いわゆる前振りですか
あくまでパラレル、あくまでフィクションです。12月15日一部変更しました。
家族三人で出かけた帰り、高速道路で事故に巻き込まれた。そして、意識を失ったようだが、どこでどうなったのだろう? 目の前にいるのは誰? ここは一体どこ? あの世なの?
いきなり話しかけられた。
「あなたねえ、無難な選択肢ばかり選びすぎましたね。おかげで魂の錬成度にも大いに問題が有ります。そこで急遽発生した交通事故で死んで頂きました」
「息子と夫はどうなっちゃうんですか」
「気立ての良い若いナースと縁が出来て、その人が理想的な後妻なおかつ継母になるので、心配御無用」
「私がいなくても二人は生き延びて幸せになっちゃう、そう言う事ですか?」
「そう言う事です」
「錬成度とやらの所為で、なぜ急死しなくちゃいけないんですか?」
「錬成しやすい鍛えがいのある魂は、どの世界にとっても必要不可欠な存在なのです」
SFなんかで言う所の多元世界なのだろうか、幾つもの世界が存在するのだと目の前で話をする羽の生えた性別不明な美形さんが説明を始めた。天使だろうか? 自己紹介は無いのではっきりしないが……
「そもそも平和な穏やかな環境で約三十年過ごしたのは、九回目の死の直後のあなた自身の希望が認められたからです」
「普通は希望がかなうんですか?」
「期待されていた課題の達成度と、その世界や社会に対する貢献度により、魂は死の直後に評価を受けます」
その時、評価が高ければ高いほど、その魂の望みがかなうのだそうだ。
「あなたはこれまで十回生まれ変わって錬成度の高い状態なのですが、それにしては今回の二十一世紀の日本での選択肢があまりに安易で楽なものばかりで、問題なんです」
穏やかな性格でそこそこ稼いで真面目で誠実で、あまり目立たないと言う、極めて安全な男と結婚したのが、そもそもいけないと言われてしまった。
「そんな、無茶な。配偶者を自分で選ぶのは、当然の権利だと思ってきました」
「それではあなたの魂のステイタスアップには、全くならないんです」
「別に、アップしなくて良いのに……」
「そもそも、ステイタスアップのために転生する物なんですよ!! 根本からしてなってませんね」
どうやら、天使らしき美形さんの心証を害したらしい。
「今度は選ぼうたって、自分じゃなかなか相手も選べないような世界に送り込みます。そこであなたは大いに頑張ってもらいましょう」
過去のゆがみを訂正したい世界が幾つか有るらしいが、差別と貧困が凄まじくてその世界における健全な発展が出来にくい状態の国が存在する世界に行かされるらしい。
「差別されて、なおかつ貧乏と言う悲惨な状況ですか? 」
「まあ、多少は条件を緩めてあげますが、結構ハードですよ。何しろ男女差別が凄まじいですから」
「どう緩めてくれるんです? 」
「ちょっとばかり、特殊能力を付けてあげましょう」
「魔法とか?」
「魔法は無い世界です。あなたが元いた世界の過去に近い状態の国ですから。あまりにチート的な能力は、魂の錬成にも差しさわりが有ります。慎重にしておきましょう」
結局は「超低周波から、超音波、五キロ先のネズミの足音も聞こえるレベル」の聴力と、「四キロ先の物体もミジンコの手足も正確に見分け、夜も昼並み」の視力、犬の二倍鋭い嗅覚、さらに人類としては最高レベルの味覚と触覚、「オリンピックの全種目でメダルが狙える」運動能力、「殺されかけても十回までは助かる」運の強さ……が認められた。
「十回以上殺されそうになるんですね? それだけですか?」
「知恵と勇気も五割増しにしました。頑張って下さいよ。そうですね、おおむね日本で言う所の安土桃山末期から江戸時代初期ぐらいの時期の隣国に良く似た所です」
「似てるって、多少違うんですか?」
「大事な布石が色々足りません。だから頑張って下さい」
「結婚はするんですか?」
「子供は生んで貰います。その子が送り込まれた先の世界で、重大な役目を果たすでしょうから」
で、子供を作る相手の男性って、どこのどんな人?
「そうですねえ……相手の男性の姿形は思い切りあなたの好みにします。その方がやる気が出るでしょう?」
確かに美形じゃないと、嫌だ。だけど、それ以上に性格が問題だけど、それにその人の境遇や状況は?
「そろそろ時間切れ。ハードな状況でしょうが、健闘を祈ります」
ええ? もう、放り出された! まだ、聞く事が色々有るのに!!
「えっと! 私は美人になるんですか?」
「はいはい、絶世の美女にして置いてあげます。では!」
そこで本当に意識が途絶えてしまった。
連載終了後も、手を入れて直していくつもりです。