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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第二卷: 煉気編一初めて世間に·血色禁地
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謙遜の向之礼

  中心区(ちゅうしんく)の西側、ある希少な薬草が育つ窪地(くぼち)で、三人の修仙者(しゅうせんしゃ)が一頭の三眼火狼(さんがんかろう)と必死に戦っていた。巨剣門(きょけんもん)の装束をまとった中年の男が青い巨剣(きょけん)を駆使し、火狼の攻撃の大半を防ぎ止めている。その傍らで、黄衫(こうさん)の老人と灰色の道袍(どうほう)を着た青年が左右から側面攻撃を加えていた。


 ほどなく、巨剣門の弟子は大火球(だいかきゅう)の一撃をかろうじて受け止めつつ、その巨剣で妖獣(ようじゅう)の狼の首を一刀のもとに斬り落とした。そして剣を収めると、天を仰いで高らかに笑った。


「蒙(もう)兄、さすがは法力(ほうりき)が深遠(しんえん)でいらっしゃる! この三眼火狼すら一撃で仕留めるとは! 流石は巨剣門の高弟(こうてい)で……」黄衫の老人はこの光景を見るや否や、小走りに近づいてきた。阿諛追従(あゆついしょう)の言葉が途切れることなく続き、その顔は微塵(みじん)も赤らめることはなかった。


 もし韓立がここにいれば気づいただろう。この老人こそ、かつて自分を「弱者同盟(じゃくしゃどうめい)」なるものに無理やり誘った向之礼(しょうしれい)その人だった。しかし、当時彼と一緒にいた同門の少年はここにおらず、どうやら転送(テレポート)の際にはぐれてしまったようだ。


「へへっ! 向(しょう)兄や李(り)道長が傍らで支援してくださらなければ、私ごときがこんなに容易く成功するわけがありませんよ!」巨剣を手にした黑衣(こくい)の中年男は、意外にも謙虚(けんきょ)な態度を見せた。


「蒙兄、ご謙遜(けんそん)なさらずとも! この妖獣を除けたのは、蒙兄の功績が最も大きく、それは疑いようもありません!」もう一人の青年道士(どうし)は、年こそ若いものの、その口調は卑(ひ)することもなく、実に老練(ろうれん)であった。


 黑衣の中年男はその言葉を聞き、一瞬笑みを浮かべたが、すぐにまた謙遜の言葉を述べた。


「そういえば、あちこちでまだ殺し合いを続けている連中は、本当に馬鹿だなあ! もしも我々のように三つの異なる門派(もんぱ)の者が、心を一つにして妖を除き、薬草を採っていると知ったら、きっと顎(あご)を外して驚くだろうよ!」黑衣男は突然話題を変え、こんな言葉を口にした。


「その通りです! これは向兄が一力(いちりき)で取り計らってくださったお陰です! もし向兄が我々に明白かつ徹底的に分析して示してくださらなければ、おそらく私と蒙兄は今でも命を懸けて争っていたことでしょう!」道士もまた連呼(れんこ)して同意を示した。


「恐縮(きょうしゅく)です恐縮です! お二人とも極めて聡明(そうめい)なお方、私が申し上げたのはただの事実に過ぎません! 元より、我々の手に到底入るはずもない物のために、無駄に命を落とす必要などなかったのです。殺し合いをしている時間があれば、中心区以外の希少な薬草を根こそぎ持ち帰れば良い! それに皆が心を合わせて手を出せば、こんな妖獣など朝飯前(あさめしまえ)ですよ!」向之礼はにやにや笑いながら、口先だけの言葉で次々と辞退した。


 他の二人はこの言葉を聞くと、またしても熱烈なお互いの持ち上げ合いを始めた。


「さあ、早く『火竜草(かろうそう)』を採りましょう! 皆で一人分ずつ、平等に分け合いましょう!」結局、黑衣男が最初に我慢しきれずに口を開いた。その声には焦りの色がにじんでおり、言い終わると、火狼の死骸の後ろにある数本の赤い小さな草の方へ歩み出した。


 向之礼と道士はこれを聞くと、意味深(いみしん)な笑みを互いに交わし、口々に承諾して後を追った。


 しかし二人とも気づかなかった。彼らに背を向けた黑衣男の顔に、一瞬だけ陰険(いんけん)で冷酷(れいこく)な表情が浮かび上がり、すぐに消え去ったことを。


 ***


 中心区の南側、一面が黄砂(おうさ)に覆われた場所で、掩月宗(えんげつしゅう)の男女二人の弟子が、ある狭い区域で、氷錐術(ひょうすいじゅつ)を使って砂地を絶え間なく刺し続けていた。何かを探しているようだった。


 しかし、しばらく経っても、何の成果もなかった。

「この卑怯者(ひきょうもの)め、一体どこに隠れているんだ! 見つけ次第、必ずその眼球をえぐり出してやるわ!」女弟子はもともと千嬌百媚(せんきょうひゅうび)で花のように美しい容貌(ようぼう)をしていたが、その口から出る言葉は陰険で毒々しいものばかりで、男であれば背筋が凍るほどだった。


「師妹(しまい)、もう諦めよう! 師門(しもん)が約束した時間も近い。行かなければ、遅れてしまう!」男弟子はいくぶん懦弱(だじゃく)な口調で言った。様子を見るに、この師妹を非常に恐れているようだった。


「ふん! お前という役立たずが悪いんだ! 功法十層(こうほうじゅっそう)の小娘一人すら見張れず、我々の目の前で逃がしてしまうなんて! これが噂になれば、私と姉の『掩月双嬌(えんげつそうきょう)』の名が笑いものになるじゃない! まったく、師門はどうしてお前みたいな腰抜けを、私の修練道侶(しゅうれんどうりょ)にしたんだ!」女は男の言葉を聞く前はまだしも、聞いた後は即座に怒りに満ちた顔で男弟子の鼻先を指さし、さんざんに罵倒(ばとう)した。男弟子は顔を真っ赤にしたが、どうすることもできない様子だった。


 とはいえ、言うだけ言った女弟子は空の明るさを見上げると、これ以上探し続ける勇気はなかった。師門の大事を遅らせることになれば、彼女が特別な身分で、後ろ盾が十分に強力であっても、大変なことになるからだ。


 しかし、こうして空振りに終わってこの地を離れるのは、彼女にはまだ不本意だった。何度か躊躇(ちゅうちょ)した後、彼女は銀歯(ぎんば)を食いしばり、一枚の青い符箓(ふろく)を取り出した。


 その符箓を見つめると、彼女は陰険に笑い、猛然(もうぜん)とそれを後方へ放り投げた。そして自らは飛び出し、数十丈(じゅうじょう)先に達して初めて足を止め、振り返って見守った。


 男弟子はこれを見て内心ひどく閉口(へいこう)したが、少しも怠ることなく彼女の後を追った。


 その時、符箓は数十丈もの巨大な黒雲(こくうん)へと変わり、この一帯の空をぴったりと覆い隠した。すると同時に、付近の気温は急激に下がり、異様なほどの酷寒(こっかん)となった。


 間もなく、黒雲の中から、ゆっくりと始まり次第に激しさを増して、無数のキラキラと輝く巨大な氷の錐(きり)が降り注ぎだした。ほどなくして、この小さな一帯は、サボテンの棘(とげ)のようにびっしりと突き刺さった氷錐で埋め尽くされた。


 茶を一服(いっぷく)するほどの時間が経つと、黒雲はようやく次第に消えていった。その時、砂地全体が水晶のように輝いていた。


 女弟子は目を見開き、足の踏み場もないほどの砂地をくまなく見渡したが、何の異常も見つけられなかった。


 彼女は恨めしそうに顔を曇らせ、不機嫌に男弟子を呼びつけると、しぶしぶと先頭に立ってその場を後にした。彼女の言うところの修練道侶(しゅうれんどうりょ)も当然、すぐに後を追った。


 去っていった掩月宗の女が気づかなかったのは、氷錐が散らばる砂地の片隅で、ほんのりと赤みを帯びた液体がにじみ出ていたことだ。ただ、その色はあまりにも淡かったため、女弟子の目を逃れたのだった。


 半刻(はんこく)ほど後、その赤みが広がりかけようとした時、その場所の砂が突然丸い盛り上がりを作った。そしてそれはますます高く、ますます明瞭になっていった。


 ついには、砂の塊が激しくうごめくと、中から一人の緑衫(りょくさん)の女が転がり出てきた。彼女の肩には細長い氷錐が突き刺さり、流れ出た鮮血が半身を染めていた。手には一枚の黄色い絹のハンカチをしっかりと握っており、その上で微かな光が揺らめいていて、凡品(ぼんぴん)ではないようだった。


 ゆっくりと這い起きた女は、肩の傷口を見て、美しい眉をひそめた。


 彼女はもう一方の手を上げ、氷錐の後ろの部分をそっと掴むと、銀歯を食いしばって氷錐を引き抜いた。痛みに女はかすかに声を漏らし、美しい目から涙がこぼれ落ちた。傷口からは、ゴボゴボと音を立てて鮮血が勢いよく湧き出てきた。


 彼女は顔の涙の跡を拭う暇もなく、一瞬たりとも無駄にせず、あたふたとした動作で収納袋(しゅうのうたい)から花柄(はながら)の磁器の瓶を取り出した。そして中から黄色い薬の粉を傷口に振りかけると、血は即座に止まった。


 これらを終えると、緑衫の女は膝を抱えて砂地に座り込み、じっと動かなかった。しばらくして、彼女は突然、両手で顔を覆うと、ウッウッと声を詰まらせて泣き出した。しかし、他の者を呼び寄せることを恐れ、声は極めて低く抑えられていた。


 一食分の時間が過ぎ、霊獣山(れいじゅうざん)の女弟子はようやく泣き止んだ。彼女は顔を上げて誰もいない砂地を見渡すと、思わず身震いした!


 彼女は唇を噛みしめ、再び苦しそうに立ち上がった。長い間ためらった後、ようやく方向を定め、よろよろと中心区へと歩き出した。その時、彼女の可憐(かれん)で愛らしい顔には、まだかすかな涙の跡が残っていた。しかし同時に、それとは相容れない頑なな意志の表情も浮かんでいた。


 この女こそが、韓立に「金竺筆(きんちくひつ)」を売ったあの少女だった。ただ、負傷した彼女が、ひっそりとした砂地を独り歩く姿は、痛々しいほど可憐に映り、見る者の心を強く動かさずにはいられなかった。


 しばらくすると、少女は傷口を押さえながら、その姿を次第に黄砂の中へと消していった。



 掩月双嬌(えんげつそうきょう):掩月宗の有名な姉妹弟子。美貌と実力で知られる。


 符箓(ふろく):あらかじめ術を封じ込めた符。法力で発動する。


 氷錐術(ひょうすいじゅつ):鋭い氷の槍を生成・降らせる術。


 収納袋(しゅうのうたい):修仙者が物品を収納するための袋。空間拡張の術が施されている。


 霊獣山(れいじゅうざん):妖獣や霊獣を扱うことに長けた修仙者の一派。


 金竺筆(きんちくひつ):金竺竹(きんちくちく)で作られた、製符(せいふ)に適した筆。韓立が少女から購入した。

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