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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第三卷:天南築基編一八方塞がり·正魔大戦
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南宮婉を救う一築基期78

 心中で決断を固めると、韓立は物音 も立てずに飛行法器で山 峰 を離れた。


 後に残された煉気期の修士たちは、白池山での会合が始まっても、あの「先輩」高人の姿を見ることはなかった。彼らは不思議に思わずにはいられなかった。


 韓立はまず天星宗の 坊 市 に立ち寄り、古伝送陣の修復に必要な材料をリスト通りに調達した後、越 国 へ向かって飛び立った。


 今回は、元のルートを通らず、わざと遠回りして元武国と越国の境にある人里離れた場所からひそかに国境を越えることにした。


 今の越国は魔道の支配下にある。警戒網にかかって延々と追われるような真似は避けたかったのだ。


 この慎重な選択が、結果的に危機を回避することになるとは韓立も知らなかった。


 現在、越国の国境の大部分には魔道が要員を配置し、日夜監視を続けていた。もし韓立が元のルートから戻ろうものなら、間違いなくその目に留まり、延々と続く追撃戦を強いられることになっただろう。


 こうして無事に越国へ潜入した韓立は、人気の少ない場所を選んで進み、意外にも危険に遭遇することなく、古伝送陣のある霊石鉱の近くまでたどり着いた。


 今やこの霊石鉱は、言うまでもなく魔道の手中に落ちている。


 韓立が遠くからこっそりと様子を窺うと、緑と白の二色の服を着た魔道の弟子たちが目に入った。


 袖にある碧 緑 の鬼頭と桃色の桃 花 かの印から判断して、鬼 き霊 門 と合歓宗の修 士 のようだ。


 鉱山を占拠している魔道の正体を知ると、韓立はそっと身を隠してその場を離れ、近くにある地下への密 入 口 を見つけて潜り込んだ。


 以前に封鎖された洞窟は簡単に見つかった。法 ほう 器 き で瓦礫を砕くと、破損した古伝送陣が再び姿を現した。


 伝送陣が無事に残されているのを確認し、韓立はほっと一息ついた。


 それからの日々、韓立は新しく手に入れた幻形陣旗げんけいじんきで密 入 口 を完全に隠した。さらに改良版の『 顛 倒 五 ご行 陣 』の陣旗と陣盤じんばんを設置し、古伝送陣のある洞窟を守る大陣だいじんを張った。


 これで、たとえ魔道の修 士 じに見つかっても、逃げる時間は十分に確保できた。


 後顧の憂いがなくなった韓立は、伝送陣の修復に取りかかった。


 玉簡に明記されていた通り、古伝送陣の修復は精密を極める作業だ。ほんのわずかな符紋ふもんのずれでさえ、伝送陣全体を誤作動させる可能性があるため、韓立の作業は非常に遅々として進まなかった。


 七日が過ぎても、伝送陣の修復はわずかに進んだだけだった。その時、大きな問題が発生した。事前に購入した材料が、すっかり底をついてしまったのだ。


 韓立は呆然とした。


 購入した修復材料は、確かにリストの必要量より多めだったが、作業中のミスや材料の廃棄を全く考慮していなかった。


 何しろ彼は専門の錬器師でも陣法師でもない。


 技量が伴わないため、作業中に材料の大半が無駄になってしまったのだ。当然、足りなくなるのも道理だった。


「はあ…出直すしかないか」


 韓立は軽くため息をついた。霊石鉱の東に数日行程の場所に、ある修仙家 しゅうせんか 族 ぞく が営む小さな坊市があったことを思い出した。


 規模は大きくないが、鉄母てつぼ晶玉しょうぎょくといった材料くらいは入手できるはずだ。結局、伝送陣の核心部分は壊れておらず、必要なのはごく普通の材料に過ぎなかった。


 ただ一つ心配だったのは、修仙界がこれほど混乱している中で、この坊市がまだ存続しているかどうかだ。危険を冒して辿り着いても、すでに消えているかもしれない。


 考えた末、韓立は夜陰に乗じて地下洞窟を抜け出し、その坊市を目指して飛行法器を飛ばした。


 心の中では、もし坊市が本当になければ、元武国の坊市に戻ればいいと決めていた。古伝送陣を中途半端に放置するわけにはいかないからだ。


 ただし安全策として、韓立は夜間に移動し、日中はどこかに身を潜めて休息することを計画した。


 これで危険を最小限に抑えられるだろう。


 かくして漆 しっ 黒 こく の夜を利用して、韓立は東へと一晩中飛び続けた。空がほのかに明るくなり始めた頃、ようやく休息地点を探し始めた。


 しかし、眼下を見渡そうとしたその瞬間、韓立の表情がわずかに変わった。咄嗟に首を振り向け、ある方向を凝視した。


 何者かが、しかも一人ではない複数が、猛烈な速度でこちらに向かって飛来している気配を感じ取ったのだ。


 韓立は考える間もなく、足元の神風舟しんぷうしゅうを踏み込み、急降下して夜の闇の中へと消えていった。


 彼が身を隠し、霊気を完全に収束させた直後、一道の刺すような白い光が、雷 かみなり のように音もなく飛来した。


 その白い光の後ろには、数丈にも及ぶ血の霧が鬼哭 神 号 の声と共に猛追している。さらに後方には、桃色の霞 かすみ がかかった光がかすかな清 鳴 を発しながら追跡していた。


 林の中に潜む韓立は、前方の白い光や後方の桃色の霞には目もくれず、むしろあの血の霧に強く心を奪われた。これは鬼霊門の少主の護体魔功ごたいまこうではなかったか?まさか本人か?


 鬼霊門少主の恐ろしさと自ら味わった苦い経験を思い出すと、韓立の表情は険しくなった。


 韓立が、この数人が頭上を速やかに通過するだろうと思った瞬間、前方を疾走していた白い光が突然、速度を落とした。そして光が収束し、飛剣の上に立つ白衣の女が姿を現した。


 その女はすらりとした体躯で、頭には編み笠をかぶっている。姿を現すと、冷たく後ろを向いて言った。


「小僧ども!しつこく追いかけて、本当に死に急ぎか?」


 女の声は冷たく澄み切っていたが、それが韓立の耳に入ると、彼は思わず飛び上がらんばかりに驚いた。


「こ、これはまさか…南 宮 婉 の声?まさか彼女なのか?」韓立は心底驚愕した。


 この女性は韓立にとって最初の女性だった。言葉を交わしたことはほとんどなかったが、その声と面影は深く脳裏に刻まれていた。


 確かに声は南宮婉に似ていた。ただ、少しだけ嗄れているように感じられた!韓立はまだ半信半疑だった。


 韓立が震撼している間にも、後方で追跡していた血の霧と桃色の霞は、覆面の女の言葉に怯んだのか、十数丈先で足を止めた。


 続いて血の霧と霞が薄れ、中にいた者の姿が露わになった。


 血の霧の中にいたのは、やはり鬼霊門の少主・王 おう 蝉 せん だった。もう一方の霞が消えた先に現れた男女の姿は、韓立を呆然とさせた。


 男は燕 翎 堡 ほで見かけた、女性のように美しい妖 異 な男。女は長らく行方不明で、魔道の手に落ちたと思われていた董 萱 児 だった!


 董萱児の表情は冷たく、かつての妖艶な色 しき 気 け はすっかり消え失せ、端正な雰囲気に変わっていた。


 さらに韓立が驚いたのは、彼女の実力が元々の築基初期から築基中期にまで上昇していたことだ。


 董萱児が妖異な男と並んで立っている姿に、韓立は眉をひそめた。


 その時、鬼霊門少主と妖麗な男は、覆面の女の冷たい視線と向き合うと、同時に躊躇の色を浮かべた。


 相手は鬼霊門の結丹期の高 手 と相打ちになり、もはや抵抗する力はないはずだった。しかし、この女は掩月宗の防衛戦で無数の魔道修 しゅう 士 じ を殺傷した結丹期の修 士 だ。もし死に物狂いの一撃を仕掛けられ、巻き添えを食らったらたまらない。


 そう考えた二人は互いを見つめ、誰も先に手を出そうとしなかった。


 その様子を見て、妖異な男は目を一 転 させると、微笑みを浮かべて覆面の女に言った。


「普段なら、南宮前輩がそう言われれば、私と王兄は一目散に逃げるところです。ですが今はどうでしょう?私個人としては掩月宗と合歓宗の縁を考えて、先輩を見逃したい気持ちは山々ですが、この鬼霊門の王兄はそうもいきませんので」


 妖異な男は、まるで自分たちは身内だから何とでも話がつくかのような口調だった。しかし、鬼霊門の少主を前面に押し出し、盾に使っていた。


 王蝉はその言葉を聞いて激怒した。


 しかし彼もまた喜怒を顔に出さない男だった。相手を冷たく一瞥するだけで、落ち着いた様子で言った。


「聞くところによると、合歓宗の秘術の中に『玄月吸陰功』(げんげつきゅういんこう)というものがあるとか。これを修めた男は双 そう 修 しゅう の術で女の元陰げんいんの一部を強奪できると。量は多くないが、先輩ほどの結丹期の実力者であれば、田公子もこれで築基中期の壁を破り、後期に到達できるでしょうな?」


 王蝉のこの言葉に、妖麗な男の表情が一瞬で曇った。


 自分がこの女を執拗に追う目的を、王蝉に見抜かれているとは思わなかった。恥ずかしさと怒りが込み上げてきた。


 その一方で、覆面の女の目は怒りと恥に燃え、銀 ぎん 歯 し を食いしばって吐き捨てた。


「同類の屑め、死ね!」


 そう言うと、女は手を上げた。白濛濛とした剣の光が天地を覆い尽くす勢いで放たれた。


 向かいの王蝉と妖麗な男はこの光景に驚愕し、体から血の霧と霞が噴き出した。三人は即座に後退しようとした。


 董萱児もまた妖異な男が放つ霞に包まれ、三人は一瞬で後方へと飛び退いた。


 結丹期の修 しゅう 士 じ の怨念を込めた一撃など、彼ら三人が受け止められるものではなかった!


 白濛濛とした剣光は、覆面の女の制御の下、十丈余り追撃した後、突然雲散霧消した。


 同時に、法器の上に立っていた女の美しい体がぐらりと揺れ、今にも落ちそうになった。


 それを見た妖麗な男と鬼霊門少主は大喜びで、退却から一転して攻勢に転じようとした。


 林の中の韓立は表情を曇らせ、迷わず収納袋を叩いた。十三本の『紅 線 遁 光 針 (こうせんとんこうしん)』が自ずと手の中に飛び込んできた。


 たとえ危険でも、今ここで手を出さねば!南宮婉が命を落とすのを黙って見ているわけにはいかなかった。


 どんなに自分本位で冷徹でも、彼は本当に無情な男ではなかった。それに自信があった。今の自分は鬼霊門少主ら二人に敵わなくても、全力で逃げるだけの余裕は十分にあると。


 韓立が手を上げ、これらの飛針を放って覆面の女を救おうとしたまさにその時、空の状況が急変した。


 剣の上でふらついていた覆面の女は、王蝉らが眼前に迫った瞬間、姿勢を安定させ、美しい目に冷たい光を宿した。


 王蝉と妖麗な男はそれを見て愕然とし、罠にかかったと悟った。


 しかし、引き返して逃げようとした時はすでに遅すぎた。


 女の両手が振り上げられ、無数の剣気が再び放たれた。眩い白い光が三人を完全に飲み込んだ。


 この光景を見て、韓立は胸を撫で下ろした。握り締めていた法器の手をわずかに緩めた。


 空全体が覆面の女の剣光に照らされ、灰色がかった白色に染まった。白い光に包まれた血の霧と霞は、荒れ狂う海の小舟のように激しく揺れていたが、必死に耐え続けていた。特に妖麗な男と董萱児は霞の中に立ち、互いの手から青と赤の奇妙な光を放ち、剣光の猛攻を相殺しているように見えた。


 この状況に、韓立はわずかに眉をひそめた。うつむいて一瞬考え込むと、彼の姿はその場から音もなく消えた。


 一方、空の覆面の女は焦燥感に駆られていた!


 罠にかけてこの魔道の後輩たちを閉じ込めたものの、この強度の攻撃でも三人を一気に葬れないとは、まったく予想外だった。


 さらにさきほど、魔道の結丹期修 しゅう 士 じ と激戦を繰り広げ、法力を使い果たして相討ち寸前まで追い込まれていた。


 辛くも包囲網を突破したが、その傷の重さは自分でも驚くほどだった。


 さらに致命的だったのは、元神と深く結びついた法 ほう 宝 ぽう が戦闘で大損し、短時間では使用不能になっていることだ。


 追っ手がいるため、やむを得ず元気を大きく損なう秘術を発動し、体内の潜在能力の一部を強引に引き出してわずかな霊力を生み出し、ようやく法器を操って逃げていたのだ。


 しかし、ほとんどの魔道の追跡をかわしたにもかかわらず、この三人だけは魔功が特殊で、執拗に追いかけてきた。


 こうなれば、彼らを倒すしかなかった。さもなければ秘術の効果が切れた時、結丹期の修 しゅう 士 じ であってもなす術なく切り刻まれるだけだった。


 彼女がここで立ち止まったのは、さきほどこの場所に一人の修 しゅう 士 じ がいるのを神識で感じ取ったからだ。誰かは不明だが、魔道六宗の魔功の気配は確かにない。


 しかもその人物は築基中期の修 しゅう 士 じ だ。修仙大族の者か、あるいは他の五派の同盟修 しゅう 士 じ に違いない。


 こうした状況下では、事態がこれ以上悪化する可能性は低いと考え、あえてここに飛来したのだ。つまり、その修 しゅう 士 じ を巻き込み、事態を打開する機会を得ようとしたのである。


 しかし、まさかその人物の神識も鋭く、はるか遠くから気配を察知して身を隠し、完全に問題を避ける姿勢を見せたとは!


 これでは覆面の女は一人で戦うしかなく、彼女はその男を歯噛みするほど恨んだ。


 さらに命取りになる不測の事態がもう一つ起きていた。


 この魔道の三人が異常なほど粘り強く、しかも非常に強力な防御法器を所有しているとは!残った霊力で発動した攻撃では、どうしても彼らを倒せない。


 しかも高級な符 ふ 箓 ろ やその他の強力な法器は、連日の戦闘で使い切っていた。


 今、彼女は体内の最後の一 いっ 滴 てき の法力さえも消えかけているのを感じていた。心は暗澹たる思いでいっぱいだった!


 剣光の中で苦しげに耐えていた王蝉らは、山のように押し寄せる剣光が次第に薄れ、やがて完全に消え去るのを感じ取った。


 三人は呆然としたが、すぐに覆面の女が無表情で法器の上に立ち、両目に輝きがなく、その体がかすかに震えている憐れな様子を目にした。


 王蝉と妖麗な男は互いを見つめ、内心喜びに沸いた。しかし、さきほどの苦い経験が二人に一瞬の躊躇をさせ、軽率に動こうとはしなかった。


 だがその時、下方から一筋の白い光が飛び出した。その光は稲妻のように速く、一瞬で覆面の女の前に到達した。白光の中の人影が、覆面の女の腰を抱きかかえると、白光は方向を変え、元来た道を下っていった。


 この光景に、王蝉と妖麗な男は激怒した。


 喉まで出かかった獲物を他人に奪われるわけにはいかない。二人は無意識に遁術を発動し、そのまま追跡を開始した。


 しかし董萱児だけは、その場に立ち止まり追跡しようとせず、むしろ疑念を浮かべていた。なぜなら、あの人影がどこか見覚えがあり、追うべきかどうか迷っていたのだ。


 数十丈の距離を、白い光は一瞬で地上の密林の中に降り立った。光が収束すると、平凡な容貌の青年が姿を現した。


 その青年は片手で覆面の女をしっかりと抱き、追いかけてくる王蝉ら二人を見上げ、表情一つ見せなかった。


 しかし覆面の女は青年の腕の中で無力にもがき、目には恥辱と怒りが満ちていた。青年に何か叫んでいるようだったが、青年は全く気にかけていない様子だった。


「お前か!」


「貴様か!」


 青年の容貌をはっきり見た王蝉と妖麗な男は、ほぼ同時に叫んだ。


 二人とも半路から現れた韓立だと認識し、驚きのあまり互いを見つめた。しかしすぐに躊躇を捨て、それぞれの神通を発動して韓立に襲いかかった。


 王蝉の体から血の霧が激しく湧き上がり、あっという間に二、三十丈の範囲を覆い尽くした。血生臭い匂いが立ち込め、その勢いは驚異的だった。


 一方の妖麗な男は冷ややかに笑い、手に忽然と玉笛ぎょくてきを現した。それを軽く振ると清らかな鳴き声が響き、体の霞がそれに呼応して離脱し、桃色の孔雀となって韓立に向かって飛び去った。男自身も遅れを取らじと孔雀の後を追った。


 二人の圧倒的な攻撃が頭上に迫る中、韓立はついに慌てたような表情を見せた。


 彼は足元の小舟を強く踏みつけた。小舟は眩い白い光を放ち、微かに震えながら、今にも飛び立とうとしているように見えた。


 その時、王蝉ら二人の攻撃が韓立の頭上に到達し、完全に逃げ道を塞いだ。二人ははっきりと、さきほどもがいていた覆面の女の体が突然動きを止め、明 めい 眸 ぼう に絶望の色が満ちているのを見た。


 これで二人は完全に安心した。この結丹期の女修 しゅう 士 じ には抵抗する力が全く残っていないようだ!


 しかし、慌てふためいていた韓立の表情が一瞬で変わった。その顔に不気味な微笑が浮かんだ。


 その表情を見た二人の魔道の俊英は、心臓が一瞬止まりそうになった。


 目の前の景色が突然変わり、韓立と覆面の女はまるで風のように消え失せ、二人の前に現れたのは二つの巨大な岩だった。王蝉と妖麗な男は驚愕して遁術を急停止し、慌てて周囲を見回した。


 目に入った光景に、二人の顔色が一変した。


 周りはもう林ではなく、無数の聳え立つ巨大な石柱が現れ、彼らは幻陣げんじんの中に閉じ込められていたのだ!


 王蝉と妖麗な男は心底怒り狂った。


 この幻陣は威力が大きくなく、二人が破るのに大した時間はかからない。しかしそれでも、韓立が獲物を連れて悠々と逃げるには十分だった。二人の魔道の少主は韓立を一段と憎み、骨の髄まで恨みを刻んだ。


「王兄、急いで陣を破ろう!忘れるな、董師妹がまだ外にいることを!彼女の実力なら、一時的に相手を足止めすることはできるはずだ」


 妖麗な男は何かを思い出し、冷たい笑みを浮かべて王蝉に言った。


「ああ、本少主も忘れるところだった!だがその娘、以前は黄楓谷の弟子だったよな?本当に手を出すと思うか?」


 王蝉は一瞬喜びを見せたが、疑念を隠せなかった。


 この言葉に、妖麗な男は表情に迷いを見せ、確信が持てない様子で答えた。


「手を出すはずです…何しろ董萱児は我ら合歓宗でも地位が高く、黄楓谷で普通の弟子をしているよりずっと良い身分です。それに父上も彼女を手厚く遇しておりますからな!」



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