表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/24

仲間の声


朝から端末が鳴り続けた。


ルミが受け取りながら読んでいく。画面から顔を上げた時、その目が少し丸かった。


「情報が来ています。ゴーアの競技の話です」


銀河丸が起き上がって隣に来た。


ルミが読み上げる。ホシノ星の村長からだった。


「重力操作競技は、精神的な動揺に対して特殊な反応をします。対戦相手が動揺すると、術者の力が増幅する構造になっています」


「動揺すると強くなるのか」


「ゴーア本人が動揺している場合も同様です。相手の感情の乱れを力に変える。そういう種目設計です。だから——」


次の連絡が来た。ミズホ星からだった。


「昨日の映像を分析しました。ゴーアは序盤、銀河丸が当惑する様子を見て力を増していました。逆に言えば——相手が動揺しなければ、その力は通常程度に下がります」


「落ち着いて戦えばいい、ということか」


「ポーカーフェイスです。感情を一切表に出さない」


ガンドが建物の外から入ってきた。「俺が分析した映像がある。見るか」


ルミが頷いた。


---


分析は丁寧だった。


ゴーアは相手の表情を読みながら重力の変化を操っていた。銀河丸が驚いた瞬間に引き、戸惑った瞬間に押した。銀河丸の顔から感情を読んで、それを力に変えていた。


「なるほど」と銀河丸は言った。「だったら——俺が全然動じなければいい」


「そのつもりです。江戸の剣士は感情を表に出さない訓練をするんじゃないですか」


「する」


「じゃあ問題ないですね」


「……それが、俺が最も苦手なことだ」


ルミが固まった。


「苦手って——今まで訓練してきたんじゃないんですか」


「してきた。でも俺は元々、顔に出る方だ。師範に何度も指摘された」


ルミが天を仰いだ。


「それを今言いますか」


「だから練習が必要だ」


「……この一週間で身につきますか」


「やるだけだ」


---


練習が始まった。


ガンドが相手をした。様々な言葉を言って、銀河丸の表情を動かそうとする。「お前は弱い」「ゴーアには絶対に勝てない」「ここで諦めても誰も責めない」


銀河丸の眉が上がった。


「今、眉が動きました」とルミが言った。


「分かってる」


「全然分かってないですよ。顔に出てます」


「今度こそ」


ガンドが言った。「銀河丸の顔は、江戸の川底みたいに透き通っている。そして深さがない」


銀河丸の口の端が引きつった。


「今度は口角が動いた」とルミが言った。


「それは怒ったわけじゃなくて——」


「表情に出てるということは同じです」


一日が終わった。


二日目も同じだった。


ガンドが「お前のおにぎりは世界で一番不格好だ」と言った瞬間に、銀河丸がムッとした。


「おにぎりを使うのはずるい」


「感情が動くポイントは徹底的に攻める」とルミが言った。「競技中にゴーアが同じことをしてくる可能性があります」


「おにぎりについて何も言わないようにしてくれ」


「それは甘えです」


---


夜、銀河丸がひとりでいる時、ルミが来た。


静かに横に座った。


しばらく何も言わなかった。


「ルミ」と銀河丸は言った。「ジゴクへの復讐って、何があったんだ」


ルミが固まった。


長い間があった。風が鳴っていた。


「……言いたくない」


「そうか」


また間があった。


「でも」とルミが言った。


声が変わっていた。


「ヤミ軍が来た日——私の両親は、村を守ろうとゲームに挑んで……負けた。村ごと、連れて行かれた。私だけが逃げた」


最後の言葉は、ほとんど息だけで言った。


「逃げた」とルミが繰り返した。「私だけが」


銀河丸は何も言わなかった。


「俺に勝てると思ってついてきたのか」とだけ聞いた。


「最初は——利用しようと思ってた。あなたなら復讐の道具になれると思って。でも今は」


ルミが銀河丸を見た。


「あなたを信じてる」


「そうか」


銀河丸はそれだけ言った。長い言葉は必要なかった。


---


四日目の朝、ガンドが来て言った。「少しだけ、顔が固くなってきた」


「そうか」


「でも目が笑ってる」


「それは俺の目元が——」


「笑ってる」


ルミが横から言った。「前進はしています。ただ目元の制御が一番難しい」


「目は動かせない」


「動かさないでいいです。真っ直ぐ見るだけでいい」


三人で、また練習を続けた。


夕方、ガンドが銀河丸の顔をじっと見て言った。「……まあ、使える程度にはなってきた」


ルミが端末を確認した。


「再戦の申し込み期日は——明日の夜明けです」


銀河丸は頷いた。


空が夕焼けに染まっていた。カザ星の夕焼けは橙色で、江戸の空に少し似ていた。


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説と連動した無料ブラウザゲームも公開しています。 https://uchuzamurai.com/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ