平行世界のクロと銀
残酷な描写が描かれる可能性があります。
苦手な方は御遠慮下さい。
平行世界のクロと銀
プロローグ
ほのぼのと
この世界には自覚するしないにかかわらず平行世界が存在すると言う。
全く同じ宇宙、同じ時間に存在するといわれる平行世界。
そこに住む者たちが、水の星「プール」呼んでいる平行世界の地球の物語。
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僕は何か暖かなものに包まれて眠っていた。宇宙の全てと、今まで過ごして来た数え切れない転生の記憶をもって…
そこに誰かがやって来て僕の頬を、いたずらするようにつねるのだ。
「痛いよ!」
僕が大声を上げ、目を覚ますとぼんやりと僕の両頬をつねっている人の形をした何かが正面に居る。懐かしい顔だった、忘れるはずの無い顔がそこにある。面長な醤油顔、整った鼻筋、男性のはずなのに色っぽさをかもし出す切れ長の目、先のとがった耳が白銀の長髪からちらりと出ている。その姿は僕と初めて過ごした時のまま、転生するたびに微妙に姿が変わる僕とは違うのだ。
「おはようクロ…」その声も懐かしい。ごめんよと言わんばかりにつねった頬を両手で包み込む。
「約束は覚えているよね?」これは銀ちゃんの意地悪なのだ。今の僕は全ての記憶を持っているのを知っていて言っている。白銀の毛並みをしているから「銀ちゃん」彼がまだ、ただの銀狐だった時に僕がつけた名前。
黙ってうなずく僕に、そのまなざしが優しく微笑みかける。
「忘れるはずがないよ、5万年前から、君との約束を守るために僕は転生を繰り替えしているんだから…」
「でも、君はあちらの世界に生まれると、いつも僕の事を覚えていないから…」
「しょうがないじゃないか! 人の脳は全ての記憶を持って生まれるだけの容量が無いんだから!」このやり取りも何回目だろう…覚えているだけで100回以上は同じやり取りをしている。
「141回目さ!」と僕が何を考えているのかわかった様に銀ちゃんが正確な数字をいつも言うのだ。
「今度は魔法の使える星みたいだね、今度こそ……」嬉しそうに微笑む銀ちゃんの顔を今度こそ忘れないぞと、まぶたの奥に焼き付ける。
「時間がきちゃったみたいだ」
「じゃあまた!」僕が眠りから覚め、あちらの世界に行くまでの全ての記憶を持った短い時間が終わろうとしている。
「うん……でも君は僕のこと、また覚えてないのだろうな…」と、少し寂しそうな顔をした銀ちゃんが意地悪を言うのだった。
そして僕は『プール』と呼ばれる星に生まれ出る。
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