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精霊王に選ばれた私ですが、幼馴染騎士だけは跪いてくれません  作者: えびのおすし
二章

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「はぁーあ、疲れた」

 大きな独り言を言いながら、ミヤは定位置である木箱の上に座った。カイルは先に来ていて、対面で何やら手遊びをしていた。

 たくさんの飾りをつけていた髪がまだ引っ張られているような感覚がある。ちくちくとした痛みを和らげようと頭皮をマッサージしたけれど良くなっている気配はなかった。

 王子との晩餐会は過度の緊張を強いるものだった。その後、セレフィーナをあの手この手を使って慰めた。「胡散くさいわ、あの人!」というのがミヤの私室へ入ったときの彼女の第一声だった。

 外見や物腰は王子様然としているけれど、その実、何を考えているのか全く読めない。

 為政者というのは特有の雰囲気を持っているものだ。以前、国王と対面したときのことを思い出す。親子だからなのか、彼らはよく似ているように思えた。

 その内面の読めなさがセレフィーナは苦手だったようだ。

 いかに苦痛だったかを語る様子は鬼気迫っていた。彼女は巧妙に隠しているが、生来人見知りの気質であることも荒れる原因なのだろう。

 ひとしきり慰めると、彼女はミヤをぎゅうっと抱きしめて癒しを求めていた。

「王子は何のために来たんだ?」

「んー? 視察とか言ってたけど、嘘かもしれない。多分だけど、噂の聖女が御し易いかどうかを見極めに来たんじゃないかな」

 突然の訪問の意図は測りかねた。ただ、アナスタシアは王族の駒として使おうとしているのではないかと気にしていた。だから一旦距離を取るためにもセレフィーナが応対したのだ。

「数百年ぶりに瘴気が溢れて聖女が現れたって、史実には残ってても王様からしたら信じられないんだと思うよ。胡散くさいと感じているのは、こっちだけじゃないってこと。聖女なんて今のところ正体不明の金食い虫だもの」

 溜息をつく。

 するとカイルは手の動きを止めて眉間に皺を寄せた。

「見せてやればいいだろ、精霊王。そうすれば一発で黙る」

「駄目なんだよねぇ。精霊王様は気まぐれだから」

 ふん、と幼馴染は鼻を鳴らした。

「おまえが困ってるときに出てこないなら何のための王なんだか」

「あ。そんなこと言うと怒られるよ。ただでさえカイルは精霊王様に嫌われてるんだからね。前に吹き飛ばされて川に落ちたの忘れたの?」

「何年前の話をしてるんだ」

 呆れたような反応が返ってきた。両手で頬杖をつき、にっこりと笑うと、見ていられないとばかりに手元に視線を戻していた。

「これやる」

「なぁに、これ。……花冠?」

「好きだろ、それ。元気出せよ」

 目を瞬かせながら、受け取ったそれを見つめた。

 黄色一色の花で出来た冠。

 小さな花弁が連なっている。持ち上げて、矯めつ眇めつ眺めた後で、胸にじんわりと湧き立つものを感じた。

「……ありがとう。うれしい」

「俺はこんなものしか与えてやれないから」

 一体、何と比べているのだろう。バツが悪そうに下を向くものだから、ミヤはむっとしてしまう。

「私にとっては、この花冠がどんな宝石よりもキラキラして見える。カイルはね、魔法が使えるんだよ。私をただのミヤに戻してくれる魔法。カイルしか使えないのよ」

 似合う?と聞きながら頭に花冠を乗せた。

「ああ。よく似合ってる」

 今度は目を逸らされなかった。

 それが嬉しくて、ミヤは無邪気に笑う。

 この時間がずっと続けばいいと思った。

「ねぇ、カイル。カイルは村に帰りたいって思ったことある?」

「……おまえがもし聖女の務めがしんどくて帰りたいって言うなら協力する。そうじゃないなら、ここにいる。近くにはいてやれないが目の届く範囲にはいる」

「じゃあ、もし私がもっと近くにいてほしいって言ったら? カイルには私の聖騎士になってほしいの」

「それが、ミヤの望みなら」

 予想外の返答に、パッと顔を上げる。何を言っているんだと断られてしまうと思っていたのだ。

「平民出身の聖女がいるんだ。平民出身の聖騎士がいたっていいだろ」

「ふふ、そうだね。そうだよね。あー、良かった! カイルったら、いつもみたいに顰めっ面して『嫌だ』って言うかと思った」

「俺がおまえの頼みを断ったことがあるか?」

「あるよ。一回目は必ず断るもん」

 カイルは「そうだったか?」と揶揄う。

 ミヤの頭の中は彼が聖騎士になったときの想像でいっぱいになった。晩餐会でも困ってしまったときは幼馴染の姿を探してしまった。

 そのとき、嫌だと思ったのだ。

 カイルがそばにいないのは嫌だ。私だけを見ていてほしい。

 たった一人で立つには、『はじめの聖女』という役割はミヤには荷が重すぎる。

「カイルが聖騎士になってくれるの待ってるね」

「精霊王が許すかは分からないがな」

「そのときになったら、いい加減言うことを聞いてもらうよ。聖騎士がいないのは私だけなんだもん。本格的に浄化の儀を始める前に誰かに決めてもらわなくちゃ」

 『誰か』じゃなくて、カイルがいい。

 それを言外に滲ませ、ミヤは彼からもらった花冠を愛おしそうに撫でた。

 花の香りが夜の静寂に溶けていく。窓辺の月は冷たく二人を見下ろしていた。

インフルに罹ってしまい、数日更新おやすみします。

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