第0話 プロローグ(詐欺)
初めまして。砕駆龍と申します。
拙作ではありますが、海のように広大な心で見守っていただければと存じ上げます。
ここに一冊の歴史書がある。いつ書かれたのか、誰が書いたのかも分からない。
そこにはこう記されている。
「今でこそ栄華を極める我らが文明社会であるが、はるか昔に一度滅亡の危機に瀕していたことを誰か知っているだろうか。しかもそれが、たった一つの存在によって齎されたということを。
王立図書館の資料にも、教会の書物庫の書物にも載っていないことであるが、私は研究で訪れた地にある忘れ去られた遺跡にてこの事実をつかんだ。
しかし、その存在についての詳細なことは全く分からなかった。ただ一つ分かったのは、その恐るべき存在が倒されたのでもなく消えたのでもなく、何処かに封印されているということのみ。封印とはつまり一時しのぎに過ぎず、いつ復活しても不思議ではない。それが百年後か千年後かは分からないが、永遠にもつものではないと私は考えている。いつ破滅がやってくるのかさえ分からないのは、とても恐ろしいことだ。
更に恐ろしいのは、この存在のことを誰も知らないことだ。いや、知っていて見知らぬふりを決め込んでいるのかもしれない。こんなものの存在が知れてしまえば、今の平穏な時が終わってしまうと考えているのだろう。だがあえて私は、この書にはるか昔に現れた化け物の存在を記しておこうと思う。これが世に出れば混乱が少なからず起きるかもしれない。だがしかし、覚悟も理解もなく終焉を受け入れるよりはよほど良いと私は考えている」
しかし、この歴史書が世に出回ることはなかった。著者が急死したため、存在すら知られることなく時代の流れの中に消えていったのである。そのため、やはり内容を知る者がいないまま時は流れていく。
そしてある朝、流れた時はある一つの家にたどり着き、そこにいた少年を否応なしに巻き込んで更に流れていくことになる。
お読みいただきありがとうございました。
次回から本編となりますので、目を通していただければと思います。