2:お得意様
「ちわーす……。相変わらずゴミのように多いな……」
異世界からやってきたという、『カツゴロー』が約八十年前に事務所を立ち上げたとされる――
一つの大きな金のリングを囲む、均一な十二の銀のリングをエンブレムとするハロー輪廻転生ワーク。
「おーい、ネオはいるか~? お得意さまの『うち』が来てやったぞー」
人や亜人をかき分け、相談窓口に着くと――
「……おいサーラ。一ヶ月前に『魔法使い』にしてやったはずだが……?!」
鬼の亜人――ネオは額の角を赤く光らせてそう言った。
「だったか……? そんなことよりネオ、うちをここで働かせろ!」
私はそう言って、ギルドの掲示板から拝借した張り紙をみせた。
「…………」
しかし、ネオは口を開け天を仰ぎ、角は点滅している。
「おいネオ! 聞いているのか? おーい、ネオったら」
机に乗り上げ、ネオを揺らすが反応がない。すると、後ろから――
「おい嬢ちゃん……順番を守るのは『当たり前』って習わなかったか?」
振り返ると、オークの亜人が気安く私の肩に手を乗せていた。
「……ふ~ん、なんだ雑魚か。出直せ」
瞬時に鑑定したオークの亜人の能力値は、何一つとして――転職に必要な最低限の数値には達しておらず、ガラクタ売りの商人がいい所だった。
そもそも――他人から簡単に鑑定されるようじゃ話にならない。
今の時代、子供だって自分の能力値は覗き見防止フィルターか鍵をかけている。
まあ私にかかれば、そんなものは何の意もなさないが。
「うぅ……悪い夢か、溜まっていた有休でも使うか……」
意識の戻ったネオを見ると、少し項垂れていた。
「おい職員ッ! このガキなんとかしろ!!」
オークの亜人は机をバンっと叩き、私の首根っこを掴んだ。
「あぁ……はいはい。申し訳ございませんが、お引き取りください」
「な! ガキ、帰れってよ」
オークの亜人は私の顔を覗き込んで、不細工な顔を寄せた。
「いやいや――あなたの方ですよ、オークの亜人さん。その方は一応ですが……うちの事務所でも超が付くほどお得意様なので、あなたのような凡人以下がガキ呼ばわりして良い相手ではございません。どうぞお引き取りを」
「はああああああああああ??!!」
ああ、めんどくさい……。
「……なあネオ。うちがこの豚帰らせたら、『採用』って事で良いよな??」
「あぁ……どうせ俺にはその権限はないし、お前の鶴の一声に抗えるのは初代『カツゴロー』さんだけだろうよ」
「じゃあ、決まりだな――――ッ!」
その後――運悪く居合わせたオークの亜人は、不細工な悲鳴を上げて出て行ったのである。




