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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第四卷:乱星海結丹編一海外激戦・虛天殿
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55-大戦勃発

「貴様らと折半だと?」この言葉を聞き、極陰の険しい顔が微かに歪み、幾分心が動いた様子だった。


 極陰にとって、名目上の弟子である韓立の分を自分が掌握すれば、どう分割しようとも自分が得る分は決して少なくなるはずはない。


 だが、極陰がこの案の実行可能性を深く考えている間もなく、最前列に立つ蛮胡子が頭を上げて狂ったように大笑いした。


「虚天鼎を折半だと? 万天明、いい身分だな! 本様の口から食い物を奪おうと思うなら、まずはお前の爪がそれに足るかどうか見せてみろ!」

  そう言うと、蛮胡子は二言もなく一声をかけた。眼前でうずくまっていた巨大な豹が突然立ち上がり、低く唸るや、頭上の第三の獣目が大きく見開かれ、一道の土黄色の光柱を対面の万天明に放った。


「畜生、死に急ぐか!」万天明は思わず怒声を上げた。


 蛮胡子が自分の提案を全く考慮せず、いきなり手を出すとは予想外だった。どう見ても、自分の側には寒蛟と離亀が加勢し、相手より一枚上手だったはずだ。


 万天明は慌てて一道の紫光を放ち、黄色の光柱を迎え撃ち、寸前で食い止めた。


 しかし紫光と黄光が触れ合った瞬間、黄芒は爆裂した。


 続けて「カラン」という音が響き、紫光が跡形もなく消えた後、代わりに白っぽいものが空中から落下した。皆がそれが何かを見定める前に、その物は粉々に砕け散った。


 ようやくはっきりと見えたそれは、ただの普通の石片だった。これには大部分の者が面食らった。


 だが万天明はこの光景を見るや、顔色が瞬時に何度も変わり、目に鋭い光を宿し、信じられないという様子で言った。


異化術いかじゅつ…! お前の三目豹さんもくひょうは変異霊獣だったのか!」


「変異霊獣」という言葉を聞くや、場にいる正魔双方は驚愕の表情を見せた。


 変異霊獣と蛮荒異種ばんこういしゅは、聞こえは非常に似ているが、実際には天と地ほどの差があった。


「蛮荒異種」とは、上古の時代の稀有な霊獣が、時の流れの中で様々な理由により習性や外形を変え、上古の霊獣の特徴を幾つか持ちながらも全く異なる新たな種族を形成したものを指す。


 ただしこの種の霊獣は大半が極めて珍しく、数も多くないため、通常は見つけるのが難しい。


 一方、変異霊獣は異なり、一匹一匹が唯一無二の存在だ。


 それはある霊獣が進階の過程で、何らかの理由により予測不可能な突然変異を起こし、能力が大きく変化したものである。


 この変異は良し悪し様々だが、中には変異後の能力が独特で非常に強力なものもあり、普通の法術ではできないことすら可能にする。


 例えば大部分の法器や法宝を石に変える能力は、その中でも特に有名なものの一つだ。


 この能力は実に鋭く、かつて結丹期の修士が自身の変異霊獣のこの能力を用いて、自分と同階の結丹期修士三、四人を一気に殲滅し、乱星海全体を震撼させたことがあった。


 それ以来、修仙界は変異霊獣の奇妙な能力を総称して異化術と呼び、普通の法術との区別を示している。


 蛮胡子のこの三目豹は、本来は第三の獣目から火属性の攻撃を放つだけだった。だが今放っているのは、万天明の名も知れぬ法器か法宝を直接石に変える光柱であり、これは間違いなくこの霊獣が変異した証拠だった。


 これには場の他の者も呆然とした。


 何しろ変異霊獣の出現は万に一つもなく、しかも四級以上の高階霊獣にのみ起こる現象だ。


 霊獣が変異し得ると知られて以来、乱星海で出現した有名な変異霊獣はわずか十数匹。しかも変異後に能力が有用なものは、その中のほんの一部に過ぎない。


 こうして、変異霊獣はますます貴重な存在となっていた。


 そして前回の変異霊獣の出現から、乱星海では既に千余年が経過している。これにより霊獣を育成する修士は、霊獣が進階する際に変異などという夢物語が起こることを、基本的に誰も期待していなかった。


 今、魔道双方はこの三目豹を凝視し、それぞれ異なる表情を浮かべていた!


 万天明はようやく理解した。蛮胡子がなぜ宝物の折半要求を遠慮なく拒否したのか。これがその依り代だったのだ!


 この変異した三目豹一匹で、恐らく自分の側の寒蛟と離亀の存在を十分に相殺してしまう。


 理解した万天明は表情を厳しくし、顔を上げて極陰と儒衫の老人を見た。


 二人の顔には意外と驚きの色が浮かび、どうやら虚天鼎を彼らと折半する気は失せたようだ。


 万天明の推測は正しかった。極陰祖師は蛮胡子の三目豹が変異霊獣であることを知ると、当然譲歩の考えを捨てた。


 魔道の巨魁である彼は善男信女ではない。この宝を独占できるなら、正道と折半するなど望むはずがない。


 彼は儒衫の老人と意味深長に視線を交わすと、ためらうことなくくるくると体を回転させた。無数の玄陰の黒気が全身から立ち上り、傍らの十数体の天都屍てんとしは同時に体をくねらせ、黒光の中に跡形もなく消えた。


 儒衫の老人は韓立の耳元に伝音した。


「少し後ろに下がれ。お前自身の命を守ればそれで良い。この戦いには、お前が介入できる余地はない」


 そう言うと、老人の頭上にいた青棘鳥せいきょくちょうの群れが何かの指令を受けたかのように、一声鋭い悲鳴を上げ、青色の矢となって対面の正道の者たちに向かって突進した。老人自身も袖を一振りし、袖口から無数の青い糸が射ち出され、びっしりと鳥の群れを追って激射した。


 魔道の者が先に手を出したのを見て、万天明も遠慮しなくなった。


 たとえ蛮胡子の変異霊獣が厄介でも、彼は本当に恐れているわけではなかった。何しろ変異霊獣がどれほど強力でも、所詮は畜生に過ぎない。


 そして彼ははっきり理解していた。器物を石に変える異化術は、修士自身への攻撃には無力だ。法宝が黄光に当たらないよう注意さえすれば、この霊獣に対抗できないわけではない。


 そう考えて、万天明は一声冷ややかに吐き、短い二文字を口にした。


「手を出せ!」


 そう言うと、彼は白い寒蛟を放ち、両手を胸の前で打ち合わせた。紫色の炎が全身に燃え盛り、瞬く間に紫炎の人となり、天へ舞い上がって蛮胡子に向かって突進した。


 傍らの天悟子はこれを見るや、素早く離亀を呼び出し、ためらわずに甲羅を強く叩いた。


 すると巨亀の一対の緑色の小さな目に凶光が走り、亀の口がゆっくりと開いた。白く濁った寒気が天地を覆うほど噴き出し、対面から突っ込んでくる青い鳥の群れに向かって白く光る驚濤の大波となって押し寄せた。


 青棘鳥の群れも負けじと尖った嘴を開き、一道道の細い青い炎を吐き出した。それらはすぐに融合して一本の巨大な青色火柱となり、白い寒気と激突し絡み合った。青い炎と白い気体が四方に飛び散り、どうやらすぐには決着がつきそうになかった。


 農夫風の黒く痩せた老人の攻撃は、もっと奇怪だった。


 彼は無表情に突然手のひらを返し、二本の指の間に翠緑が滴る一枚の柳の枝を現した。


 その柳の枝を微かに一振りすると、無数の緑色の幻影が彼の体から輪になって飛び出し、十余丈の範囲がたちまち鬱蒼とした森となり、緑の海と化した。


 しかし緑色の光の中に二つの黒光が走り、三体の鉄甲妖屍が突然露出した。


 それらの周囲の無数の緑の糸が生きているかのように動き出し、一斉に激射した。瞬く間に無数の糸条が幾体かの天都妖屍をしっかりと縛り上げた。


 これらの妖屍は本来、力が並外れている怪物だが、見た目は柔らかそうな緑の糸に縛られると、もはやどうにも抜け出せなかった。二匹の怪獣は焦って唸り声を上げた。


 極陰祖師はこの光景を見るや、顔に冷たさを浮かべ、大団の黒い雲に化身して急速にここへ飛んできた。


 彼の天都屍は一体一体が煉製が容易でなく、軽々しく相手に破壊されるわけにはいかない。


 それに相手が使っているのがこれほど明らかな木属性の功法なら、彼の天都屍火てんとしかで対抗すれば効果は倍増だ!


 元嬰期の老怪たちの大戦が始まったのを見て、韓立は言われるまでもなく慌ててさらに十余歩後退した。


 たとえ百余歩離れたところに逃げても全く無意味だと分かっていながらも、韓立は無意識にもっと遠くへ逃げたくなったのだ。


 正道の連中がもし邪念を起こし、虚天鼎を諦めてでも血玉蜘蛛の主人である自分を抹殺しようとしたら? それこそ万事休すだ!


 蛮胡子らが確実に自分を救出できるとは限らない。何しろこの百余丈の高台は、彼にとってさえ一瞬で到達できる狭さなのだ。


 今、極陰は同じ元嬰期の修士に絡まれている。これは玄骨が暗算を仕掛ける絶好の機会だ。だが、この老魔が正道に利益を与えることになっても、まず自分の恨みを晴らそうとするだろうか? そう考えて、韓立は思わず祭壇の下で戦いを見ている玄骨を見た。


 その時、相手は無表情に激闘中の戦団を見つめ、顔には何の感情の動きも見えず、内心の考えを推測することすらできなかった。


「クソ」韓立は鬱陶しく心の中で呟いた。


 韓立は玄骨の心中が読めず、目を移してふと近くの血玉蜘蛛を見た。


 今、この霊獣の体の赤い光はますます輝きを増し、体は微かに震えているものの、それでもクモの糸を少しずつ引き締めている。


 あの乳白色のクモの糸は今、幽幽とした青い光を反射し、陰に寒く不気味に揺らいでいた。


 しかし青い光が糸に沿って血玉蜘蛛の赤い光に近づくと、白い星のような光点が爆発し、すぐに外へ弾き飛ばされ、血玉蜘蛛の本体には半寸も近づけなかった。


 韓立は眉をひそめた。


 言うまでもなく、この奇妙な光は乾藍氷焔けんらんひょうえんと大いに関係があるに違いない。道理で老怪たちは誰も宝引きの霊獣を助けに行かないわけだ。おそらくこの青い光を忌み嫌っているのだろう!


 ちょうどそう思った時、頭上で**ドーン**という轟音が響き、蛮胡子の怒号と狂笑が混じっていた。


 彼の目は再び戦団の中央へと引き寄せられた。


 今、蛮胡子の体は三、四丈に巨大化していた。上半身の衣服はどこへ飛んだのか分からず、胸にはびっしりと鱗が露出し、まるで金の甲冑のように精光を放ち、まともに見ることすらできない。


 さらに奇怪なことに、彼の巨大な体の周囲には数本の銀色の光帯が飛び回っていた。


 これらの光帯は夢幻のようで、漂うように定まらないが、対面の万天明の天羅功てんらこうが化した紫色の火竜が、何度挑んでも体に近づけず、常に紫炎の前に完璧に立ち塞がっていた。


 蛮胡子は自ら託天魔功たくてんまこうを乱星海一と称しているが、この功法で万天明の真火を直接受けるような愚かな真似は決してしない。


 そして蛮胡子の手には、一対の黒く鈍く光る鉄の手袋が握られていた。そこには数寸の棘がびっしりと付き、形は凶悪で恐ろしい。


 蛮胡子はこの手袋を振るい、龍のように遊動する紫色の巨剣と激しく打ち合っていた。一撃ごとに拳套から巨大な金の手が飛び出し、巨剣を数丈も叩き飛ばした。


 空中で巨剣を操る万天明は、殺気を帯びた顔でさらに二匹の紫焔火竜を駆り、天空を舞わせ、銀色の光帯の隙を突いて、蛮胡子という大敵を一気に封じ込めようとしていた。


 もう一方の天悟子と青易居士は、どちらも自身を大切にするタイプらしく、互いに遠く離れていた。一方は青棘鳥と自身の法宝を駆って相手を攻撃し続け、もう一方は離亀と白く光る短いしゃくに頼って、風雨をも防ぐ堅固な守りを見せていた。


 二人の戦いは熱を帯びず、まるで試合でもしているようだった!


 そして最も激しい戦いを繰り広げていたのは、なんと極陰祖師と黒く痩せた老人の二人だった。


 二人の戦う広範囲には、鬼の叫びと鳳凰の鳴き声が入り混じり、緑色の影と黒い気体が渦巻き流れ、巨大な渦を形成していた。


 時折、外に数体の天都妖屍の影がちらつくか、渦の中から何本かの太い緑の蔓が猛然と飛び出し狂うように揺れるのが見えるだけで、どうやら激しい戦いを繰り広げているようだった!


 魔道側が非常に重視していた変異三目霊豹へんいさんもくれいひょうは、白い寒蛟と追いかけっこをしていた。


 寒蛟は明らかに劣勢で、三目豹の異化黄光に追われて天空を逃げ回っていた。


 吐き出す白光の寒気は黄光に触れると瞬時に普通の石片に変わり、この豹に近づくことすらできなかった。


 しかし何とかこの変異三目豹を釘付けにし、正道の三人を攻撃する隙を与えなかった。状況を見る限り、この寒蛟はもうしばらくは単独で持ちこたえられそうだった。


 これを見て、韓立は奇妙な感覚を抱いた。


 これらの者たちは戦っているのは確かに派手で、法宝が乱れ飛び、秘術が狂ったように繰り出されている。しかし彼に与える印象は生死をかけた戦いというより、ただの試合のように感じられた。


 もしかすると元嬰期修士の戦いとは、このようなものなのだろうか?


 韓立は内心で疑問を抱いた。


 突然何かを思い出し、再び玄骨を見た。


 玄骨の無表情な顔には、今、冷笑が微かに浮かんでいた。しかし彼はすぐに韓立の視線を感じ取ると、顔を引き締め、再び無表情に戻った。


 韓立は心臓が冷たくなり、何かをつかんだような気がした!


 しかし彼が考える間もなく、穴口の虚天鼎が激しい爆音を発し、続けて耳障りな摩擦音が高まった。


 韓立は大いに驚き、急いで顔を穴口の方へ向け、警戒の態勢を取った。


 祭壇の中の青い光が激しく揺らめき、続けて龍の鳴き声が響き渡った。一道の火の光が洞窟から飛び出した。


 この光は祭壇の上を急速に旋回すると、二つの頭を持つ炎の巨狼となって空中に静止した。


 この狼は全身が盛んに燃え盛る炎に包まれており、皆を見るや、四肢で地面を蹴って飛び去ろうとした。


 戦っていた正魔双方はこの光景を見るや、同時に呆然として手を止めた。


 最も近い儒衫の老人は、すぐに自身の天霊蓋てんりょうがいを叩き、一只の青光大手が頭蓋骨から飛び出し、火狼を捕らえようと巻きついた。


「甘い考えだ! この宝は本門主のものだ!」万天明はこの光景を見るや、焦りの色を浮かえて大喝した。くるくると回転すると、二つの全く同じ分身を化出した。


 二人の万天明の体に紫炎が燃え盛り、二つの紫虹が一つに融合して大手を追いかけた。


 蛮胡子ら他の者たちも我に返り、神通を急いで発動させ、同じ目標へ遁光を放った。


 五色の光が一つの焦点に集まり始めた。


 他の者たちは明らかに青易居士と万天明より一歩遅れていた。


 特に最初に動いた大手は、遁光が神速だった。青光大手が瞬く間に火狼の頭上に到達し、下へ掴みかかろうとした。


 皆が青易居士の手に落ちたと確信したその時、火狼は二つの頭を同時に振った。赤と黄の二色の光の障壁が体の周りに自然に現れた。


 青光大手は一掴みで失敗し、「ドン」という鈍い音と共に弾き飛ばされた。


 儒衫の老人はまず驚いたが、すぐにまた喜色を浮かべた。


 青光が大盛りとなり、大手が再び強く掴みかかろうとしたその時、後ろの紫虹が追いついてきた。


 青光大手に追いつくのがわずかに遅れ、阻止が間に合わないと見るや、紫虹は目標を変え、一匹の紫色の火竜に化身し、大手に向かって猛然と噛みついた。


 後ろで大手を操る儒衫の老人はこの光景を見て、心の中で万天明の卑劣さを罵倒した!


 彼が分神を直接変化させた玄化大手げんかだいしゅは、確かに使いやすく威力も大きい。しかし天羅真功てんらしんこうの化した火竜の一撃をまともに食らうわけにはいかない。


 何しろ宝を得たとしても、自身の分神が大きな損傷を受ける。彼はそんな割に合わない真似は絶対にしない!


 やむなく、青光大手は急に下へ掴む動きを止め、方向を変えて紫色の火竜に向かっていった。


 青光と紫焔が爆裂した。


 そしてこの一瞬の遅れの間に、後ろの蛮胡子や天悟子らも追いついた。


 数人は火狼を囲み、互いに近くの相手を攻撃した。


 今回の攻撃は、さっきのものよりはるかに凶悪で毒辣だった。様々な秘術や道法が次々と繰り出され、一時的に数人は絡み合い、誰も手を伸ばして火狼に触れる余裕がなかった。


 火狼もまた十分に霊性があり、数人の元嬰期老怪の強さを理解しているようで、体勢を低くすると猛然と下方へ逃げ出した。


 走る方向は、まさに玄骨や韓立らが立っている場所だった。


 呆然と見ていた韓立は、この時点でほぼ理解した。


 この双頭の火狼は、間違いなく虚天鼎の中の宝物が変化したものだ。なぜ虚天鼎が引き出される前に、先に鼎を破って飛び出したのかは分からない。


 それがどんな宝物で、神通はどうなのかは分からない。しかし通霊化形し、あの青光大手の一撃を防ぎ、自ら行動できることから、その貴重さは想像できた。


 今、この宝が自分たち結丹期修士のいる場所へ向かって飛んでくる。韓立はほとんど考える間もなく、慌てて貯物袋を叩き、一道の白気が突然手の中に現れた。


 韓立は片手で白気の中へ掴み込むと、古風な趣のある花籠はなかごが手に現れた。


 韓立が法を施そうとしたその時、遠くない下方から二道の黒気が化した巨蟒きょもうが飛び出し、火狼に絡みついた。そしてすぐに何重にも巻きつくと、猛然と締め付けた。韓立は心の中で呪いの言葉を吐き、横目で見ると、なんと烏丑が得意げな顔で法印を組み、その黒い巨蟒は明らかに彼の玄陰大法げんいんだいほうが化したものだった。


 韓立の顔に微かな悔しさが浮かんだ。心の中でためらいながら、この宝を奪い取るべきか考えた。何しろこの物はまだ相手の手には入っていないのだから。


 しかしそのために後ろ盾の強い極陰祖師の逆鱗に触れ、宝引きの後にすぐに手を出されたら、それこそ大変なことになる。割に合わない!


 韓立の心の中で様々な考えが駆け巡ったが、彼が得失を量り終える前に、傍らの玄骨が遠慮なく手を出した。


 玄骨の目に寒光が走り、黙って口を開いた。一道の緑光が吐き出された。瞬く間に緑光が大盛りとなり、碧緑の巨大な糸の網と化し、黒蟒と火狼をまとめて頭から覆った。


「俺様と宝を奪い合う気か?」烏丑は、ずっと無口だった玄骨が声もなく自分と宝を争おうとしていることに気づき、腹を立てて大声で詰問した。顔には凶相が現れていた!


「笑止千万、その宝はお前の家で作ったものか? お前が奪えるなら、なぜ拙者が奪えんのだ?」玄骨は烏丑を冷たく一瞥し、全く遠慮なく皮肉った。


 この言葉を聞き、烏丑は悔しさのあまり怒りを爆発させた。


 しかし彼は何かを思い出したらしく、顔には悪意に満ちた表情を浮かべながらも、口答えはしなかった。代わりに手で法印を組み、黒い巨蟒をさらに強く締め上げた。


 どうやら烏丑も理解していた。玄骨には極陰祖師でさえも恐れる蛮胡子が後ろ盾となっており、権勢で押すなど全く通じないことを。


 玄骨は口元に冷笑を浮かべ、それ以上は言わずに緑の網を軽く指さした。


 網上の緑光がさらに盛んに輝き、緑の糸がさらに三分太くなると、網全体が締まった。


 縛られた火狼は、烏丑と玄骨が共同で法力で追い詰めたにもかかわらず、体の光の障壁が数回り小さくなっただけで、むしろより一層輝きを増し堅固になった。火狼は障壁の中で平然と二人を睨みつけていた。こうして一進一退の状態が続いた。


 上空で激しく戦っていた正魔双方も、この宝が韓立らのいる場所へ飛んでいくとは全く予想していなかった。


 万天明ら正道の修士たちは大いに焦り、手を引いてこの宝を奪おうとした。


 だが蛮胡子と極陰の二人は逆に落ち着きを取り戻した。


 どうあれ、今あそこで宝を収めようとしているのは彼らの仲間だ。当然、正道の者たちを釘付けにし、烏丑や玄骨らが安全に宝を収めるのを喜んで手伝った。


 それに二人とも、自分と関係のある者が宝を収める可能性がより高いと感じていた。


 極陰祖師は烏丑が自分から贈られた数々の宝を持ち、玄陰大法も魔功の中でも上位にランクされる功法であることを考え、烏丑が宝を収める方が結丹初期にしか見えない玄骨より確実だと自負していた。


 一方、玄骨の実力を知っている蛮胡子は言うまでもなく、玄骨に絶大な信頼を置いていた!


 青易居士はこの情景を見て、一抹の惜しさを顔に浮かべたが、一瞬躊躇してからやはり眼前の天悟子を絡め、彼が離れるのを阻止した。


 こうして祭壇付近で唯一暇なのは韓立だけだった。


 しかし韓立は暇であることの何が良いのか全く思わず、むしろ今、心の中で冷や汗をかいているところだった!


 花籠の神通が法宝を収めるのにちょうど適していると考えたため、さっき考えもなしにこの古宝を取り出した。


 しかし玄骨が宝を奪おうとするのを見て、非常にまずいことを思い出した。


 この花籠古宝は、玄骨を見張っていた醜い漢を殺して手に入れたものだ。こんな風に取り出せば、面と向かって極陰祖師に玄骨を逃がしたのは自分だと告げるようなものではないか?


 これには韓立が心底冷たくなり、もはや宝を取ることなど考えられなかった!頭の中は雑念でいっぱいになり、必死に極陰への対処法を考えた。


 しかししばらくして、韓立は愕然とした。


 彼ははっきりと、極陰の視線が花籠を一瞥しただけで、すぐにそらされたのを感じ取った。何の異常な感情もなく、何事も起こらなかったのだ!


 韓立はようやく驚きと喜びが入り混じって理解した。花籠古宝はもともと極陰祖師が醜い漢に与えたものではなく、また彼が醜い漢がこの宝を持っていることすら知らなかったのだと。


 これでようやく安心した。


 韓立の推測は全く正しかった!


 あの日、醜い漢が玄骨を見張る島を長期間離れたのも、花籠古宝の情報を得て私的に外出したためだった。


 その後彼は手段を講じて無事にこの宝を手に入れたが、その間に韓立一行が玄骨を封じる大陣を破壊し、ほぼ完全に機能を失わせてしまった。


 これが醜い漢を驚愕させ怒り狂わせたが、結局は韓立の青竹蜂雲剣せいちくほううんけんの下で命を落とし、ようやく手に入れた古宝も韓立の戦利品となったのだ。


 冷静さを取り戻した韓立は、烏丑と火狼を争っている玄骨を一瞥し、心の中で思わず考えた:


「これも老魔ろうまの運が良かったと言うべきか! もし本当に極陰にこの事実を発見されていたら、必ずお前も巻き込んでやった。独りだけ安泰なわけにはいかない!」


 韓立が幸運か、それとも玄骨が運が良かったか言い難いその時、洞窟の中から再び鈍い雷鳴のような音が響いた。


 今度は経験のある元嬰期修士たちはすぐに手を緩め、顔を見合わせた。


 しかしすぐに誰かが先に動き、六人が一閃の後に同時に穴口の真上に現れた。


 この時、虚天鼎は穴口にかなり近づいていた。これらの者は元嬰期修士とはいえ、穴口から放たれる奇寒に対抗するため、全員が功法を十分に発動させ、防御宝物を次々と祭り出し、体には様々な奇妙な光が流れていた。そして正魔の間では、互いに警戒の眼差しを向け合っていた。


 極陰祖師は今、非常に悔しがっていた!


 彼の当初の考えでは、当然正道の者たちを排除した後に虚天鼎とその中の宝物を一気に取り出し、約束通りに分配するつもりだった。


 しかし全く予想外だったのは、虚天鼎が穴口に近づいた時、中の古宝が単独で飛び出してしまうことだ。


 これで宝物が誰の手に渡るかは、完全に実力次第となってしまった。


 何しろこれらの古宝が誰の手に渡ろうと、再び吐き出して他人に渡す者などいない。こうして、以前の宝物分割の約束は完全に無効となった。


 極陰は悔しさのあまり目玉をくるくる動かし、何とかしてより多くの宝物を手に入れる方法はないかと考えた。


 だがこの考えが頭に浮かんだ途端、耳障りな摩擦音が高まり、続けて「シュッ」「シュッ」と二つの音が響いた。黄と白の二つの光華が洞窟の青焔の中から同時に飛び出した。


 六人は宝物に非常に近く、ほとんど同時に自分に近い光華に向かって手を伸ばし、秘術を使って猛然と掴みかかった。


 その中で万天明はちょうど極陰と儒衫の老人と共に黄光に目をつけた。結果、万天明は手に紫色の火竜を幻化して黄光に噛みつかせると同時に、顔に異様な色を浮かべ、口を開いて二粒の紫色の水晶のような丸い珠を対面に容赦なく吐き出した。


天羅真雷てんらしんらい!」


 極陰はこの目立たない小珠を見るや、毒蛇を見たかのように声を上げて叫んだ。


 続けて二人は法宝で防ごうとせず、急いで体をかわしてその珠を避けた。


 しかしこのわずかな遅れの間に、あの紫色の火竜が黄光を一口で飲み込み、首を振って後ろへ戻った。


 万天明は興奮した面持ちで黄光を手に持ち、両手で擦り合わせると、古宝の原形を現した。


 それは四角い古い佩玉はいぎょくで、その上には符文が流れるように光り、霊気が漂い、一目で上質の宝物だと分かった。


 一方、あの二粒の紫色の丸い珠は、真っ直ぐに数丈飛んだ後、二つの軽い爆裂音を立てて跡形もなく消えた。


 この光景を見た極陰祖師と儒衫の老人は、佩玉を弄ぶ万天明を見て、顔色がたちまち青ざめた。


「さすが正道の万大門主! このような卑劣な手段で偽りの雷を使って我々を騙すとは!」極陰祖師は一語一語を噛みしめるように言った。


 儒衫の老人も同じく血の気が引いた顔で、冷たい目つきで万天明をじっと睨みつけた。


 万天明はこの言葉を聞くと、冷笑して逆に嘲笑した:


「お恥ずかしい。二人とも名を馳せてから何年も経つ修士ではないか。天羅真雷の真偽すら見分けられないとは、よくも本門主の前で卑劣などと言えるものだ。お二人は知らぬのか? この天羅真雷は、命の危険に晒されない限り、本人がどうして惜しげもなく使うことができようか。何しろ自らの法力を損なって初めて煉成できる神雷しんらいだ。本人はそんなに贅沢には使えない。もちろん、もしお二人がどうしてもこの雷珠を見たいと言うなら、破例でお見せしてやっても構わんが」


 そう言うと、万天明は両手を軽く合わせた。


 紫光が一閃し、佩玉は跡形もなく消えた。代わりに手にはさっきと全く同じ紫色の珠が一つ現れた。


 極陰と老人は顔色を変え、互いに陰鬱な面持ちで見つめ合い、二人とも決断がつかない様子だった。


 その時、向こう側の蛮胡子も託天魔功の超強防御を頼りに、黒く痩せた老人と天悟子の一撃を受け止め、白光を手に収めていた。


 それは白く光る銅銭状の古銭で、非常に奇妙に見えた。


 極陰はこの光景を見て、ますます顔色が悪くなった。


 ちょうどその時、傍らの老人が突然「ん?」と驚いたような声を上げた。


 極陰も思わず彼の視線を追って見ると、同じく驚きの表情を浮かべた。


 なぜなら、下の祭壇付近で韓立が黄と赤の二色の玉如意ぎょくによいを手に念入りに観察しており、如意の両端にはそれぞれ生き生きとした狼の頭が彫られていたからだ。


 様子はまさにあの双頭の火狼が化した古宝だった!そして遠くないところに、烏丑と玄骨が諦めきった表情で韓立を見つめていた。二人とも何かしら悔しそうな様子だった!


 極陰祖師の目に一抹の疑いが走ったが、黙って言葉を発しなかった。しかし彼の心の中では、実に驚きを隠せなかった。この古宝が烏丑と玄骨の二人の手に渡らず、最初は手を出す気すら見せなかった韓立の手に渡ったとは。これは極陰にとって、あまりにも意外なことだった。

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