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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第二卷: 煉気編一初めて世間に·血色禁地
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結丹期師祖

 * **収納袋:** 小さな袋だが内部に大きな空間を持ち、様々な物を収納できる仙人や修行者が使う便利な道具。

 

 掌門しょうもん鍾霊道しょうれいどうの訓示と激励を聞き終えた後、二人の執事弟子しつじでしがそれぞれぼんを持って殿内に入ってきた。


 一つの盆の上には金糸縁きんしへりの収納袋が一つ。もう一方の盆には、小さな山を成した五色ごしきに輝く中階霊石ちゅうかいれいせきが載っている。どうやら事前に約束された褒賞ほうしょうを渡す時が来たらしい。これは一種の戦前の士気高揚だろうか? 韓立かんりつはやや悪意を込めてそう考えた。


 中階霊石は、おおむね各人の必要に応じて自由に取ることができた。韓立はすでに土属性つちぞくせい火属性ひぞくせいの霊石を一つずつ持っていたので、盆から青い水属性みずぞくせいの霊石を取った。これには誰も彼と争わなかった。


 しかし、収納袋から霊器れいき抽選ちゅうせんする順番になると、弟子たちの表情は慎重になった。


 この収納袋は普通のものとは少し違っていた。他の収納袋なら、神識しんしきを中に伸ばし、霊力れいりょくを入力するだけで物品を取り出せる。しかしこの袋は、修仙者の神識による探査を拒み、霊力の入力も必要としない。ただ手を中に差し込めば、数十倍に縮小された霊器を取り出せるのだ。ただし、何を取り出すかは全く分からない。全ては手の触感で判断するしかない。


 どうやらこの収納袋は、霊器の抽選のために特別に煉製れんせいされたものらしい。そうでなければ、その実用性は普通の収納袋の利便性に到底及ばない。誰がこんなものを使うだろうか?


 中身は全て上品宝具じょうひんほうぐではあるが、防御法器ぼうぎょほうきは攻撃型のものより明らかに稀少だった。しかも、攻撃専用または防御専用の上品宝具であっても、その品質や効用には依然として大きな差があった。


 自分に合った宝具を引き当てられれば、血染試練での生存確率がほんの少し上がる。特に宝具を大きく欠いている弟子たちは、なおさら真剣だった。


 韓立はこれにはほとんど関心を示さなかった。


 彼は前回の仙集(せんしゅう/坊市)行きで、万宝閣まんほうかくが長年秘蔵してきた宝物を全て買い占めていた。頂級宝具ちょうきゅうほうぐだけでも二つ手に入れ、ましてやその後青蛟旗せいこうきを入手し、さらに他の数点の上品宝具も所有している。


 もう一つ上品宝具が増えたところで、彼がそんなに興奮することはなかった。


 韓立の順番が来た時には、ほとんどの者が抽選を終えていた。何を手に入れたかについては、皆が暗黙の了解で口にせず、ましてや他人に見せる者などいなかった。


 韓立は片手を袋の中に差し込み、中で無造作にかき回した。すると、ある独特な形状のものが掌に触れた。彼は心中で動き、ためらうことなくそれを収納袋から引き抜き、こっそり一目見た。一瞬微かに呆然ぼうぜんとしたが、すぐにしまい込んだ。


 その時、後ろの者がすでに待ちきれずに詰め寄ってきた。韓立はこれを見て、非常に察しよくその場を譲り、元の場所へ戻った。


 宝具の抽選が終わると同時に、殿外から新たに数人が入ってきた。その多くは韓立が黄楓谷こうふうこくに入ったばかりの頃に見たことのある管轄者(かんかつしゃ/管事)たちで、王師叔おうししゅくや韓立が心底軽蔑しているようという老人の姿もその中にあった。


 彼らは普段の威風堂々(いふうどうどう)とした様子とは一変し、皆恭うやうやしい態度で中央に立つ四角いしかおの老人を囲んでいた。誰一人として気軽に私語しごを交わす者はいなかった。


 老人は五、六十歳ほどに見え、髪は少し灰色がかっていたが、元気溌剌げんきはつらつで血色も良く、一対の虎のような目は怒らなくても威厳に満ちていた。性格が剛直ごうちょくな人物だと一目で分かる。


 その視線が弟子たちの方へ一掃されると、韓立はたちまち五臓六腑ごぞうろっぷまで見透かされたような気がし、心底戦慄せんりつした。


 その時、鍾大掌門しょうだいしょうもんは老人が入ってくるのを見ると、急いで迎えに出た。「李師叔りししゅく」という尊称を口々に繰り返し、かすかに追従ついしょうの意さえ感じさせる。これには弟子たちも唖然あぜんとした。


 しかし他の管轄者たちは平然としており、軽蔑の色を見せるどころか、この老人が鍾霊道の言葉に気軽に応じる様子を見て、羨望せんぼう嫉妬しっとの念すら抱いているようだった。まるでこの老人と話ができ、一声「師叔」と呼べること自体が、得難い栄誉えいよであるかのように。


 韓立ら事情を知らない者たちのいぶかしげな視線の中、鍾掌門はこの老人を弟子たちに紹介した。なんと彼が口にした「李師叔」こそが、韓立らがその名を聞いて久しいが一度も見たことのない、数人の結丹期けったんき師祖しその一人——李師祖りしそだったのだ。


 今回の禁地きんち行きは、この李師祖が引率することになっている。同行するのは、王師叔を含む他の五人の管轄者だった。


 鍾掌門の紹介が終わるやいなや、李師祖は極めて簡潔に「出発」の二文字を発し、韓立ら後輩たちとの初対面をあっさりと終わらせると、真っ先に大殿を後にした。


 韓立らは大眼小眼だいがんしょうがんでしばらく呆然ぼうぜんとしたが、他の管轄者たちに急かされ、慌てて後を追った。


 大殿の外へ一歩踏み出すと、弟子たちは思わず息をんだ。


 なんと、大殿の門外の空中に、二十丈(約60メートル)余りの銀色に輝く巨大な怪物が浮かんでいるではないか。その巨体がもたらす圧倒的な威圧感に、皆は窒息ちっそくしそうな感覚を覚えた。そして、あの李師祖はその怪物の頭頂に立ち、冷たい目で彼らを見下ろしていた。


 韓立は目をこすり、心臓が高鳴るのを感じながら、何度も細かく見た。ようやくそれが、珍しい銀色の巨蟒きょぼうだと分かった。ただ、このうわばみは途方もなく大きく、その頭部にはさらに漆黒しっこくの巨角が生えており、一層凶悪で恐ろしい様相を呈していた。


「これが結丹期修士の実力か… このような妖獣ようじゅうですら意のままに調伏ちょうぶくし、使役しえきするとは、信じがたい!」韓立はこの師祖の手腕に心服した。


 自分が結丹期に達した時にも、このような途方もない法力ほうりきを得られるかと思うと、全身の血が逆流するような興奮を覚えた。


 李師祖に会う前まで、韓立は自分の修仙の道について漠然ばくぜんとしており、明確な認識を持っていなかった。


 しかしこの度の衝撃の後、この師祖の計り知れないほどの圧倒的な法力は、彼の修仙の道における明確な追いかけるべき目標となり、修仙得道しゅうせんとくどうへの確信はさらに磐石ばんじゃくのごとく固まった。


「全員、上がれ。大人しく立て! 我が銀甲角蟒ぎんこうかくぼうの飛行速度は、お前たちが法器ほうきで飛ぶより遥かに速い。二日もあれば目的地に着く!」


 李師祖は、眼下の人々がごたごたしている様子を全く意に介さず、銀蟒の巨角を軽く撫でると、平然として命じた。


 こうして韓立らは、肝を冷やしながら巨蟒の上に立ち、二昼夜ひたすら飛び続けた。そしてついに、この名も無き荒れ山に到着したのだ。


 この師祖は決して嘘をついていなかった。この怪物の飛行速度は確かに驚異的で、韓立ら弟子が法器で飛ぶ速度とは比べ物にならなかった。もちろん、彼らに優れた飛行法器がなかったことも大いに関係していた。


 この地に着いて初めて、弟子たちは数人の管轄者から知らされた。ここは他の仙派と待ち合わせた集合場所であり、七大派しちだいはが全て揃って初めて、共同で禁地を開くために出発するのだと。そうでなければ、たった一門一派の力では禁地に入ることすらできないのだと。


 約束の時間は明日の午前中だ。しかし禁地が建州けんしゅうの境内にあるため、黄楓谷は半ば東道主とうどうしゅと言える。そのため本門は通常、一日早くこの山に到着し、他の各派を待つのが常だった。


 今、弟子たちは自由に行動してよい。明日になれば、一同整列して共に待機することになる。


 管轄者たちがそう言うのだから、韓立らはもちろん一斉に散り散りになり、山上でそれぞれが思い思いに行動し、間もなく起こる大戦に向けて最後の準備を始めた。


 こうして、二十数人の黄衫こうさんの弟子たちの中には、結跏趺坐けっかふざして精神を養う者、宝具を取り出してひたすら磨く者、また呆然として放心し、心配事が尽きない様子の者もいた。


 しかし数人は、表情も動じず、普段通り談笑し、まるで遊びに出かけるかのように気楽に振る舞っていた。韓立はこれらの者を特に数度見つめた。


 その時、背後から足音が聞こえた。韓立は微かに眉をひそめた。彼は目立たないように、わざと目立たない片隅を選んで一人で座っていたのに、どうしてここに人が来るのだ?


韓師弟かんしていか! 私は向之礼こうしれいだ。明日の禁地行きについて話したいことがある! これは師弟の生死存亡に関わることだ。少し話を聞いてもらえないか?」


 老いてはいるが、どこまでも円滑えんかつな、しかしどこか小賢こざかしい口調の声が聞こえ、韓立の眉間みけんしわはさらに深くなった。


 このような見せかけの威勢の良さは、声の主の顔も見ずとも、韓立にはその人物が狡猾こうかつで信用できない者だと分かった。自分に近づくのは、絶対にろくなことではないに違いない!


 しかし韓立は理解していた。君子くんしを怒らせるより、小人しょうじんを怒らせない方がましだ。心の中では百も承知で不本意だったが、それでも無理に体を向け直し、背後に現れた一老一少の二人を見た。


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