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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第三卷:天南築基編一八方塞がり·正魔大戦
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凶訊一築基期49

 韓立は少女の失望した表情を見て、突然笑い出した。そして優しい口調で言った。


「俺が弟子に取ることはできないが、がっかりするな! 代わりに、同じく築基期ききゅうき師兄しけいを紹介し、お前の師匠になってもらおう。ただし、師事しじが成功するかどうかは、その師兄がお前に満足するかどうかによる」


「本当ですか?」 少女の失望した表情は、この言葉を聞くやたちまち活気を取り戻した。


 韓立は二の句もなく、懐から一枚の伝音符でんきんふを取り出すと、符に向かって小声で数言つぶやいた。そしてその符と一枚の玉牌ぎょくはいを少女に渡した。


「この符と玉牌を持って、黄楓谷こうふうこく百薬園ひゃくやくえんへ行け。という姓の先輩を探すのだ。その時、彼の門下もんかに入れるかどうかは、お前の運次第だ」 韓立は淡々とした口調で言った。


 少女は韓立が自分を弟子に取ろうとはしなかったものの、別の機会を与えてくれたことに、再び一筋の希望を見出した。慌てて韓立に礼を言った。老人もまた喜びに満ちていた。


「紹介しただけで師事が決まるわけではない。代わりに、上階じょうかい法器ほうきを二つお前にやろう。お前たち孫の道書どうしょへの恩返しだ」


 韓立はそう言うと、収納袋ストレージバッグから翠玉色すいぎょくいろ錦綾きんりんと青い小さな剣を取り出し、さりげなく老人に渡した。


 老人はそれを見て、驚きと喜びの表情を浮かべた。


 彼は韓立が少女に師匠を紹介したことで、すでに十分な恩恵だと思っていた。まさか韓立がさらに別の利益を与えてくれるとは思わず、大いに感謝した。


 老人は慌てて口々に礼を言うと、うやうやしく法器を受け取った。その目は二つの法器を非常に気に入っている様子だった。


 上階の法器など、これまで長く修練してきた彼の身にはたった一つしかなかった。それが今、一度に二つも手に入ったのだから、これ以上何を望めようか!


 その後、韓立はここに長居せず、潜伏させていた二つの霊気の塊をさっと回収すると、祖孫二人の見送る視線の中、飄然ひょうぜんと去っていった。


 韓立の姿が完全に遠ざかるのを確認すると、老人は喜びに満ちて錦綾を少女に渡し、自分はあの小さな剣を取っておいた。そして近日中に出発し、黄楓谷へ行ってあの馬先輩を訪ね、自分の孫娘に七派の門下に入れる縁があるかどうか確かめようと考えた。


 しかししょう姓の老人は少し不思議に思っていた。韓立がどうして秦家しんけの人々と関わっているのか、と。あの人たちは紛れもない凡人なのだから。


 ……


 蕭姓老人のあれこれの思い巡らせはさておき、韓立はついに意気揚々と秦邸へ戻った。


 法器で直接自室の前に降り立ったため、彼の帰還は誰にも気づかれず、神出鬼没に寝室に現れた。


 新たに手に入れたあの無名の斂息れんそく口訣は非常に実用的だと感じた韓立は、その夜に古書を開いて修練を始めた。


 口訣は霊力の運用に関する小技に過ぎず、韓立の深い法力ほうりきの支えがあれば、習得にさほどの困難はなかった。


 わずか一晩で、彼は七割八割を理解した。


 翌朝、韓立が座禅を組み練気れんきを終え、最近は運が向いてきていると感じていた時、腰の収納袋の中から突然「ボンッ」という鈍い音がした。何かが割れたようだ。


 韓立の表情はすぐに曇り、顔色が陰った。しばらくして、彼は収納袋に手を伸ばし、一つの紫色の珠を取り出した。それは彼が白髪の老道士に渡した法器と全く同じものだったが、この珠の滑らかな表面には、何本かの深さの異なる亀裂が走っていた。


 韓立はしばらく黙っていたが、突然何も言わずに部屋を出た。そして庭で周囲に人影がないのを確かめると、神風舟しんぷうしゅうを即座に浮かべ、身をひるがえして舟に乗った。そして秦邸から物音もなく消え去った。


 一刻いっとき後、韓立は越京えっきょうの城外にある小さな村の上空に現れた。彼は表情を変えずに村の上空を見渡し、何かを探しているようだった。


 ついに、村から数里離れた人里離れた丘陵で、韓立は法器を降ろした。目を輝かせて一本の大きな柳の木をじっと見つめている。


 しばらくして、韓立は両手で印を組み、口の中で「しゅう」と軽く唱えた。


 すると、その木の深く埋まった根元から、一つの緑色に包まれた光の塊が飛び出した。光の中には一つの珠が包まれている。紫色に輝くその珠の表面には、やはり何本かの亀裂が入っていた。その亀裂の形と大きさは、韓立が手に持っているものとまったく同じだった。


 韓立はため息をつき、その光の塊に向かって手招きした。割れた珠は光に包まれたまま、彼の手の中へ飛んでいった。


 珠が手のひらに触れると、表層の光の塊は即座に韓立の体内に溶け込み、ぽつんと裸の珠だけが彼の手の中でもてあそばれることになった。


 韓立はしばらく考え込んだ後、指をはじいた。拳大の火球が指先から飛び出し、大木の根元に大きな穴を開けた。柳の木は瞬時に灰となった。


 韓立は前に進み出て丹念に観察したが、何も見つからなかった。


「どうやら、多分毒牙どくがにかかったようだな」 韓立は首を振り、独り言をつぶやいた。


 彼がかつて老道士に選んで贈った「紫光珠しこうしゅ」の法器は、実は正式には「紫光感知珠しこうかんちしゅ」という名だった。


 この法器は一組二つで煉成れんせいされる。防御光罩ぼうぎょこうしょうを展開できるだけでなく、片方の珠が光罩の破壊と共に損壊すると、もう片方の珠が千里せんりの範囲内にあれば、同時に損壊して裂けるという、まさに不可思議な特性を持っていた。


 この種の法器は、魔道六宗まどうろくしゅうの中の合歓宗ごうかんしゅうの弟子が最もよく使う防御法器だった。韓立は国境での戦いで数組を鹵獲ろかくし、珍しいと思ったため売らずに取っておいたのだ。


 彼が老道士にこの法器を与えた時、実は万が一老道士が不慮の事態に遭ったら、すぐにそれを知るための別の思惑があった。


 しかし、まさかわずか一晩で老道士がこの法器を使うことになり、しかもどうやら凶多吉少きょうたきしょうのようだとは、全く予想外だった。まったくの不意打ちだった!


 韓立は穴の縁に立ったまま微動だにせず、何かを考えているようだった。


 茶一服の時間が過ぎた頃、韓立の表情がわずかに動いた。そして無表情のまま神風舟を放ち、飛び乗ると、一筋の白光となって遠方へと飛び去っていった。


 この荒れ果てた小さな丘陵は、再び静寂を取り戻した。小鳥のさえずりが数声聞こえるだけで、死の静けさに包まれた。


 **「フーッ」**


 半刻はんとき後、付近で深い息を吐く音が響いた。


 すると、穴から十数丈離れたもう一本の小さな木の下から、ゆっくりと人影が這い出てきた。その者は全身を黒布で厳重に包み、鋭い光を宿す一対の目だけを覗かせている。外側には黄色い光のカバーがかかっていた。


 しかし、その者が完全に地面から出ると、黄色いカバーは薄くなり、やがて完全に消え失せた。


 その者は出てくると、警戒して周囲と空を見渡し、低い声で言った。


「出てこい。あの男は本当にいなくなった」


 その言葉と共に、周囲の数箇所の地面が同時に盛り上がり、同じような格好をした三人の者がまた現れた。同じ黄色いカバー、同じ黒衣に覆面だ。ただそのうちの一人は体つきが細く、どうやら女性のようだった。


「兄貴、どうする? 奴らは命じてきたよな? 来た者を生け捕りか殺せと。なのに今、我々は目の前でその男を行かせてしまった。何か問題起きないか?」 新たに現れた一人で、背の高い男が不安そうに尋ねた。その口調からすると、年はそれほど多くないようだった。


 最初に出てきた「兄貴」と呼ばれた者は、その言葉に思わず身体を震わせた。この言葉はまさに彼が心配していたことを突いていた。彼らに命令を下した者たちの冷酷非情さは、彼ら四人が身に染みて知っていることだった。


「たぶん… 大丈夫だろう。奴らが命じた時、来る者が築基期の修士だとは言っていなかった。これは我々の能力をはるかに超えている。もし手を出せば、ただ死ぬだけだ」 彼は自信なさげに言った。


「ふん! 兄貴の言う通りだよ。我々に築基期の修士を引き留められるわけがない。あいつらが本当に少しも道理をわきまえないとも思えないし!」 三人の中で唯一の女性が、憤ったように言った。


 この言葉を聞いて、他の三人は顔を見合わせて苦笑した。彼らの末の妹は今でもこんなに純真で、命が相手の手に握られているのに、相手が道理をわきまえてくれるわけがない!


「でも、妹の言うことも全く道理がないわけじゃない。奴らも来るのがこんな大物だとは思っていなかったんだろう。そうでなければ、こんな大事を我々だけに任せたりしない。少なくとも築基期の修士を一人、手助けに派遣するはずだ」 最後の一人で、痩せて背の高い男も口を開いた。


「そうだ! 事情をきちんと説明すれば、あまり重い罰は受けずに済むだろう!」 背の高い男は精神を奮い立たせたように、慌てて同意した。


 しかし、その言葉はどう聞いても自己慰撫じこいぶの意味が強かった。


「ただ、一つ変なことがある。あの築基期の若い修士、どこかで会ったことがあるような気がして、なんだか見覚えがあるんだ…」 その男の目に突然一抹の疑惑が浮かび、軽く独り言をつぶやいた。


 この言葉に、他の三人は皆、はっとした。非常に驚いた様子だった。


 特に女性は、目に好奇心の色を一瞬浮かべ、口を開いて詳しく聞こうとした。


 しかし「兄貴」と呼ばれた男が突然手を挙げて遮った。


「よし、我々は早くここを離れよう。何かあれば、後で話せ」


 女性はそれを見て、口にしたかった言葉を飲み込み、うなずいた。


「お前たち、どこへ行くつもりだ? 俺が一足先に送ってやろうか?」


 覆面の四人がまさに飛行法器を取り出して飛び立とうとしたその時、突然頭上から冷たい声が響いた。


 その声は刺すように冷たく、四人の覆面の者たちを一瞬にして青ざめさせた。彼らはほぼ同時に防御の術を施し、四方に散らばってから、ようやく頭上を見上げた。


 数十丈の高空中、韓立が衣をひるがえして神風舟に立ち、無表情で彼らを見下ろしていた。その視線は冷気を帯びて鋭かった。


 四人の心臓は同時に沈んだ。心の中で皆、同じことを考えた。この男はいつ戻ってきたのだ? どうして全く気づかなかったのか?


「散れ!」 リーダー格の「兄貴」は躊躇ちゅうちょなく叫んだ。


 そして真っ先に後方へ激しく後退すると同時に、懐から円盤のような法器が飛び出した。彼はその上に乗って飛び立った。


 他の三人もそれぞれ方向を選び、四方に散って飛び去ろうとした。


 彼らは皆、心の中でよくわかっていた。自分たちごときが築基期の修士に立ち向かえるわけがない。それならばすぐに飛び去り、生き延びる可能性を探った方がましだ。


 若い女性は四人の中で最も法力が弱かった。そのため法器に乗って飛びながらも、思わず振り返って空の韓立を一目見た。


 すると、驚くべき光景が彼女の目の前に現れた。韓立は小舟の上で微動だにせず、彼ら四人を追う気配すら見せなかった。女性は呆気あっけに取られると同時に、心の中で密かに喜んだ。どうやら無事に逃げ切れる望みは大きいようだ。


 しかしその瞬間、彼女の前方から一声、凄まじく耳をつんざくような鋭い悲鳴が響いた。


 女性は驚いて慌てて振り向いた。目の前で、目もくらむような矢状の赤い光芒が虚空を突き破って飛んでくるのが見えた。その勢いは凄まじく、まっすぐ彼女に向かって来る。


 覆面の女性は恐怖に駆られ、手を上げるのがやっとだった。手に握っていた「氷槍符ひょうそうふ」を投げ出すのが精一杯だった。


 水晶のような氷の槍は赤い光芒と接触し、白い霧の塊を爆発させた。しかし、その赤い光芒を一瞬たりとも止めることはできず、矢状の光芒は彼女の水属性の防御罩ぼうぎょしょうに直撃した。


 たちまち、赤い光と青い光が彼女の目の前で炸裂さくれつした。


 彼女の身体は激しく震え、数丈も後ろへ押し戻された。しかし防御罩は破れずに済み、女性はほっと大きく息をついた。


 その時、彼女は驚きと怒りが入り混じって前方を見つめながら、心臓がドキドキしていた。もしかすると、あの築基期の修士に仲間がいて、周囲に潜んでいるのかもしれない。


 前方を襲撃している「者」を見定めた時、覆面の女性の目は虚ろになり、黒布の下の顔は信じられないという表情だった。


 そこには兵士の格好をした二体の人形にんぎょうが、空中に浮かんでいた。そのうちの一体は大きな弓を持ち、同じような矢状の赤い光芒が次第に引き絞られているところだった。もう一体は、黄ばんだ光を放つ厚みのある長刀なががたなを持ち、ゆっくりと彼女に向かって飛んでくる。


 女性は死んだ人形がまるで人間のように襲いかかってくることに驚いたが、この二体の人形を破壊しなければ、無事に逃げることはできないと理解した。


 そう思うと、彼女は玉のような歯を食いしばり、収納袋から青く光る飛刀ひとうを取り出した。


 この品は、彼女が全ての蓄えを費やして他人から手に入れた上階の法器だった。普段は決して使わず、大切にしまっておくものだったが、今は逃げることが最優先だ。もはや躊躇している場合ではなかった。


「行け!」


 女性が低く叫ぶと、その飛刀は青い光の軌跡を描き、接近してくる人形に向かって飛んでいった。


 青い飛刀は瞬く間に人形の前に到達し、ためらうことなくその頭部に切りかかった。


 しかし、覆面の女性の期待に反して、「カンッ」という軽やかな音が響いた。人形は驚くべき速さで長刀を振り上げ、青い飛刀を一撃で弾き飛ばした。そして相変わらず落ち着いて女性の方へと漂い続けた。


 覆面の女性の顔色は一変した。彼女は指をさし、数丈も飛び去った法器を操り、飛刀に大きな弧を描かせて人形の背後から斜めに突き刺させた。


 しかし、彼女が目を見張るようなことが起こった。人形はまるで後ろに目があるかのように、同じく一刀で彼女の法器を弾き飛ばしたのだ。


 これには女性も本当に慌てた!


 別の方法を考えようとしたその時、鋭い悲鳴が再び響いた。弓を持った人形の矢が放たれたのである。


 やむなく、覆面の女性は慌てて横に飛び、その矢を避けようとした。


 しかし、この赤い光芒はまるで操られているかのように、彼女の動きに合わせて追跡してきた。不意を突かれた彼女は、再び直撃を喰らわざるを得ず、またもや数歩押し戻された。


 その時、長刀を持った人形がついに彼女の眼前に飛来した。遠慮なく長刀を振り上げ、彼女の防御罩を強打しようとした。


 覆面の女性がそれを許すわけがなかった。慌てて後ろに飛び退いた。


 こうして、二体の人形による近接と遠距離の挟み撃ちに遭い、この覆面の女性は決して低くない修為しゅういを持ちながらも、追い詰められて次々と後退させられるだけで、脱出など夢のまた夢だった。


 女性が飛刀を操って必死に人形の攻撃をかわし、汗びっしょりになりながらも戦っていると、突然、近接戦闘を仕掛けていた人形が後ろへ跳び下がった。同時に弓を持った方も手にした弓を下ろし、攻撃を止めた。


 女性はこの光景を見て、呆然とした。すると、背後から突然ため息混じりの声が聞こえた。


「はあ… 五妹ごまい。お前も追い返されたか」


 覆面の女性はその声を聞き、身体が固まった。そしてゆっくりと振り返った。


 そこには、残りの三人の覆面の男たちが、肩を落として立っていた。彼らの背後には、それぞれ三体から四体の、彼女の前にいたものと同じような人形が立っている。ただ、兵士の格好をしたものだけでなく、数体の虎や豹のような野獣の人形も混じっていた。


 女性は絶望の色を目に浮かべて周囲を見渡した。案の定、彼女は知らぬ間に元の場所に追い詰められていたのだ。


 そして三人の兄たちは皆、目に光がなく、どうやら何らかの禁制きんせいをかけられたようだった。


 覆面の女性は空の韓立を一目見ると、暗然あんぜんとして手にした飛刀の法器を地面に投げ捨て、もはや何の抵抗もしなかった。


 韓立はその様子を見て、ためらうことなく手を一振りした。すると数本の緑の光芒が覆面の女性の体内へ飛び込み、異物が体内に入る感覚と共に、真元しんげんの流れが滞り、もはや自由に操れなくなった。


 これらをすべて終えた韓立は、この四人に何かを問いただそうとはせず、手招きして彼ら全員を地面から座っている神風舟の中へと引き入れた。


 ここに長居する場所ではなかった。もし遅れれば、相手の高人が来たら大変なことになる。


 越京から遠く離れた方向を適当に選び、韓立はこの四人を乗せて一筋の白光となり、本当にこの地を飛び去った。


 韓立が去ってすぐ、この小さな丘陵にまた二人の、韓立に連れ去られた四人と同様の格好をした者が現れた。ただ彼らの衣服は血のように濃い赤色で、見る者に非常に不快感を与えるものだった。


 二人は周囲を見渡すと、韓立が開けた大きな穴の前に立った。


 しばらく静かに沈黙した後、そのうちの一人が突然ため息をつき、口を開いた。


「どうやら蒙山五友もうざんごゆうは失敗したようだな」


 その声は少し枯れており、年配のようだった。


「ふん、役立たずめ! 成功しないどころか、おそらく生け捕りにされたのだろう! ここには血の匂いすら残っていない。あの男はとても簡単に四人を制圧したようだ」 もう一人は目に軽蔑の色を浮かべて言った。この男は年若く、二十歳前後のようだった。


「これは厄介だ。蒙山五友は本当に役立たずというわけではない。そうでなければ、最初から血祭ちまつりにしただろう。どうして命だけは助けたのか? おそらく、彼らはあまりにも多くの煉気期れんききの修仙者に遭遇し、多勢に無勢たぜいにぶぜいだったか、あるいは築基期の修士が介入したかのどちらかだろう」 最初の男は少し異議を唱えるように言い、声にはいくぶんの懸念がにじんでいた。


「どうした、あの連中が秘密を漏らすのを心配しているのか? 彼らは本教ほんきょうが新たに吸収した末端の修士に過ぎない。本教のどんな秘密にも触れてはいない。それに命令を下す前に、私はすでに彼らに細工を施しておいた。彼らは長くてもあと半日しか生きられない」 若者は軽く笑い、気にしない様子で言った。


「ほう! それなら良い。たった半日なら、彼らは何事も漏らすまい。何しろ彼らは血呪禁制けっじゅきんせいを受けたことを気にしているはずだ。おかしいと気づく頃には、おそらくもう何も話せなくなっているだろう」 老人はほっとしたように言った。


 しかし老人は口調を変え、声に陰りを帯びて言った。


「しかし、一体どうしたのだ? 話し合いはまとまっていたはずだ。呉老道ごろうどうを貴様の傀儡くぐつ師匠とし、貴様が徐々に修仙界に姿を現すようにする。そうすれば本教は金蝉脱壳きんせんだっかくの策を実行し、教団の核心弟子たち全員が修仙界に別の表向きの身分を持てるはずだった。なのに貴様はなぜ突然老道士の部屋に押し入り、彼の精血せいけつを吸い尽くしたのだ? 貴様は彼の法力で進補しんぽする必要などなかったはずだ!」


 老人のこの言葉を聞いて、若い方の覆面の男は苦笑を漏らし、やむを得ない様子で言った。


「私がそうしたかったと思うか? 仕方なくそうしたんだ!」


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