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二つ目の鍵


翌朝——この星には昼夜がある。嵐の中でも空の色が変わる——長老が銀河丸を呼んだ。


「お前だけ来い」


ルミを置いて、銀河丸は長老についていった。


集落の奥。岩が重なって天然の廊下ができている場所。人が通れるくらいの幅しかない。風がほとんど来ない。静かだった。アラシ星で初めての静けさだ。


奥に部屋があった。


岩を削って作ったような空間。小さい。長老が中に入り、棚の奥から布に包まれた何かを取り出した。


「この星に昔から伝わる遺物がある」


長老の声が低くなった。神殿にいるような気配。


「代々言い伝えられてきた。特別な使命を持つ者が来た時に渡せ、と。条件は——この星を守る力があること。そして、迷わないこと」


銀河丸は黙っていた。


「昨日のお前を見た。嵐の中で、迷っていなかった」


布が解かれた。


光があった。淡い。青白い。呼吸しているように明滅している。


小さな石だった。手のひらに乗るくらい。形は不規則だが、整っている。石というより——結晶か。


銀河丸の胸のメットが、わずかに震えた。


「……」


感じる。同じ「何か」だ。メットと同じ。違う形をしていても、同じ呼吸をしている。


「取れ」と長老が言った。


銀河丸は手を伸ばした。石が手に触れた瞬間、光が一度強くなって、静まった。


重くない。温かい。


「それが何なのかは、俺たちも知らない」と長老が言う。「ただ——大切なものだということは分かった。ずっとここが場所じゃないとも分かってた。正しい手に渡る日まで、守っておくだけで良かった」


「……ありがとうございます」


「礼はいらん。約束しろ。その石を正しく使え」


「使い方が分かったら、正しく使います」


「その答えで十分だ」


---


集落に戻ってルミに見せた。


ルミの目が丸くなった。星形に光る瞳が、さらに強く光った。


「これ……」


「メットと同じ感じがする」と銀河丸。


「同じ感じって——どういう」


「体が感じてる。説明できない」


ルミが石を恐る恐る近づけた。メットに当てようとして——離れた場所から何かを感じたのか、手を引いた。


「……本当だ。共鳴してる。微弱だけど確かに」


「共鳴?」


「お互いを認識してる。これは——」


ルミが早口になった。「銀河の鍵です。間違いない。伝説があるんです。古代文明の遺物が九つ、銀河のどこかに散らばってる。全部集まると宇宙律を再構築できる——そういう話。だから鍵って呼ばれてる。でも伝説だと思ってた。まさか本当にあるとは——」


「メットも鍵か」


「そう考えるのが自然だと思う。メットが一つ目で、これが——二つ目」


銀河丸は石を光に透かした。内側で何かが動いているように見える。


「……残り七つか」


「残り七つ」


「多いな」


「多い。それに、ジゴクも鍵のことを知ってる可能性がある。だから鍵を持つ星を狙ってるのかもしれない」


「鍵を先に全部集めれば、ジゴクに先手が打てる」


「理論上は」


銀河丸は石を握った。温かさがある。生きているものを持っているような感覚。


「急がないとな」


ルミが答えようとした——その時。


影が落ちた。


空から。


---


アラシ星の空に、船が降りてきた。


ヤミ軍の船ではない。もっとスリムで、黒というより深紫の船体。優雅な形をしている。


音もなく降りた。嵐の中なのに、砂一粒乱さず。


人が降りた。


細身だった。長いコートが嵐の中でまったくなびかない——いや、なびいているが、計算されたようになびいている。コートの色も紫。体表が紫色。手が長い。目が細くて澄んでいる。


その人物は、集落の入り口で静かに立った。


銀河丸と目が合った。


「……初めまして」


声が低かった。落ち着いていた。「ドクガ、と申します。ジゴク様の使者として参りました」


礼儀正しい。深々と頭を下げた。本当に礼儀正しい。だが——


「不躾なことを申し上げますが、用件を先に」


顔を上げる。口元に笑みがある。目は笑っていない。


「その鍵——返していただけますか」


銀河丸は手の中の石を握り直した。


ルミが小声で言う。「……来た」


風が唸る。嵐が続く。


ドクガはまだ笑っている。穏やかに。礼儀正しく。


それが一番、怖かった。


---


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