お休み届
これは、とある人から聞いた物語。
その語り部と内容に関する、記録の一篇。
あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。
や~れやれ、ようやく学期末のお休みか。
例年ならめちゃんこ忙しい日だったろうが、たまたま日曜と休みが重なるなんざ、宝くじにでも当たったような確率だな。
は~、ぐだぐだしてえ。ここんところ、一日限りの楽園だとどうにも回復した感じがせん。どうせ明日があるのだと考えると、休みというより準備期間な印象でよ、全然気が休まらん。
今日も休み、明日も休み。明日も何もしなくていいと分かっているからこそ、真の休みが降り立てる。そのような気がしないか?
今後のことを考えずに、自分の全力をぶつけられる。切り替えの早さの問題ではない、明日に支障が出ても問題ないことが肝要だ。
でも、同じことを考えるやつが、自分しかいないと考えるのは危ういこと。ほかの誰かも考えていて、実行に移していないだけ。そう用心しておいたほうがいい。
僕のむかしの話なのだけど、聞いてみないかい?
ある朝のこと。
いつも通りに目覚まし時計で起きた僕だったが、ふと、いつもより30分ほど早くベルが鳴ったことに気付いた。
当時の時計は、アナログにネジを回してベルの鳴るタイミングをセットするタイプだった。ゆえに少しくらい時刻が前後することも、なきにしもあらず。
問題は、その目覚まし時計の時刻を僕は、昨日はおろかこの一週間ほどいじっていないという点。昨日まではきっちり指定していた時刻になっていたんだ。
二度寝をするにも半端な時間。ヘタに寝入ると遅刻はまぬがれない。やむなく、そのまま起きることにしたよ。
ところが、いざ枕もとに置いていた服に着替えて部屋を出ようとした瞬間。
顔面に、違和感を覚えた。のれんを分けずに、そのまま突進したかのようであったけど、僕の部屋にそのようなものは設置されていない。
けれども、違和感を覚えるのと同時に、目の前が真っ青に染まったことは確かだった。本来見えるべき部屋の中を完全に埋め尽くす、青一色。
時間にしてはほんの一瞬だから、見間違いと片づけられなくもないだろう。でも、僕にとってその色はあまりに鮮やかで気味が悪かったんだ。
朝ごはんを食べる時に、母親へ相談してみたよ。もし病気の兆しだったら、病院に行った方がいいんじゃないか、と思ってね。まあ、病気だったから学校を休む大義名分もできるからいいかな、とも考えたけど。
「うーん、それは病気の類じゃないね。休みの告知だと思う」
と、母にはあっという間に病気説を否定されたが、休みの告知というのは想像していた「休み」とちょっと関係があって、ん? と思ったね。
ただし、それは人に対してではなく、物にたいしてだ。
物が世界にあらかじめ出しとく申請らしいが、独自の営みを続けるようになった人間だと、これを悟れるものはそう多くないとのこと。
「そいつを目にしたのがほんとなら、少し今日は気を付けたほうがいいね。お休みとなれば、羽目を外すものもあらわれるだろうから」
その忠告を、僕は学校へ行ってほどなく思い知ることになる。
僕らの校舎は年季の入った木造校舎だった。
昇降口へ行こうとして、そこの屋根の一部が崩れて、あわやぶつかるのをかわしたのを皮切りに、ものが一斉に傷みだしたかのような姿を見せる。
木でできた廊下や階段を踏みぬいて、穴を開けてしまう子がちらほら。教材室の棚も、倒れるものが多数な上、黒板さえも固定の金具がずれて、傾いてしまう始末。
まあ、どうにかけが人は出なくて済んだけど、ハプニング続き。刺激はあったが面倒は勝る感じで、母の話を聞いていた僕は「これが休みってことかよ! はちゃめちゃが過ぎるだろ」なんて突っ込んでいたっけ。
だが、もはや学校はないよ。
その翌日、僕らの地域を大きい地震が襲ってさ。学校はもうぺしゃんこに潰れてしまったんだ。
今はもう新しい校舎が建っている。当時のものはすっかり処分されてしまったはずだ。
すでに終わりが見えている彼らとしては、おいとまをもらった心地だったのかも。




