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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第四卷:乱星海結丹編一海外激戦・虛天殿
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41-血玉蜘蛛?

 韓立が内心で怪しんでいた——これは本当に「九曲霊参」なのか、それとも玄骨が適当に訳の分からないものを引っ張り出して自分を騙そうとしているのか——ちょうどその時だった。

 草地に動かず横たわっていた野ウサギが、突如として飛び上がり、白い光の塊へと変じると、金の箱の中にある「根茎」めがけて飛ぶように射ち込んだのだ。


 韓立は一瞬、呆気にとられたが、すぐに顔に喜色が浮かんだ。


 この九曲霊参の化身である白ウサギが、これほどまでにこの物体を執着する様子は、これがまさしく本物の九曲霊参である証拠だ。彼は胸をなでおろした。


 しかし韓立が、この化身を好き勝手に本体と融合させてしまうわけにはいかない。


 彼は遠慮なく指を一弾き、青い剣光が飛び出し、見事に白ウサギの頭部を直撃した。ウサギは一回転して、元の場所へと弾き飛ばされた。


 ところがこの小さい生き物は、目前に本体があると見るや、命がけで再び跳びかかってきた。目的を果たすまでは絶対に諦めない、という様子だ。


 これには韓立も少しいらついた。


 即座に電弧を放ち、白ウサギを完全に地面へ叩き落とした。毛皮は広範囲にわたって黒く焦げ、文字通り気絶してしまった。


 韓立はそのウサギを虚空から掴み取り、手のひらで一目見ると、金の箱の中へ放り込んだ。


 すると、白ウサギの化身が「九曲霊参」の本体に触れた途端、白い光が一閃し、自らその中へと吸い込まれていった。


 韓立はすぐに蓋を閉め、念のために小さな封印を施した。逃げ出さないようにするためだ。


 これら一連の行動を終えて、ようやく韓立はほんの少し息をついた。


 玄骨にまだ手を出す気配はない。これで韓立は一安心したが、同時に警戒心をさらに強めた。


 そこで彼は金の箱を自分の収納袋にしまい込むと、冷静な口調で問うた。


「先輩、このように九曲霊参を私に渡してしまって、構わないのですか? 今すぐにでもこれを持って逃げ出すかもしれないというのに?」


 韓立は探りを入れるような一言を放った!


「逃げる? たかがこの参だけで、それを練り上げる処方もなければ、この霊物の効能を発揮させることなど叶うと思うか?」 玄骨はキョロキョロと周囲を見回していた目を収め、韓立に向けると、焦りもせずにそう言った。


 この言葉を聞いて、韓立は眉をひそめ、何か言い返そうとしたその時だった。


 玄骨上人は遮るように、冷笑を一つ漏らして続けた。


「お前の体には極陰が何か仕掛けを施している。たとえ天涯地角まで逃げたところで、奴の追跡からは逃れられん。賢くわしと協力するがよい。さもなければ、たとえ霊参を携えて虚天殿から脱出できたとしても、その後は…ふふ!」


「仕掛けを?」 韓立の表情が一瞬、強張ったが、すぐに平常の色を取り戻した。


 彼の強大な神識をもってすれば、体に何か仕掛けを施されて、全く気づかないなどということはありえない。


 玄骨はこれを見て、韓立が全く信じていないことを悟った。


 すぐに口元を歪ませ、何か証拠を出そうとしたその瞬間、顔色が急変し、猛然と振り返って遠方を眺めやった。


 韓立は訳が分からなかったが、同時に心の警鐘が大きく鳴り響き、この老魔がまた何か企んでいるのではないかと疑った。


 ところが玄骨はすぐに振り返り、韓立の緊張を一気に高める言葉を放った。


「極陰が間もなく来る。お前を探しに来たのだろう。お前はお前でしっかりしろ! わしは一旦身を隠す」 そう言い終えると、玄骨は陰の雲へと化し、天へと飛翔して消え去り、あっという間に影も形もなくなった。


 韓立は呆然自失!


 相手の言葉が真実か嘘か疑っていると、遠くの空の彼方からゴロゴロとした鬼の咆哮のような音が響いてきた。続いて、黒く重く垂れ込めた巨大な雲の塊が、遠方から轟々と天地を覆い尽くさんばかりに迫ってきた。


 その方向は、まさしく彼のいる方向を目指している。


 韓立の心は沈んだ!


 この黒雲こそが玄陰大法を発動させた時の驚異的な気勢だ。来る者は十中八九、本物の極陰師祖に違いない。


 まさか、本当に極陰の罠にかかり、それに全く気づいていなかったというのか?


 そうでなければ、極陰師祖がなぜこんな辺鄙な場所まで、正確無比に自分めがけて飛んでくるというのだ!


 同時に、韓立は心の中で玄骨上人を激しく罵った。


 ずっと自分と手を組んで極陰に対抗すると言っていたくせに! いざ相手が単身で来たとなれば、あっという間に逃げ出し、自分一人をここに置き去りにするとは。


 韓立はこの上なく不愉快だった!


 今さら逃げ隠れしても、もう間に合わない。どうやら覚悟を決めて、まずは応対するしかないようだ。


 韓立が陣法すら回収する間もないうちに、巨大な黒雲は瞬く間に林の上空に到達し、突然停止した。


 これで、韓立に選択の余地はなくなった。心を引き締め、黙って黒雲を注視するしかなかった。


 相手が顔を合わせた途端に自分を殺すようなことはまずあるまい。ちょうどいい機会だから、なぜ極陰師祖が自分を執拗に追いかけてくるのか、はっきりさせておこう。


 この疑問にはずっと頭を悩ませていたが、原因はまだ突き止められていなかったのだ。


 非常に腹立たしい!


 そう考えた韓立の心境は平常に戻り、天上の黒雲を凝視し、相手の口を開くのを静かに待った。


 しかし韓立が万に一つも予想していなかったのは、黒雲の中からまず冷たい「フン」という鼻音が聞こえ、続いて漆黒の墨のような光柱が雲の中から迅雷不及掩耳の勢いで射出され、陣法の光の障壁に直撃したことだ。


 たちまち黄色い光が一閃し、破裂音が響いた。障壁は一瞬たりとも耐えることなく、パリッと音を立てて消え失せた。


 遮るもの一つない黒い光柱が、そのまま韓立めがけて一直線に掃射してくるのが見えた。


 韓立の顔が「サッ」と一瞬にして青ざめた!


 考える間もなく体を数回かわすと、彼は元の位置から十丈後方の別の地点に現れ、驚きと怒りの表情を浮かべた。

 韓立は躊躇することなく両手を一振り、数十体の巨大な傀儡の巨猿が周囲に出現し、彼の前に立ちふさがった。


 続いて、数個の霊獣袋がくるくると一回転し、次々と祭り出され、彼の目の前で軽く揺れながら浮遊した。


 韓立の目は氷のように冷たい!


 勝算は極めて低いと自覚しながらも、相手がここで自分を殺そうとするなら、もう一か八か戦うしかない。


 彼はただ指を咥えて死を待つような真似はしない!


 体内の真元は同時に九本の青竹蜂雲剣に集中し、蠢蠢と動き始めていた。


 韓立の敵意と警戒の表情を見抜いたのか、天地を覆い尽くす黒雲が急速に回転し始め、みるみる中心部へと収縮していった。一時、黒い気が滾り、魔気が大いに盛り上がる。


 韓立は心中、戦慄し、傀儡たちに先制攻撃を仕掛けさせようと我慢できなくなりかけたその時、耳元に玄骨の冷たい声が届いた。


「小僧、軽々しく手を出すな。あれはただのお前への威嚇だ、本当に殺意を抱いておるわけではない。まずはこの逆徒が一体お前に何を求めているのか、見極めるがよい!」


 玄骨の伝音に韓立は一瞬、呆けたが、すぐに合点がいったように我に返った。


 その後、彼は心の衝動を抑え込み、へりくだらず媚びもしない口調で問いかけた。


「極陰先輩がご足労いただいたのは、未輩に何かご用でしょうか?」


 韓立の声は低く、しかし平静を保っていた。


「老夫の一撃の後にも、これほど落ち着いていられるとは…なかなか度胸があるようだな」 天上の黒雲の中から、極陰師祖の問いには答えない声が響いた。韓立には、称賛なのか軽蔑なのか判別のつかない言葉だ。


「元嬰期修士たる先輩が、本気で未輩を滅ぼそうとなさるなら、度胸の大小など問題にならぬでしょう」 韓立は思わず眉をひそめたが、すぐに平然とした様子で返答した。


 玄骨が遠くへは行かず、どこかに潜んでいることを知っていたので、彼は少し安心していた。


 この玄陰大法の弱点を知る老魔と手を組めば、相手と一戦交えることも不可能ではない。無論、前提は玄骨が自分と極陰が争う際に本当に助力してくれるかどうかだ。この点に関して、韓立は全く確信が持てなかった。だからこそ、彼は相手を怒らせるような真似は微塵もするつもりはなかった。


 その時、天上の黒雲はついに一つに収束した。


 数度、きらめいた後、「ぷすり」という音と共に雲は消え霧は散り、空中に一人の中年男と一人の背の低い醜い青年が現れた。極陰師祖と烏丑である。


「お前の名は韓立。天星城の一介の散修、間違いなかろうな!」 中年男は韓立を見据え、興味深そうに問いかけた。


「はい、私が韓立です。先輩は私のことをよくご存じのようですね」 韓立は微かに苦笑を浮かべ、やむを得ないという様子で言った。


「心配するな。わしはトラブルを起こしに来たわけでも、あの妙音門の件でお前に八つ当たりしに来たわけでもない。さっきの攻撃は、ただ純粋にあの陣法が邪魔だったから破壊しただけだ」 極陰師祖は淡く笑いながら言った。


「邪魔だ? ただ自分の強大な実力で威嚇したかっただけだろうが!」 韓立は内心で見抜いていたが、口には少しばかり恭しい口調をにじませて問うた。


「では、先輩がここまでお越しになったのは…」


 相手がこの問いを待っているのは百も承知だが、韓立は鼻をつまみながらも、わざと問いを発するしかなかった。


 しかし韓立のこの問いを聞くと、極陰師祖は「ふふ」と笑い、両目で韓立を上から下まで改めて丹念に見つめ直した。韓立は心底、ゾッとした。


「この物を、お前は知っておるか?」 極陰師祖は突然、片手をひるがえすと、掌の上に白っぽい小さな切れ端を乗せ、顔をこわばらせて言った。


 続けて、韓立がそれが何なのか見定める間もなく、そっと投げると、その物体は韓立めがけて飛んでいった。


 韓立は一抹の疑念を浮かべ、その物体が目前に飛んできたところで袖を一払い、長袖がそれを受け止めると、注意深く自分の眼前へと運んだ。


 物体は大きくなく、しかも欠けていた。しかし韓立は一目でそれを認識した。


 なんと、血玉蜘蛛が吐き出した真っ白な蜘蛛の糸の小さな断片だったのだ。


 韓立は呆然とした。相手がなぜこれを持っているのか不思議に思った。しかし頭を少し働かせると、すぐに隠煞門での戦いの日、包囲を突破した際に、行く手を阻む妖屍に対処するために血玉蜘蛛を使ったことを思い出した。おそらく相手はその時にこれを入手したのだろう。


 相手がこれについて問うのは、一体何のつもりだ? 韓立の表情が微かに変わり、心の中に様々な猜疑の念が一気に湧き上がった。


 しかし、相手が彼に熟考する時間を与えるはずもなく、彼は少し考え込むと、素直に答えた。


「この物体は未輩、当然存じ上げております。私の霊獣が吐き出した糸です。先輩はこの件のために来られたのですか?」


 韓立は今、怪訝な表情を浮かべ、まだ少し信じきれていない様子すら見せた。


 しかし天上の極陰師祖はこの言葉を聞くと、顔に笑みを浮かべた。


「良し、良きかな! 今回お前を探したのは、その霊獣を一目見たかったからだ。その獣を放して、本師祖に見せてみよ!」 極陰師祖は幾分興奮気味に言い、声は驚くほど穏やかだった。


 しかし韓立の心の警戒心は一気に高まった!


 相手の笑みの中に、よく隠された貪欲な色が一瞬、浮かび上がるのを彼は見逃さなかったのだ。その表情は一瞬で消え去ったが。


 元嬰期修士たる相手が、彼の血玉蜘蛛に対してそんな表情を見せるというのは、彼にとって決して良い兆候ではなかった。


 内心、不安でいっぱいだったが、極陰師祖の視線を前に、韓立は一瞬ためらっただけで、やむなく「承知しました」と覚悟を決めて言うしかなかった。


 少しでも時間を稼げればそれでいい! 韓立はそう鬱々と考えながら思うしかなかった。


 続けて彼は手を上げ、腰の一つにある霊獣袋を軽く叩いた。


 一道の白光が霊獣袋の中から飛び出し、韓立の目の前に落ちた。


 光華が収まると、石臼ほどの大きさの白い蜘蛛が韓立の前に出現し、獰猛に周囲を睨みつけた。


 血玉蜘蛛が姿を現すや、極陰師祖はすぐに両目を輝かせて凝視し、まるで極めて貴重な異宝を見るかのようだった。顔の喜色は次第に濃くなっていく。


「素晴らしい! なんと本物の血玉蜘蛛ではないか。はっはっは…」


 しばらくして、極陰師祖は視線を外すと、突然、天を仰いで高らかに笑った。


 その笑い声は付近の空気をブンブンと震わせ、韓立は思わず表情を強張らせた。


 元嬰期修士の実力は、やはり計り知れない!


 しかし韓立はすぐに慎重な表情を浮かべた。これからこそ相手が本当の本題に入ることを彼は知っていた。


 だが韓立が極陰師祖の口を待つより早く、耳元に玄骨の焦燥に満ちた伝音が届いた。


「お前、なぜ血玉蜘蛛を持っている? そんなものを持っているなら、なぜ最初からわしに告げなかったのだ?」 玄骨の声には後悔と驚き、怒りが満ちていた。


「自分がそれを持っていることを、なぜお前に告げねばならん!」 韓立はこの言葉を聞き、内心、憤りが込み上げた。


 しかし彼はすぐに冷静に考え直した。玄骨すらこれほど動揺するのなら、この血玉蜘蛛には確かに大きな秘密が隠されているに違いない。この事態の発生が、今の自分にとって不利なのか有利なのか?


 韓立が内心、思案していると、玄骨のやや慌てた伝音が再び響いた。


「極陰の逆徒は必ずやお前を内殿へ誘うであろう。迷わず行くがよい。わしが密かに尾行し、支援する」 韓立に対する口調が少々不適切だったことに気づいたのか、玄骨の声は幾分和らいだが、それでも重々しく言い含めた。


 韓立はこれを聞いて、むしろますます不安になった。


 はっきりとはしないが、自分はこの血玉蜘蛛のために大きな渦の中に巻き込まれ、一歩間違えれば粉砕されるかもしれないという予感がした。


 韓立が内心、疑念を抱いていると、極陰師祖がついに口を開き、玄骨の予想通りの言葉を発した。


「韓立よ、内殿を一目見てみたくはないか? わしが安全にお前を連れて行き、無事に戻してやろう」 極陰師祖は穏やかな笑みを浮かべながら言った。その言葉には限りない誘惑が込められていた。


「内殿へ?」 韓立はこの言葉を聞いて、肝を冷やした。


 それは結丹期修士にとって、極めて危険な場所だ。


 確かに内部の宝物の貴重さは、虚天殿の他のいかなる場所よりも遥かに上る。


 しかし韓立は、その詳細を知った当初から、身の程をわきまえて行くことなど考えもしなかった。


 今や彼は凝嬰に大いに役立つ「九曲霊参」を手に入れたばかりだ。無用の危険を冒すことなど尚更望んでいない。


 相手が口にする「安全に連れて行き、無事に戻す」という言葉や、そばにいる玄骨の「承諾しろ」という言葉など、彼は鼻で笑って全く信じず、聞き入れもしない。


 命は、たった一つしかないのだから!


 そう考えた韓立は、少し思案するだけですぐに、無理に笑みを浮かべて辞退した。


「内殿は未輩には少々荷が重すぎます。未輩は前の二つの関門を巡るだけで十分です。内殿には参りません! そんな大きな福分は持ち合わせておりませんので」


 この言葉を聞くと、極陰師祖の顔色が曇り、陰険な眼差しを浮かべた。


 そして彼の側にいる烏丑は、怒りの表情を浮かべ、突然大声で叱責した。


「韓立! 祖父上はお前がかつてご尊顔を汚した件を追及もせず、今は好意を持って内殿へ案内しようとしておられるのに、お前は三々五々と拒むとは? 我ら極陰島を軽んじているのか?」


 烏丑の発言を、極陰師祖は止めはしなかった。ただ不愉快そうな顔で冷ややかに見ているだけだった。

 ***

 韓立は黙り込んだ。


 なぜなら、耳元に再び玄骨が承諾を促す言葉が届いたからだ。しかし韓立がそう簡単に従うわけがない!


「参りません! 烏島主が未輩を内殿に呼ぶ理由は何であれ、おそらく一目見せるだけでは済まないでしょう。そんな時間があるなら、他の比較的安全な場所で、宝物をもう数点探す方がましです」 韓立は淡々とした口調で言い放った。

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