「そうは思わんかね、疾風とやら」

「築き上げたものが崩れたとて、また再度築き上げればよい。なるほど、それも道理でござるな」

「おおぅ、疾風いつの間に!?」


 ライオのやつ何言ってんだと思ったら、いつの間にか隣に疾風がいるし。え、扉が開いた音も気配も感じなかったんだけど。


「いやなに。朝餉が出来たのでアリス殿を呼びに来た際に、室内から話し声が聞こえたので様子見をしていたでござるよ」

「様子見ってか、気配すら消して最接近してるけどな」

「その辺りは忍びの得意分野でござるゆえ」


 俺も獲物狩るためにある程度気配は消せるけど、ここまではとても無理だな。


「それにしても。ただの両手剣ではないと感じてはいたでござるが、まさか知性ある武器であったとは」

「元はちょっと質が良いだけの普通の両手剣だったんだけどなぁ……」

「我が憑代よりしろにする前から、魔を宿した剣であった気がするが?」


 ああ、そういえばインテ村でワーウルフ倒した時に変質したんだっけか。イセス村長にも魔剣一歩手前とか言われてたな。


「まぁ、そういう話も含めて朝飯食べながらにしようぜ。マナにもライオを紹介したいし、せっかく疾風が作ってくれた朝飯が冷めても悪いし」

「そうでござるな。それに、今後の予定についても決めておきたいでござるしな」

「予定とはあれだな?我の新たな伝説を如何に華々しく築いていくかだな?」

「いやそれはどうでもいい」

「なんと!?」








「それじゃあ改めて紹介すると、だ。こいつが自称魔剣のライオゾーム。俺が王城の地下で朽ち果てかけたとこを見つけて、色々あって何故か憑りつかれて今に至る」

「こら、それでは我がただ憑りついた悪霊みたいではないか。我の助力でそこにいるお嬢さんを、あの気持ちの悪い触手の化け物から助けた部分もちゃんと話さんか」

「まぁ! ライオさんも私を助けてくださっていたんですね。お礼が遅くなりましたが、その節はありがとうございました」

「なんのなんの、我は世にも誉れ高き魔剣ライオゾーム。危機に瀕した女性を助けるは、水が流れるが如く自然なこと」


 こうしてしっかりと話してるのを見ると、ちょっとは魔剣ぽいんだけどなぁ。

 とても俺の身体を乗っ取ろうとして、自分で生み出した化身(偽母さん)に返り討ちにされたようには見えない。


「にしても、剣が喋ってるってのに疾風もマナも驚かないのな。多少なりは反応があると思ってたのに」

「似たような知性ある武器は、拙者の故郷にも何点かあったでござるからな」

「私も師匠が持ってる魔導書に、おしゃべり好きなものがあったものですから」


 なるほどね、二人とも似たような存在を知ってたってことか。まぁ、俺も母さんの私物に何本か似たような喋る剣があるから驚かなかったし、同じようなもんか。


「さて、ライオの紹介も終わったところで朝飯にしようぜ。昨日身体を動かしたせいかえらく空腹だ」

「アリス殿の場合は、一度死にかけたからであると思うでござるがな」

「ん、何か言ったか疾風?」

「いやいや、量を多目に作っているゆえたくさん食べて欲しいでござる」

「そりゃもう、言われなくても」


 疾風の料理は美味いからな。一人での旅が長かったからでござる、とは本人が言ってけど何というかホッとする味なんだよな。こう、何て言うか家庭の味っていうのかな。

 ちなみにエンフィート家の家庭の味は、血抜きと腑分けをしっかりと施された熊の丸焼きかイノシシの丸焼きです。家庭的ってか野性的だな。


「むー、やはり私も料理ができるようになりたいです」

「あれ、マナは料理とか作ってなかったのか?」

「ええ。基本的に料理は師匠が作ってくれていました」

「へぇ、意外だな。てっきり炊事洗濯なんかの雑事は、マナがやってるのかと思ってた」


 うちが基本的にそうだからな。炊事洗濯掃除含めた雑事は全部俺の仕事っていうね。ああ、食材の調達はたまに母さんがやってたか。


「洗濯や掃除その他は私がやっていましたけど、料理だけは師匠がさせてくれなかったもので」

「ふーん。グリモアさんて魔術の研究以外に興味が無いのかと思ってたけど、料理作るのとかも好きなんだな」

「私も魔術研究に集中してもらいたいと思ったんです。それで、以前に一度だけ師匠の誕生日に私が料理を作ったんですが……」

「その時の料理がまずかったとか?」

「ええ、あれはまずかったですね」


 そういう事か。料理ってやつは、火加減から調味料からちょっとした加減で味が左右されるからなぁ。

 でも、そういう失敗しながら上手くなっていくものでもあるんだが。


「まさか、作った料理のことごとくが師匠に襲い掛かるとは思いませんでした」

「まぁまぁ、初めて作った時はそういう失敗も……ん?」

「ケーキもシチューもその他の料理も、手引書の通りに作ったはずなんですけど……」


 待てまてまて、襲い掛かったの?え、料理が?それも、味が美味いとか不味いとかの話じゃないな。

 ああ、さっきのも不味いじゃなくて拙いの方だったか。


「そんなことがあったので、それ以降は私が台所に立つことすら許してもらえなくなりました」

「それは……うん……なぁ?」

「それは……まぁ……しょうがないでござろうなぁ」

「そうですよね。でも、いつかは美味しい料理を作るのが私の夢です!」


 そこまでの惨状になってなお、料理を諦めてないマナが眩しいわ。





「料理について語るのも良いが、お主ら今後の予定を決めるのではなかったのか?」

「え?ああ、そういえばそうだった」

「すっかり忘れていたでござる」

「予定ですか?」


 予定つっても、目下の目標は母さんから頼まれた品物の調達だけどな。それが、半端じゃなく難易度が高いんだけども。


「予定とは言ってもなぁ。当てがあるのは、グリモアさんが持ってるはずのヒュドラの毒血くらいなもんだろ?」

「そのグリモア殿の行方がようとして知れない、というのが問題でござるな」

「うぅ、すみません……。私がマジカルコンパスを盗られたばっかりに……」

「いやいや、あれは仕方ないって。疾風ですら反応出来なかったってんだから」

「うむ。あれは思い出せば出すほど人間離れした技にござる」


 俺にいたっては閃光弾で目つぶし喰らって、地面を転げまわってたけどな。

 あー、あの時の事を思い出すだけで目の奥がズキズキ痛む気がする。


「とはいえ、他の希皇石も精霊の涙も当てなんかねぇしなぁ」

「む、何じゃ主よ。精霊の涙が欲しいのか?」

「俺が欲しいわけじゃないけどな。ライオはなにか思い当たる節でもあるのか?」

「伊達に永い時を生きておらん。精霊に知り合いが居らんこともない」

「まじかよ!初めてお前をすごいと思った!」


 思い当たる節どころか、実際に知り合いだと!?

 あの触腕の化け物と戦った時に戦闘については頼りになるとは思ったけど、まさかここでも頼りになるとは。

 

「少し引っかかるものを感じたが今は気にすまい。とはいっても、懸念がないわけではない」

「懸念?」

「我が封印されてからどうやら何百年も経っている様子なのでな。もしかしたら、住処を変えているかもしれん」

「あー……そうか……。でも、そんなに簡単に住処って変えるもんなのか?」

「普通は変えん。だが、何百年もの時の間に地形そのものが変わっている場合はその限りではない」


 言われればそれもそうか……。よく物語とかに出てくる湖の精霊なんてのも、湖が枯れちまえばそこには住み続けられないもんな。


「それで、ライオ殿と既知の精霊殿はどこに住んでいたのでござるか?もし知っている場所なら拙者が跳べるでござるし、近くならマナ殿の魔術で飛んでいくこともできるでござる」

「出来れば、あまり極地とかじゃないとありがたいですね」

「さすがに海の底とか言われたらどうしようもないしな」

「そこまで極端な地ではない。だからこそ逆に、消滅している可能性もあるがな。ふむ、彼の地はと言ったか……様々な呼び名があったが……」


 流石に何百年も経ってると、思い出すのに時間もかかるか。俺なんて一年前のことすら怪しいけどな。


「思い出したぞ。彼の地はこの呼び名が最も有名だろう。もしかしたら主らは聞いたことも無いかもしれんが、その森はこう呼ばれておったな」


 とはいえ、あんまり知らない遠い地だと心の準備がなぁ。いつかは遠出もしなきゃいけないのは、理解はしてるんだけど。




「不帰の森、と」




 うん、めっちゃよく知ってる場所だわ。

 お読みいただきありがとうございます。


 ご指摘・ご感想等あればいただければ幸いです。

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