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AsK  作者: 倉助
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プロローグ~午前~

 今日の天気は雨だ。

 そこまで強く降っているわけではないが、それでも雨だ。気分が良いものではない。湿気でくせ毛は曲がるし、ジメジメして気持ち悪い。しかも道路には水溜まりもできるので、踏んでしまったら靴の中はグチャグチャになるもんだから更に気持ち悪い。

 つまり、雨は気持ち悪い。

 高校が家から近く、歩きで登校している俺にとっては、梅雨の時期や雨の日は地獄である。あちこちに水溜まりがあるせいでソレを避けるために変な歩き方になって、それを小中学生に笑われたり(お前らだってそうなってんだよバーカバーカ!)、坂が多いせいで必ず靴の中はグチャグチャになる。そのせいで対策として靴下は予備に二足ほど持ち歩いている。

 つまり、雨は嫌い。

 つまり、雨とか今すぐ蒸発しろ。

 そんな事を考えながら、俺は校門へ向かった。


 クラスはいつでも騒がしい。

 黒板の周りを陣取ってバカやっているのは、勝手にクラスのかおをやっているリア充ども。真ん中ら辺に小さくも堂々と空間を作っているのは、リア充の呼び方で言うと「陰キャラ」の女子達(ちゃんとした意味は知らないけれど、多分「陰が薄いキャラ立ち」みたいなことだろう)が話をしている。ちなみに男子の「陰キャラ」は=ただのキモいオタク扱いなので、リア充共の威圧にヤられていつも教室にはいない。


『なぁなぁ聞いた? 隣の彩南高も一年が全員いなくなったんだってよ』

『ええー、嘘だぁ。マジそんなのありえないでしぉ?』

『いやいやマジ。マジだって!昨日の昼休みが終わったら途端にいなくなったんだってよ!』


 何かリア充がアホな話してんな。何? いなくなる?

 と、俺がリア充の話に眉を寄せていると、後ろからコホンッと如何にも呼んでいますよ? って音がした。

「やあやあ、黒垣君。そんな真面目な顔して珍しいねぇ。成長期かい?」

 振り返れば、そこには如何にも頭いいですよ? っていう眼鏡なヤロウがニヤニヤしながら俺を見ていた。この涼青高校の第一学年学年主席の日番谷孝介。見た目、学力と共に運動も出来るパーフェクトパーソン。なんだが……

「おい日番谷。お前その寝癖どうした?」

 こいつはオシャレということを知らない。だから頭もヤバいぐらいに寝癖が全開だ。ていうかチョココロネみたいになってるけど……。奇抜すぎて驚き方が微妙になってしまう。

「ふむコレかい? 中々にオサレだと思わないかい?」

 頭いい人に限ってこういう所で抜けているのは何故だろう。だからお前はモテないんだよ。

「まぁいいや。それよりお前、何か用か?」

「ふむ、その言い方は中々に失礼だねぇ。君が彼らの話に興味を持っているように見えたから来たのだけどねぇ」

 微笑みながら言う日番谷の目は、何でも分かっている。さぁ僕に聞きたまえっていうことを俺に表していた。正直ムカつく。けど、コイツの情報ネットワークから得た話を聞けるなら、それは得と言えるだろう。

「いなくなるって話だな」

 その目に引き込まれるように、俺は自然と話していた。

「ふむ。あの話については僕もまだ確かで多くの事は掴んではいないのだけれど。それでもいいなら話そうじゃないか?」

「あぁ、頼む」

「ふむ。それではまず––––」

 日番谷が口を開いた時、朝のHRの合図を知らすチャイムがなった。それと同時に担任の古賀が教室に入って来て、全員が席に着いていないのにも関わらず、出欠を取り始めた。

「ふむ。とりあえずこの件は後で話そうか。それでは」

 俺の名前が呼ばれるのよりも少し早く、日番谷は自分の席に戻っていった。


 ここ最近、都心の高校生にのみ起こる事件がある。

 それは様々な学校の生徒が急にいなくなるという、不思議で不思議な事で、都心に通う高校生の間では神隠しと呼ばれている。

 もちろん警察沙汰になっているのだが、警察もその実態を掴めておらず、あちこちに本当かどうか分からない噂が流れている。

 その噂の中で最も騒がれているものは、「自分を変えて世界に変革をもたらす為の神による試練」だとか何とか。随分とスケールの大きい話である。何処に信じられる箇所があるのか知らないが、世間ではコレが一番信じられている。次は子供じゃあなくて大人に被害が、とか言って。

 という所までは俺も耳に挟んだ範囲の事で、これは最近といっても一ヶ月も前の話だ。ピタッと被害がなくなったから、事件は終わったのかと思っていたのだけれど。それがまた、今週に入ってからまた始まった。

 しかも今度は前回よりも頻繁になっており、一日に二、三校の生徒がいなくなる。犯人が何の理由を持って狙いを絞って来たのやら、警察も必死になって探しているけど、まるで「普通」の力が通じていないかのように、警察の捜査は一歩も進んでいない。

 被害を受けたヤツらの中には俺の知り合いもいて、そいつの学年なんていなくなるだけではなくて、その翌日に全員が死体で見つかるっていう、そんな事もあった。葬式に出た時のあのオバさんの顔、辛いだろうな……。

 という所が昨日のまでに起きた事件に関わる出来事。黒垣正紀が知る情報の全てだ。


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