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幹部・ゴーア降臨


降りてきた。


黒い船から、それは降りてきた。


地面に着いた時の振動が、足元から伝わってきた。


四本の腕。暗褐色の肌に、金色の装甲。背丈は銀河丸の頭上をゆうに超えていた。眉間に深い皺が刻まれ、表情は乏しい。しかし立っているだけで、周囲の空気が変わった。


銀河丸はそれを感じた。


江戸の道場で、師範が「本物の強者に会えばわかる」と言ったことがあった。その時は意味が分からなかった。


今は分かった。


「宇宙侍とやら」


声が低く、重く、空気を震わせた。


「ジゴク様の御前で三敗した雑兵どもの仇をとりに来た。名をゴーアという。覚えておけ」


---


競技の種目はゴーアが指定した。


重力操作競技——ゴーアの故郷で使われる特殊な複合競技だ、とルミが説明した。重力が変動する空間の中で、バランスと速度を保ち続ける。想定外の重力の変化に対応し続けた者が勝つ。


「不利です」とルミが言った。「ゴーアはこの種目では無敗に近い。それに、変動する重力は——」


「見れば分かる」


「見ただけでは対応できません」


「やってみなければ分からない」


ルミが黙った。


競技が始まった。


序盤から、分からなかった。


重力が変わるタイミングが読めない。体が軽くなったと思った瞬間に重くなる。左に引かれたと思えば右に引き戻される。江戸で培ったバランス感覚を使おうとしても、基準点そのものがなくなる感覚だった。


ゴーアは揺れなかった。


四本腕で空間を掴むように動き、重力の変化をまるで予知しているかのように先に体を合わせる。銀河丸が動こうとした先に、すでにゴーアの体がある。それを超えられない。


途中、銀河丸はメットが何か別の動きをしようとしているような感覚を覚えた。いつも競技の時に感じる「間を読む」感覚が、今日は弱かった。なぜかは分からなかった。


---


競技が終わった。


ゴーアの勝利だった。


銀河丸は地面に一膝ついていた。立ち上がろうとして、立てた。


「宇宙侍の看板を下ろせ」


ゴーアが見下ろしながら言った。


「お前のような小物が持つ名ではない。ホシノ星の勝利はまぐれだ。ミズホ星は運だ。カザ星は情報の差だった。しかし本物の強者の前では——お前は何もできない」


村人たちが肩を落とした。


銀河丸は何も言わなかった。


ゴーアが背を向けた。


「一週間後にこの星を接収する。それまでに退け」


金色の装甲が遠ざかる。地面の振動が静まっていった。


---


夜になった。


ルミが来た。顔は無表情だったが、声が少し柔らかかった。


「宇宙律には再戦条項がある。一週間以内なら、敗者から再戦を申し込める。一度だけ」


銀河丸は砂の上に座っていた。


「でも俺は、全力でやって負けた。何をすれば勝てる」


「……私も知らない」


ルミが初めて、分からないと素直に言った。


銀河丸はそれを聞いて、少し意外な気持ちになった。いつも答えを持っているルミが、答えを持っていない。


「そうか」


「ごめんなさい」


「なんで謝る」


「分析できると思ってたんです。でも今回の競技は、私が把握できていない要素が多すぎました」


銀河丸は砂を一掴みした。手の中でさらさらと流した。


ホシノ星の砂と似ているが、色が違う。


何気なく、砂で形を作り始めた。丸く集める。両端を尖らせる。


おにぎりの形だった。


不格好なおにぎりが砂の上にできた。食えない。でも形は作れる。


ガンドが隣に来て、腰を下ろした。


「お前を見ていた」と言った。「まぐれとは思わない」


銀河丸は砂のおにぎりを見ていた。


「俺も、お前から教われることがあるかもしれない」とガンドが続けた。


ルミが端末を手に取った。画面が小さく光っている。


「連絡が来ています」


「誰から」


「ホシノ星から。それからミズホ星からも——」


端末がまた鳴った。


「カザ星からも」


ルミが画面を読んだ。表情が変わった。


「銀河丸を助けたい、という声が……来ています」


砂のおにぎりが、夜風で少し崩れた。


---


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