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王の女・6

「ああ、いきなり驚かせましたね。そなたが余りにも、最後に別れた時の妹に似ていたので……」


 大妃様の御言葉に、私はどう反応するべきか良くわからない。


「この、王様からお借りした玉牌……元はそなたの親御様の形見とか。それが、この私がずっと身に着けてきた物と合わせると……ほれ、このように……」


 本当に二つは、完全に折れた個所がぴったり合わさるのだった。


「まあ、驚きました」


 へええ、この玉牌は、大妃様と関係が有ったのか……


「そなた、親御様の事は忘れてしまっているそうですね」

「はい。大嵐のすぐ後に、海から救い上げられたそうです。近くに異国の物らしい大きな船の残骸がございましたそうですが、私以外、生き残った者は居なかったようです。それも今は亡き養父から様子を伝え聞いただけでして、自分では何も覚えておりません……実の親の顔や声は思い返せるのですが、名前がどうしても思い出せません。ただ、その玉牌を海で拾い上げられた時からずっと、握り締めていたようです」


 そもそも私は、この肉体が八歳の状態の時にこの国に転生したわけで、それ以前の経緯はぜーんぜん、知らないのだ。元の肉体の持ち主は、自分の意志で別の世界に転生すると決めたらしい。気が付いた時に握っていたのが、この半分に折られたと思われる半円型の燔靑玉の飾りというか、玉牌だ。半円と言うよりも、トローチを真っ二つに折った様な形と思ってきたが、大妃様の物と合わせると、それがはっきりした。璧玉と言う奴だ。あの「完璧」の故事に有る玉に負けていない名品だったようだ。聞けば、元々この国の王家伝来の宝であったらしい。それをまあ、こんな具合に真っ二つって……事情は知らないが、結構無茶だ。廃位された先々代様が折って、二人の公主に賜ったと言う経緯ではあるらしい。その姉君の方が大妃様だ。


「妹はこの狭い国の枠に納まるには賢すぎる女でした。異国の言葉も熱心に学び、夫と共に商いで国を豊かにする道を探しに、まずは明に向かいました」


 妹さん夫妻は明で貿易業を行って、かなり稼ぎ、更に新天地を求めて西に向かったという。


「馬尼刺や麻拉加などという所にも店を持ち、商いを広げ、成功していたようでした」


 明経由で、この国の南端の貿易港を経て、さらにそこから都の大妃様に手紙が届く。返事は逆ルートで外国の妹に戻すという形で、六回ほどやり取りが有ったらしい。


「一番最後の手紙には、自分たちの娘がいかに賢いかと言う自慢が書かれていましてね、何とも微笑ましく思ったものです」


 妹さんは子供のころから、西洋からもたらされた地球儀を大切にしていたらしい。


「私はこの世界が大きな球だなどとは信じられませんでしたし、聖賢の教えは空理空論で、国を富ませ貧しい民を救うには役に立たないなどという言葉も、罰当たりな恐ろしいものと思っていました。でも、妹の言うように明は清に負けましたし、我が国の戦の装備は清にも倭にも劣る時代遅れなものだとか、この国の米の作り方が大昔のままで、外国よりずっと遅れていると言うのは本当かも知れないと思っています……ああ……そのような話は、余りすべきではないですね……呉向宮!」

「はい、大妃様」

「ホクロはどうであった?」

「伺っておりました通りに、右の御肩の後ろ側に確かに、三つの星のようなホクロを拝見しました」

「おお、そうか……これをごらんなさい」


 見せてもらった手紙は異国の港から、娘が生まれた事を知らせる内容だった。名前を三星サムスンとしたと言う事、由来は幸せを招くという右肩の三つのホクロだと言う事が書かれていた。

 アハハハハ、そんな名前の企業グループが有ったなあ。女の子の名前としては相当風変りだ。


 客観的な事実はともかく、大妃様の中では私は妹の残した娘、実の姪、一番血縁関係が強い人間、と言う事に決まってしまったようだ。DNA鑑定も無いから、無理も無いか。だが、すると、宮廷の勢力地図が色々変って来てしまうわけだ。


「王様、大王大妃様のお成りです」

 なんだかなあ。これまた大変な事になってきたみたいだ。

リアルなお隣の国の場合、同姓不婚が一般的で、かつての王様は自分と苗字が一緒の人とは結婚できませんでした。

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