↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第二卷: 煉気編一初めて世間に·血色禁地
PR
44/287

符術

韓立は「金竺筆(きんじくひつ)」が入った木箱を、心底嬉しそうに懐にしまい込み、宿へ戻る道を歩いていた。


彼は三瓶の「黄龍丹(こうりゅうたん)」と四瓶の「金髄丸(きんずいがん)」と引き換えに、あの少女からこの宝物と七星草(しちせいそう)の種の袋を手に入れたのだった。その後、他の露店で適当に丹砂(たんさ)を買い求めるや、興奮冷めやらぬまま急いで戻ってきた。いよいよ彼の画符(がふ)=霊符作成の大業に取り掛かるのだ。


禁制(きんせい)を解いて小楼に入ると、小坊主がまだ座禅(ざぜん)を組んでいるのが見えた。韓立は邪魔せず、自ら二階へ上がり自室へ戻った。


符紙(ふし)と丹砂をそれぞれ机の上に整え、韓立は金竺筆を取り出した。いよいよ「定神符(ていしんふ)」の製作に没頭する。


定神術(ていしんじゅつ)の書に記された製符法に従い、体内の霊力(れいりょく)を筆を持つ右手を通して筆管(ひっかん)へとゆっくり注ぎ込む。次に筆先で丹砂を少しだけ含ませ、一枚の符紙の上へ符呪(ふじゅ)を描き始めた。


一刻(いっこく)後、韓立は嬉しそうな表情で身を起こし、少し痛んだ腰を伸ばした。机の上で銀色に輝く霊符(れいふ)を見て、思わず心が躍った。


見た目は、墨大夫(ぼくたいふ)が使ったあの符と全く同じだ。その上に宿る霊気(れいき)は少し薄いものの、どうあれ韓立が以前練習で作った粗悪品よりは、はるかにマシだった。何しろあれら練習品は形が似ているだけで、霊力など微塵も込められていなかったのだから。


韓立は出来立ての霊符を手に取り、興奮しながら観察した。満足すると、今度は定神術を試してみようとした。ところが、呪文を唱え印を結ぶより早く、紙符(しふ)の霊力が突如として乱れ始め、暴発寸前の様相を呈した。


韓立は驚き、咄嗟にその符を放り投げた。


「プッ」という音とともに、定神符は空中で理由もなく自然発火し、ひとつの火の玉となって跡形もなく燃え尽きた。


韓立は呆然と空中を見つめ、言葉も出なかった。しばらくして、ため息をつく。やはりこの符は失敗だったようだ。


韓立は少し落ち込んだが、自信までは失っていなかった。何しろ先ほどの符は成功にかなり近づいていたと感じていたからだ。もうひと踏ん張りして、何度か作り直せば、次こそは成功すると信じていた。


こうして、その後の半日、韓立は一枚また一枚と定神符を作り続けたが、一度ならず二度までも連続で失敗した。


出来上がった霊符たちは、自ら燃え上がるか、突然小爆発を起こすか、あるいは描き終わった途端に霊力が急速に消え去り、ただの紙屑(かみくず)と化すかのどれかだった。


最後に完成したばかりの紙符が「パンッ」と粉々に爆散するのを見た時、普段は冷静な韓立もついに堪忍袋(たんにんぶくろ)の緒が切れた。天井を見上げ、突然口を開いて罵倒(ばとう)した。


「クソッ、ふざけやがって! ダース単位で十二枚も作ったんだ、どうにか一枚くらい成功しても良さそうなものだ! こんなの初級下位の定神符に過ぎないのに! まさか今日の日取りが悪かったんじゃないだろうな?」


この言葉を口にした後、韓立は胸の鬱憤(うっぷん)が少し晴れたような気がし、気分がすっとした。


その後、首をかしげて考え、横目で机の上に残り少なくなった丹砂の箱と、あの金竺筆を一瞥(いちべつ)した。原因はそこにはないようだと感じた。何しろ彼の霊力をこの筆管に注ぎ込むのは非常にスムーズだったし、丹砂も符紙に描かれた途端に霊気(れいき)がみなぎり、偽物とは思えなかったからだ。


すぐには原因が思い当たらない韓立は、しばし考えた末、やはり小坊主に尋ねてみることにした。彼に解き明かしてもらえないかと思ったのだ。この時、韓立は修仙の道において、師匠格の人物から教えを請うことができるということが、いかに重要かを初めて痛感し、師事したいという思いが心に強く浮かんだ。


小坊主は韓立の画符失敗の愚痴を聞き終えると、異常に奇妙な目つきで彼をじっと見つめた。まるで韓立の顔に突然、美しい花が咲いたかのように。韓立が和尚がそんな様子なので、内心少しぞっとした。自分がさっき言ったことに何かおかしな点があったのだろうか、と相手がそんな風に自分を見つめる理由がわからなかった。


「韓施主(せしゅ)はおそらく、製符の道についてあまりご存知ないのでしょうな!」小坊主がようやく口を開いた。


「苦桑大師(くそうだいし)のおっしゃるとおりです。在下(ざいか)、製符は初めてでございます」韓立は正直に認めた。


「我々修仙者の間では、実は自ら製符を行う者は多くありません。必要な霊符は、たいてい各地の交易場で交換したり購入したりします。あの大名家の人々でさえ、同じです」


「なぜです?」韓立は驚いた。


「簡単なことです。経験豊富な専業の製符師が少なすぎる上、一人の合格した製符師を育てるのにかかる費用が大きすぎるからです。修仙の大派閥(だいはばつ)だけが、それを育てる実力を持っているのです」和尚は微笑みながら言った。


「韓施主は、十数回も連続して失敗した自分が、とても情けなく思っているのでしょうな?」和尚が尋ねた。


「はい、材料代だけでも、完成品の定神符を数枚買えるくらいかかってしまいました!」韓立は悔しそうに言った。


「しかし、施主はご存知でしょうか? 製符を学ぼうとする初心者は、最初、製符で百回近く連続して失敗するのが普通のことなのです。もし才能が少し劣る人に当たれば、数百回も失敗し続けても何ら不思議ではありません! 製符を千回以上こなして初めて、成功率が徐々に上がり始めるのです。それも、同じ一種類の霊符を描く場合に限った話です。もし別の符籙(ふろく)に変えたら、初心者同様とは言えないまでも、最初の失敗率は驚くほど高く、見ているだけでため息が出るほどです。ですから、合格した製符師は、数万回もの製符練習なしには、到底育てられません。しかし韓施主、考えてみてください。そんな材料の消耗(しょうもう)に耐えられる者が何人いるでしょうか? 修仙家族は言うまでもなく、修仙大派が育て上げた製符師でさえ、初級符籙の製作にしか精通できません。彼らに中級符籙の練習をさせようものなら、恐らくあの大派閥でさえも全財産を失い、負担しきれなくなるでしょう。何しろ等級が高くなるほど、使われる製符材料は驚くほど高価になるのですから」


和尚のこの言葉に、韓立は呆然(ぼうぜん)とした。

「それなのに、どうして露店で、丹砂や符紙を売っている人がいるのですか!」韓立は考えを巡らせ、またもや腑に落ちない点を感じた。


「ふっふっ! あの丹砂や符紙は、符術(ふじゅつ)を修める人々に売られているのですよ」小坊主は笑いながら言った。


「符術?」韓立は理解できなかった。


「それは施主が習っている定神術と同じく、あらかじめ描かれた符籙を使わなければ効果を発揮しない法術のことです! 法術を符紙内に貯蔵し、人が使いやすくしようとする符籙(ふろく)とは異なります。符術に用いる霊符は、単純に霊力で発動させることはできず、一定の呪文詠唱と施法が必要ですが、一般に複雑ではなく、すぐに習得できます」


「符術は同じ符籙を頻繁に使う必要があるため、こうした人々は買うのはあまりにも割に合わないと感じるのです。そこで施主と同じく、自分で符籙の描画を練習するのです。品種が比較的単一なため、費用は小さくありませんが、どうにか耐えられる範囲なのです。ですから施主が本当に定神術を修習したいのであれば、長期的には自分で符籙を作るのが一番良いでしょう。しかし、その術をあまり頻繁に使わないのであれば、少しばかりお金を出して、潔く数枚の定神符を買い、予備にしておくことをお勧めします」小坊主は細かく説明し、最後に韓立にいくつか助言を与えた。


「苦桑大師(くそうだいし)、ご指導ありがとうございました!」韓立は誠意を込めて深々と礼をした。


「施主、お気になさらず!」和尚は慌てて礼を返した。


「この小坊主はなかなか話しやすい。これからも何か難しいことがあれば、引き続き彼に教えを請うのも悪くない」韓立は部屋に戻る道すがら、ひそかにそう考えた。


今、専念して製符の練習をするのは不可能だ! やはり後で時間を見つけて、数枚の定神符を買って予備にしておこう! それより、体に宿る長春功(ちょうしゅんこう)はとっくに第八層の頂点に達しており、今や後続の数層の心法(しんぽう)を得たのだから、どうやら瓶頸(へいけい)を突破し、第九層に入る時が来たようだ。加えて新しく手に入れた幾つかの法術も練習し、早めにそれらを習得すれば、実力をさらに幾分か増すことができるだろう。


韓立が部屋のドアを押し開けたその一瞬、頭の中ではすでに今後の計画が決まっていた。


こうして韓立は、その後も毎日、昼間は部屋で薬を大量に飲み、座禅を組んで気を練り長春功を修行した。夜になると谷の人気のない場所に駆け出し、新しく学んだ幾つかの法術を練習した。


「流砂術(りゅうさじゅつ)」、「凍結術(とうけつじゅつ)」、「浮遊術(ふゆうじゅつ)」、「纏繞術(てんじょうじゅつ)」、「伝音術(でんおんじゅつ)」、「隠身術(いんしんじゅつ)」、「火花術(かかじゅつ)」、そして最も修得困難な「地刺術(ちしじゅつ)」である。


十余日に及ぶ猛特訓の末、韓立はついに太南会(たいなんかい)終了間際の最後の数日で、長春功を第九層へと突破させた。これには呉九指(ご・きゅうし)らは呆然とするばかりで、青紋道士(せいもんどうし)に至っては、韓立を散修(さんしゅう)の中でも異才(いさい)だと絶賛した!


だが韓立自身は痛いほど分かっていた。あの十数瓶もの仙丹(せんたん)がなければ、こんなに容易く壁を破れるはずがない、と。とはいえ、彼の所持する仙丹も残り少なくなってきたようだ。


注釈

金竺筆(きんじくひつ):製符に用いられる特殊な筆。金竺は材料の名か。

黄龍丹(こうりゅうたん):修行や回復に用いられる霊薬の一種。

金髄丸(きんずいがん):同上、別種の霊薬。

丹砂(たんさ):霊符を描くのに必要な霊力を持つ朱砂(しゅさ)。

画符(がふ):霊符を描くこと。製符とも。

禁制(きんせい):建物や区域に施された防御や隔離のための術。

座禅(ざぜん):瞑想により心身を整え、気(霊力)を練る修行法。

符紙(ふし):霊符を描くための特別な紙。

霊力(れいりょく):修仙者が操る超自然的なエネルギー。

筆管(ひっかん):筆の軸の部分。

符呪(ふじゅ):霊符に描かれる呪文や図様。

霊符(れいふ):法術の力を封じ込めた特殊な符。符籙(ふろく)とも。

墨大夫(ぼくたいふ):韓立の過去に関わった人物。

霊気(れいき):霊力が発する気配、オーラ。または自然界の霊的なエネルギー。

紙符(しふ):紙でできた霊符。

堪忍袋(たんにんぶくろ)の緒が切れる:我慢の限界を超える。

苦桑大師(くそうだいし):小坊主の名前または敬称。

施主(せしゅ):僧が在家の者(修行者でない者)に対して用いる敬称。

在下(ざいか):自分をへりくだって言う言葉。

派閥(はばつ):修仙者の宗派や組織。

符籙(ふろく):霊符の別称、または霊符の体系。

符術(ふじゅつ):特定の符籙を媒介として発動させる法術体系。

長春功(ちょうしゅんこう):韓立が修行する基礎的な修仙功法の名称。

心法(しんぽう):功法の核心的な教えや口訣(こうけつ)。

瓶頸(へいけい):修行における突破困難な壁。

散修(さんしゅう):特定の宗派に属さない修行者。

仙丹(せんたん):修行の助けとなる霊薬の総称。

太南会(たいなんかい):修仙者の交易会の名称。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。