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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第四卷:乱星海結丹編一海外激戦・虛天殿
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79-逃げるだよ

 韓立は遁光の中で飛翔しながら法力で体内の異変を抑え込み、身体は微かに震えていた。風霊勁の発作は、もはや彼の制御を超えようとしていた。


 これに韓立は心底、戦慄を覚えた!


 今や彼は初めて悟った。あの妖修・風希は、法宝を煉製したために力を大きく損なっていたか、あるいは緑液の反噬を抑えるために必死だったか、そのどちらかだったのだろう。当時、彼の体内の風霊勁の威力が大いに減衰していたのはそのためだ。さもなければ、あの日、本当にあの妖を振り切れたかどうかは、全くの未知数だった。


 しかし、遠くにぼんやりと見える小島を見ると、韓立の心はまた安らいだ。


 本来二日かかる道のりを、全力で飛遁した結果、わずか半日余りで到着した。伝送陣が間に合って完成していさえすれば、彼は無事に内海へ戻れる。そこでは元婴期の老怪物たちに気を遣わねばならないが、ここで異常な速度の裂風獣に執拗に追われるよりは、はるかにましだ。


 韓立がそう考えていると、背後から妙鶴真人の伝音が届いた。


「韓道友、貧道に悪意はない。ただ補天丹一枚を高値で交換したいだけだ。道友、どうしてそこまで拒むのか!」妙鶴真人の声は悠々と伝わり、平穏で安らかで、怒りの気配は微塵もなく、むしろ誠実で慈悲深い味わいがほの暗に込められていた。聞く者の敵意を薄れさせ、思わず好意を抱かせるような。


 しかし韓立は、この言葉に全く好意を抱くどころか、内心で罵詈雑言を浴びせた。


 血色のマントを使用したため速度が大きく低下していた。今、韓立が振り返れば、妙鶴が化した驚虹がはるか後方に追いすがっているのが見えた。


 この老道士は一体どんな邪門な功法を修めているのか、彼を追いかけてからというもの、この魅惑的で惑わすような音声で、絶え間なく彼を撹乱していた。


 韓立は一時油断し、最初は本当に危うく術中に陥りかけた。


 幸い体内の大衍決が自ら主を守り、彼の頭脳を即座に明晰に保ったおかげで、自ら網に飛び込む結果は免れた。


 しかし、それでも韓立は冷や汗をかいた。


 同じく迷魂の功法でも、元婴期修士が発揮する威力は、范夫人や元瑶の類とは比較にならないほど強力だった。


 老道士の口から出た「補天丹を交換するだけ」「悪意はない」という言葉を、韓立が真に受けるのは、頭がおかしいとしか言いようがない。


 小島が目前に迫るのを見て、韓立は油断せず、血紅色のマントに赤光を走らせ、島へと飛び込もうとした。


 しかし、ちょうどその時、向かいの空が光芒を放ち、動いた。続いて雲を貫くような鋭い叫び声が凄まじく響き渡り、かすかな黒点が忽然とそこに現れた。瞬く間にその黒点は数倍に膨らみ、恐るべき速度でこちらへと飛来した。


 韓立はこれを見て、心中大いに驚いた。


 相手の顔がはっきり見えなくとも、この恐るべき速度と暴虐極まりない叫び声は、あの九級裂風獣に他ならない。


 韓立は口の中が苦くなったが、考える間もなく背後に銀光を走らせ、双翅が「サッ」と音を立てて現れた。


 この妖がすでに現れた以上、生き延びるには先に小島に辿り着くしかない。


 そうでなければ、たとえ今すぐ方向を変えて逃げ出したとしても、裂風獣の恐るべき速度を前に、辟邪神雷をすべて使い果たしても、振り切れる保証はなかった。


 そう考えて、韓立は雷鳴と共にその場から消え失せた。

 全身が銀色の電弧と化し、空中で弾んだり消えたりしながら、小島へと飛翔していった。


 後方の妙鶴も鋭い叫び声を聞きつけ、たちまち顔色を変えた。


 老道士は来たる者が誰かは知らなかったが、相手が手強い存在であることは漠然と感じ取っていた。


 そして、黒点がためらわず韓立へ向かうのを見て、当然ながらこの者も虚天鼎を目当てにしていると思い込み、内心焦燥感が高まった。


 妙鶴は焦りのあまり、口を開き、真元を惜しまずに精血の塊を吐き出した。


 その血塊は口を出ると、風に迎えて大団の血霧となり、老道士を包み込んだ。


 道袍の白鶴の図柄が白く強く輝き、周囲の血霧を一滴残さず吸い込んだ。白鶴の図は瞬く間に赤く染まった。


 妙鶴は躊躇せず、くるりと身形を回転させた。道袍全体が鶴の鳴き声のような音を発し、まばゆい白光の中から、体長数丈の血鶴が老道士の身体から舞い上がった。


 この鶴は極めて神々しく、全身は血のように赤く、両目は碧色だった。


 妙鶴はこれを見て、陰鬱な表情で身形を揺らすと、鶴の背に乗った。


 そして鶴の頭を強く叩くと、白鶴の目に碧光が激しく閃き、双翼を広げたかと思うと、すでに老道士を乗せて数十丈も先へ飛び去っていた。


 速度は韓立の瞬間移動のような雷遁には及ばないが、以前よりはるかに速かった。


 こうして付近の海域上空では、奇妙な光景が広がった。


 韓立が前方で風雷の翅を使い幽鬼のように移動し、向かいからは黒影が絶え間ない鋭い叫び声と共に飛来し、後方では妙鶴が白鶴に乗り疾風のように追いかける。


 しかし、まばたき数回ほどの間に、韓立は小島の上空に到達した。


 その時、向かいの黒影もまた想像を絶する速度で、彼から千余丈(約三キロ)の距離に迫っていた。


 韓立は一目で相手を見定め、結果、思わず背筋が凍った。


 遠くに現れたのは、上半身が鳥、下半身が魚の尾を持つ異様な妖獣だった。同時に丈余(約三メートル)の羽翼と二対の鋭い怪爪を持ち、腹部には魚の鱗のような一寸ほどの鱗が生え、青光を放っていた。


 風希は彼を追撃するために、裂風獣の本体を現していたのだ。


 高級妖修が妖体の原形で戦うのは確かに不便もあるが、妖獣の天賦の特徴を存分に発揮できる。裂風獣の速度という天賦を考えれば、本体を現せば風を切るような恐怖の速度となるのは当然だった。


 韓立は冷たい息を吸い込み、一瞬たりとも遅れるまいと銀光を放つと、すでに小島の土塚の上にいた。続いて光華が一閃し、姿を消した。


 妖獣はこの光景を見ると、口にしていた鋭い叫び声を突然止めた。双翼を激しく数度羽ばたかせると、千余丈の距離を一瞬で飛び越え、同じく小島の上空に到達した。


 そして青光が強く閃いた後、この妖獣は人型に戻った。


 偶然にも、韓立の後を追ってきた妙鶴が白鶴を駆り、同じくこの瞬間に眼前に飛来した。


 彼は風希が化形する場面を見て、まず驚いたが、風希の人間とほとんど変わらない容貌をはっきり見定めると、全身の毛が逆立った。


「九級妖獣? それも速度を得意とする鳥類の妖獣か」一目見ただけで、妙鶴は胸が凍るような結論に達した。


 通常、人間と高級妖獣が出会えば、必ずしも生死をかけた戦いになるとは限らないが、もし双方の力に差があるならば、血戦は避けられない。


 何しろ高級妖獣の妖丹も、人間の金丹や元婴も、相手にとっては渇望される極上の品だからだ。

 相手は九級妖獣、人間の元婴中期修士よりも半歩強い存在だ。今、彼が遭遇したのは、まさにその相手である。老道士がひそかに悲鳴を上げないわけがない。


 普段ならば、妙鶴は言うまでもなく振り返って逃げ出しただろう。しかし、虚天鼎が目前にあるとあって、どうしても諦めきれなかった。


 そこで妙鶴は顔色を青ざめさせると、両手を振るった。片手には青い古鏡が現れ、もう片方の手にはあの碧玉の小槌が浮かんだ。


 手に二つの古宝を握ると、老道士も胆力が湧き、陰険な表情で相手を睨みつけ、黙り込んだ。


 風希も妙鶴真人を見ていたが、今の彼の関心は韓立に集中していた。老道士の敵意ある行動に構っている暇などない。


 彼は遠くから韓立の背中の双翅を見て、彼がこの法宝を駆使できることに驚愕すると同時に、心中は痛恨の極みだった。


 これではたとえ韓立を撃ち殺せても、認主煉化(主人として認め、煉化)された風雷の翅は、法宝の威力の七割程度しか発揮できまい。これでは彼が韓立を深く恨むのも無理はない。


 したがって妙鶴に対しては、口から冷たく「消えろ」の一語を吐くと、自身は青光と化して一気に下へ向かい、瞬く間に土塚の上から消え失せた。


 これには妙鶴真人も少し呆然とした。


 しかしすぐに歯を食いしばると、彼もまた白鶴に乗って飛び降りた。乱星海第一の秘宝・虚天鼎は、老い先短い命を賭けてでも奪い取る価値があった。


 ……


 韓立は先んじて石門を破壊し、直接通路内へ飛び込んでいた。


 数度の雷遁を経て、彼は伝送陣が設置されている広間に現れた。そこには数名の妙音門の男女修士が、何か話しながら笑っていた。


 忽然と現れた韓立を見て、彼らは驚愕のあまり言葉を失った。


「伝送陣は完成したか?」韓立は銀光一閃、瞬く間に伝送陣の傍らに現れると、その男女の修士たちに向かって大声で叫んだ。


「はっ! 厲先輩でいらっしゃいます! 伝送陣はすでに完成しております。ただしまだテストはしておりません。我々はちょうど……」そのうちの一人、妖艶な女修が、門主の新たな後ろ盾であるこの人物を認め、慌てて恭しく答えた。韓立に詳しく説明しようとした。


 しかし韓立は陣法が完成したと聞くや、他のことは顧みず、身形を揺らすと、伝送陣の中へ飛び込んだ。


 ほとんど同時に、広間の天井が爆裂した。妖修・風希が青光に包まれて天から降り立った。


 韓立はこれを見て顔面蒼白となった!


 風希もまた伝送陣の中の韓立を一目で見て、同様に顔色を変えた。


 韓立が自ら死地を求めるように小島へ逃げ込んだことに、彼は内心疑念を抱いていたが、まさかここに伝送陣があるとは夢にも思わなかった。


 韓立が一道の法訣と共に精血を混ぜて放ち、真元を大いに消耗するのを厭わず瞬時に伝送陣を起動させると、唸り音が大いに響いた。


「待てっ!」


 彼は驚きと怒りの極みから吼えると、考える間もなく口を開いた。一団の青濛々とした光塊が伝送陣の一角めがけて激射した。


 伝送陣さえ破壊すれば、韓立は自然と彼の掌中にある。


 攻撃を放つと同時に、この妖修は身形を揺らし、顔を歪ませて伝送陣の方向へ旋風のように猛進した。


 韓立の伝送を阻止しようとするためだ。


 しかし、彼の動作は明らかに遅すぎた。


 韓立はあの青光に対して十余本の剣気を弾き出し、接近を一時的に遅らせただけで、猛り狂って襲いかかる裂風獣に対しては、一瞬たりとも避ける素振りも見せなかった。


 なぜなら陣法は乳白色の光芒を放ち、韓立の身形を一気に巻き込んだからだ。


 風希が狂風の如く陣法の前に飛び至った時、韓立は光芒の中で形をぼやかすと、消え失せていた。


 広間に残されたのは、激怒して暴れ狂う裂風獣だけだった。


 彼はこの陣法がどこへ通じているか知らず、伝送符も持っていなかったため、陣法に飛び込んで追跡する勇気はなかった。


 その時、妙鶴が白鶴に乗って破壊された天井から飛び込んできたが、彼が見たのは陣法の消えゆく白光だけだった。彼もまた驚愕と悔しさの表情を浮かべた。


 しかし、その瞬間、風希が猛然と振り返り、真っ赤な双眸を道士に釘付けにした。冷たい殺機が顔を一瞬よぎった。


「ここにいる人間は、全員死ぬがいい!」裂風獣は韓立を手中から逃がした事実に狂気を帯びており、妙鶴が飛び込んでくるのを見るや、鬱積した暴虐の全てを相手にぶつけた。


 続けてこの妖修は全身に青光を大いに放ち、刹那の間に一道の青虹と化して、猛り狂う勢いで妙鶴へ襲いかかった。


 妙鶴はこの光景を見て顔色を変え、考える間もなく手中の古鏡と玉槌をほぼ同時に祭り出した。


 様々な色の光芒が空中で絡み合った……


 ……


 一ヶ月余り後、付近海域の人間修士の間で噂が広まった。元婴期修士である妙鶴真人が、なんと九級妖獣に肉体を崩壊させられ、渾身の解数を使ってようやく元婴を逃がし、洞府へ戻ったというのだ。


 一時期、人間たちは再び妖獣の凶暴さに肝を冷やした。


 彼らがまったく予想しなかったのは、これがほんの始まりに過ぎなかったということだ。


 わずか数ヶ月後、深淵の蛟龍一族が突如として大勢の高級メンバーを飛び出させ、深海から飛び立ち、人間の結丹期以上の修士を四方八方で襲い始めた。


 それはわずか数年しか続かなかったが、引き起こされた高級修士の死傷者は、獣潮の一戦に匹敵するほどの数に上った。


 その中には、他の二人の元婴期老怪も含まれていた。彼らもまた数匹の八九級蛟龍に包囲され、重傷を負う結果となった。


 これにより、付近海域の修士たちは蛟龍の話になると皆顔色を変え、誰も容易に洞府を出て活動しようとはしなかった。この状況は足掛け十数年続き、ようやく徐々に正常に戻った。


 しかし、妖獣の手から辛うじて逃れた修士たちを戸惑わせたのは、これらの妖獣が毎回手を下す前に、彼らの中に「厲」という姓の結丹期修士がいないか尋ねてきたことだった。答えられなければ、容赦なく攻撃を加えたのだ。


 こうして、これらの修士たちも推測した。この度の蛟龍族の大規模攻撃は、十中八九、この厲姓の修士が引き起こしたのだろうと。


 この人物がどう蛟龍一族を激怒させたのかは知る由もなかった。


 この事実が広まった結果、当然ながら誰もがこの人物を災いを招く厄介者と罵った。もしこの厲姓修士を見つけ出せれば、おそらく縛り上げて蛟龍一族に差し出し、謝罪の意を示すだけだろうと思われた。


 しかし、彼らを困惑させたのは、傷つきながらも生き残った高級修士は何人かいたものの、厲姓の人物は一人もいなかったことだ。


 彼らが咎め立てしようにも、この元凶を見つけ出すことは全く不可能だった。


 ……


 後に万人から同時に呪われた韓立は、一陣の白光の中で、大挪移令だいだいれいを手にし、見知らぬ場所に現れた。


 韓立の慎重な性格から、伝送される前から既に敵と遭遇し戦う可能性を想定し、容貌もまた見知らぬ人物のものへと変幻させていた。


 しかし、伝送終了の眩暈から回復する前に、だらりとした声が脇から突然響いた。


「おい兄貴、どうやら俺たちと同じく気が早いようだな。二人揃って一番乗りってわけだ。他の連中はまだ来てねえぜ!」


 この声を聞き、韓立は心中ひやりとしたが、頭脳を急回転させ「うん」と曖昧な返事をすると、声の主の方へ視線を向けた。


 彼の立つ伝送陣からそう遠くないところに、黒衣をまとった人物がうつむいて青石の上に坐っていた。


 韓立が視線を向けたのを見て、ようやく顔を上げると、歯をむいて笑い、白く輝く歯を見せた。


 しかし韓立がこの人物の容貌をはっきり見た瞬間、思わず飛び上がらんばかりに驚いた。


 この男の顔は実に恐ろしく、乾いて痩せ細り、まるで生きた髑髏どくろのようだった。そして韓立に向かって笑うと、両眼は幽かな青い光を放っていた。


 しかし、心中は驚愕したものの、韓立はこの人物を軽んじることはできなかった。


 一瞥しただけで、この男は結丹中期の修士だったからだ。これは乱星海では珍しい高級修士である。


 髑髏男も明らかに韓立が結丹後期の修為であることを見抜き、目に驚きの色を浮かべると、口調が急に丁寧になった。


「兄台、どうかそちらで少しお休みください。他の連中もそろそろ参るでしょう。今回の行動、我々は皆、かなりの利益を得られるはずですよ」

 髑髏男はへへへと笑いながら言った。


 韓立は内心で驚いたが、状況が明らかでない中では、微塵も動じずにうなずき、表情を変えなかった。


 その時、韓立は周囲の状況もはっきりと見定め、少し安心した。


 ここは洞窟のような場所で、長さ、幅、高さは全て二十丈(約六十メートル)ほどだった。そして彼の足元にある古伝送陣の他に、さらに二つの別の伝送陣が設置されていた。


 ここにあるもの全てが、范夫人が彼に説明した皇明島の伝送陣の在り処と一致していた。彼は伝送中に何の不具合もなく、本当に内星海へ戻ってきたのだ。


 妙音門の弟子から伝送陣はまだテストされていないと聞いていたため、韓立は内心不安を抱いていたが、今やその心配は不要となった。


 どうやら運はまだ彼を見放していなかったようだ。


 髑髏男が韓立に話しかけている間にも、別の陣法が黄色く光り、どこか大柄な人影がかすかに現れた。


 黒衣の男は目を輝かせると、すぐに立ち上がり、その人物の方へ歩み寄った。


 この機会に、韓立は微動だにせず、両足から微細な青色の剣気を放った。それは足元の伝送陣に、肉眼では見分けがたい裂け目を刻みつけた。


 こうして足元の古伝送陣は機能を失った。これで妙鶴や裂風獣が万が一伝送符を持って追ってきても、心配はない。


 韓立のこの小細工は極めて巧妙であり、黒衣の男と、ちょうど伝送されて現れた獰猛な風貌の大男は、韓立の仕業に気づかなかった。


 二人は知り合いのようで、笑い罵りながら談笑していた。


 韓立はこれを見て、表情を変えずに伝送陣から降り、洞窟の外の方向へ歩き出した。


 しかし、彼が数歩進んだところで、背後から髑髏男の少し訝しげな声が響いた。


「兄台、まだ人揃いではありません。私の知らせでは五人で一斉に行動することになっています。今、指示を伝える者ともう一人がまだ到着していません。我々は洞窟内で待機するのが賢明でしょう。さもなければ後で説明がつかなくなります! まさか兄台、初めてこの種の行動に参加されるのですか? 道理でお顔見知りでないわけですな!」

 黒衣の男は最初は少し驚いていたが、最後には自分で納得したように言った。


 なぜか彼は、最初から最後まで韓立の正体を疑わなかった。


 韓立は眉をひそめたが、すぐにわざと不満げにぶつぶつと呟いた。


「そんなに面倒なのか。俺が来た時は、誰もそんな規則は言わなかったぞ」


「ふふっ! きっと兄台の修為が高すぎて、指示を伝えた連中が余計な口出しをできなかったのでしょう。しかし兄台、どうかもう少しお待ちください。任務さえ達成すれば、またしばらくのんびりできますからね」

 髑髏男はしゃくしゃくと笑った。その意図は不明だった。


 韓立はここまで聞いて、この場所で行われていることの七、八割を推測した。


 彼は目を微かに動かし、さらに何か探ろうとしたその時、また一つの陣法が光り輝いた。今度は二人が同時に伝送されて現れた。


 一人はひげと髪が真っ白な灰色の道袍の老人、もう一人は精悍で引き締まった男だった。


 韓立は異様な光を目に浮かべて気づいた。老人の広い袖の両方に、それぞれ青色の炎の紋章が刺繍されていた。それは生き生きとしており、微かに霊気が漂い、普通のマークではないようだった。


 この二人が到着し、洞窟内はついに五人揃った。


 その内訳は、韓立が結丹後期、髑髏男が結丹中期、大男と老人が結丹初期の修為、そして精悍な男は築基後期の修為だった。

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