第3話 誕生日呪い
<不帰の森>。その名前を聞いた瞬間に俺は全力で首を全力で横に振っていた。
たぶん、振りすぎて首が一周していたと思う。ごめん、今のは誇張しすぎた。
とは、言ってもそれだけ危険な場所なのだ。噂によるとこの世界にいるありとあらゆる種類のモンスターが出現し、奥地に至っては上級の悪魔と遭遇する可能性すらあるという危険地帯。
何でそんな物の近くに村があるのかって? 俺が知りたいわ!
理由があるとすれば、モンスターはほとんど森からは出てこないし、出てきたとしても村人でも倒せる範囲だから、というぐらいだ。
「母さん、それはさすがに無茶だろ。いくら母さんと一緒だからって、俺なんか瞬きする間に死んじまうよ」
「そんな軟に鍛えてはいないけどねぇ」
そりゃあ、確かに日々死にそうになる程度には貴方様から訓練という名の処刑は受けてきましたけど?
何度か口から魂っぽいの出て、死神に狩られかけましたけど? そして、その死神を素手で砕く母さん。恐ろ頼もしい。
「とはいっても私も鬼じゃない。ちゃんと、あんた用に装備を用意しておいたよ。あたしが昔使ってたやつだから、物は古いけど性能は折り紙付きさ。取ってくるから、ちょいと待ってな」
そう言って、母さんは奥の倉庫へ向かっていった。何かすごいガッチャンガシャン鳴ってるけど大丈夫かな……。
それにしても、母さんが俺に装備を譲ってくれるとは少し驚きだ。昔冒険者をやってたことは知ってたけど、ほとんどその時の話してくれないんだよなぁ。
それに、要は誕生日祝いってことだろ?こうやってしっかり祝ってもらうのは初めてな気がする。
でも、母さんの装備だしなぁ……普通じゃないビキニアーマーとかだったらどうしよう。只の変態になっちまうな。
なんて悩んでいると母さんが戻ってきた。
「何をそんな顔して唸ってるんだい。ほら、これがあたしからの誕生日祝いだ。ちぃと汚れちゃいるけど、使う分には問題ないだろうさ」
母さんが持ってきたのは鉄製と思われる鈍い光沢を放つガントレット・胸鎧・グリーブのセットだった。
確かに長く放置されていたせいか所々くすんだ様な汚れが見えるが、穴が開いたり錆びたりといったことはなく、使用に問題はなさそうだ。
もしかすると、時々手入れなんかもしていたのかもしれない。
「へぇ、これを母さんが使ってたのか」
「なんだい、防具なんてそんなに珍しいもんでもないだろうに」
「いや、母さんから冒険してた時の話ってあんまり聞いたことなかったから、興味深いなと思って」
「……聞いても楽しい話じゃないからね。さぁ、眺めてても仕方がないよ。防具は装備しなくちゃ意味がないんだからね」
何故か少し早口になりながら俺を急かしてくる母さん。気が付くと、半ば強制的に母さんから装備を完了させられていた。
「ほう、あんたは華奢だからどうかと思ったけど、なかなかどうしてよく合ってるじゃないか」
そう母さんが評してくる。確かにあつらえたかのように装備達は俺の体に合っていた。いや、最初は違和感があったんだが、いつの間にかピタリと吸い付くかのように違和感は消えていた。
古代に創られた伝説級の武具には持ち主を選ぶものがあるという噂を聞いたことがあるが、もしやこの装備達もそれに近いものなのか?
「いやいや、無事にあんたに合って良かったよ」
「母さん……もしかしてこの装備って?」
「おや、ばれちまったかい。ああそうさ、あんたの思ってる通りで間違いないよ」
やはりそうか、この装備達は
「そいつらは一級品の呪いの装備さ」
………………………ん?
ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回も頑張ります ( ゜Д゜)9