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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第三卷:天南築基編一八方塞がり·正魔大戦
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戦況一築基期34

大衍決だいえんけつ」の記述によれば、第一層を修得すれば、元神は十数個の神念を問題なく分離できる。第二層に至れば百個以上、第三層になると「林師兄りんしけい」のように数百個もの神念を分離できるようになる。


 第三層に達し、数百体の機関傀儡きかんくぐつを同時に操り、人と戦う光景を思い浮かべると、韓立自身ですら、それはあまりに異常な光景だと感じた。


 しかし、この異常さも、韓立の推測では築基期の中だけで横行できるだけだろう。


 結丹期に至れば、築基期修士と同水準の三級以上の傀儡を数百体も煉製れんせいできなければ、どれだけ操ろうとも、結丹期修士の全力の一撃には耐えられない。あの日、雷師伯らいしはくが数百体の千竹教せんちくきょうの二級傀儡を一掃した光景は、今も彼の脳裏に焼き付いている。


 二級傀儡を煉製するのに上階法器じょうかいほうきの材料が必要なら、より高級な傀儡の煉製には、少なくとも頂階法器ちょうかいほうきの材料が必要になるはずだ!


 そうなると、傀儡術を修める結丹期修士が、築基期の時と同じように他の功法の結丹期修士を圧倒するには、最低でも数百セット分の頂階法器材料が必要になる。これには韓立も思わず心臓が止まりそうになった!


 それに加え、煉製失敗による材料の浪費や、数百もの強大な魂魄こんぱくがどこにも見つからないことを考えればなおさらだ。


 これこそが、千竹教の傀儡術がほとんど知られていない主な原因だろう。


 何しろ一派の実力は、結丹期修士の数で評価される。千竹教が結丹期修士同士の戦いで他派と争えない以上、築基期の弟子がどれだけ強くとも、結びこもって一地方を支配するだけに留まるのだろう。


 もちろん、これらは韓立が大衍決と傀儡術を修練した後の推測に過ぎない!


 しかし傀儡術が築基期の韓立の実力を大幅に上昇させることは紛れもない事実だ! だから韓立は、今後の是非ぜひなど気にしていられない。


 何しろ、数カ国にまたがる修仙界の大戦は、始まったばかりなのだから!


 韓立がこの霊鉱の警備に就いて間もなく、ある人里離れた荒れ山で、魔道六宗まどうろくしゅう越国えっこく七派の間で、奇襲と伏撃による大規模な戦闘が勃発した。


 具体的な経緯は、今や韓立も徐々に知るところとなった。なんと七派の一つ、霊獣山れいじゅうざんは、元々魔道・御霊宗ぎょれいしゅうの分派であり、数千年前に魔道が越国に埋め込んだ潜伏スパイだったのだ。


 今回の六宗による七派侵攻に際し、この伏線が当然利用され、魔道はかつて姜国きょうこく車騎国しゃきこくを一挙に制圧した時のような奇襲効果を期待した。


 しかし、霊獣山の上層部は、この数千年の継承の中で、もはや御霊宗の一部であることを認めず、頭上に突然「太上皇たいじょうこう」が現れることを望んでいなかった。


 結果、他の六派と連絡を取り合った後、何らかの方法で魔道を欺き、七派修士の拠点を奇襲するよう仕向けたのだ。


 奇襲に向かった数千の修士は、途中で待ち伏せていた七派の修士たちに、絶対的な優位のもとで迎え撃たれ、魔道は少なからぬ損害を被り、結丹期修士さえ二人がその場で戦死した。


 魔道六宗へのこの一撃は、当然七派側を歓喜させ、士気は大いに高まった! 一方、魔道六宗は逆上し、大挙して攻め寄せてきた。


 七派もひけを取らず、陣形を布いて迎え撃った。


 両勢力は越国と姜国・車騎国の二つの国境地帯で、十数回にわたる激戦を繰り広げ、死傷した修士はすでに一万を超え、結丹期修士さえ七、八名が戦死するという凄惨せいさんを極めた!


 その日、霊石を運びに来た修士が語る時に見せた恐怖に震える表情は、韓立や他の同席した修士たちを肝を冷えさせ、あの規模の戦いに巻き込まれなかったことを密かに喜ばせた。結丹期修士でさえこれほど戦死しているのを見れば、その光景の恐ろしさが想像できた!


 しかし、魔道六宗は天南地区の二大勢力の一つにふさわしく、その実力は越国修仙界が比べるべくもなかった。


 七、八度の戦いの後、七派は相手の猛攻の前に明らかに支えきれなくなった。もし七派が自陣に事前に数個の禁制大陣きんせいだいじんを布いて陣形に拠り抵抗していなければ、おそらくとっくに敗北していただろう。


 しかしそうであっても、七派が持ちこたえられるのは長くはなかった。


 だが、越国側が風前のふうぜんのともしびとなったまさにその時、七派の要請に応じて、越国に隣接する元武国げんぶこく紫金国しきんこくという二つの中等国の修仙者たちが、ついに支援に駆けつけた。


 実は七派は、魔道六宗との開戦前から、賢明にも弁舌巧みな者を選び、それぞれ両国に救援の使者を派遣していたのだ。


 両国の修仙諸派はこの手紙を受け取ると、当然、魔道が越国を制圧した後に自国も併呑へいどんされることを恐れ、使者が口を酸っぱくして説得するまでもなく、支援の要請に同意した。そして、同仇敵愾どうきゅうてきがいの思いで両国の修士の大半を集結させ、星夜せいやのうちに支援に駆けつけたのである。


 この両国修士の加勢により、越国と魔道六宗の実力差は、ようやくそれほど大きいものではなくなった。七派は防御大陣の威力を頼りに、見事に魔道の攻勢を食い止めたのだ。


 こうして、魔道六宗が一気に越国を制圧しようという企ては、当然のごとく潰えた。両勢力の戦いは膠着状態こうちゃくじょうたいに陥り、消耗戦となった。


 このような大規模な会戦は減ったが、代わりに小規模な奇襲戦が、越国と魔道六宗の後方で相次いで発生するようになった。特に原料や霊石の産地は、七派と魔道の奇襲の主要目標となった。


 しかし韓立が守るこの霊石鉱は、おそらく交戦境界から遠すぎるためか、なんと今なお敵の襲撃を受けていない。これは奇跡と言わざるを得ない! 他の同規模の霊石鉱は、すでに三、四回も奇襲を受けた記録があるというのに。


 だが、それゆえに七派はかえってこの場所を気にかけ、半月前にさらに二十数名の修士からなる一隊を支援として派遣した。隊長は霊獣山の築基後期ちくきこうきの修士だった。


 これにより霊鉱の防御は大きく強化された! しかし韓立はその中に、山雨来たらんとして風楼に満つ(さんうきたらんとしてふうろうにみつ)という予感を感じ取り、大衍決の修練にますます精を出し、第一層突破はもはや遠い先の話ではなくなった。


 ところが、この第二陣の支援に来た煉気期れんききの修士の中に、韓立はなんと知人に出会った。血色試煉けっしょくしれんで一面識あった醜男ぶおとこ鍾吾しょうごである。


 鍾吾も韓立を認識した。


 しかし、今や築基期の修為しゅういを持つ韓立を前に、彼の顔色は幾度も変わり、驚き、嫉妬、羨望など様々な感情が次々と浮かび上がり、韓立を感嘆させた。


 最後に鍾吾は苦笑いを浮かべ、やはり前に進み出て韓立に一礼し、やや不本意ながら「先輩せんぱい」と呼んだ。


 そして韓立は笑いをこらえながら、淡々と応えた。


 当時の鍾吾の五色に輝く変化顔へんげがおを思い出すと、座禅中の韓立の顔には思わず笑みが浮かび、目を開けた。今の心境では大衍決の修練を続けるのは適さない。心が落ち着くのを待ってからにしよう!


 ***


 時は過ぎるのが早く、韓立は小半こなかばを交代警戒に充て、大半を大衍決の修練と傀儡獣の製作に費やす中で、また一ヶ月の時を過ごした。この時点で、彼は大衍決第一層の完成が近いことをはっきりと感じ取っていた。


 これには韓立は驚きと喜びが入り混じった!


 言うまでもなく、韓立は五行道法ごぎょうどうほうであれ青元剣訣せいげんけんけつであれ、その資質はどちらかと言えば低劣だった! しかしこの大衍決の修練は驚くほど順調で、少しも難しさを感じず、まさに水が流れてみぞができる(自然に成り行く)感覚だった。興奮する一方で、心の中では密かに奇妙に思っていた!


 そして最初の二級傀儡獣が、十数回の失敗を経て、ついに二日前に煉製に成功した。千竹教の者たちの傀儡に比べれば粗雑で、威力もやや劣る感はあったが、それでも韓立は嬉しそうに笑い、他の修士に材料を追加で持ってきてもらったら、大量に製作しようと計画していた。


 しかし今日、韓立が静室で座禅を組んでいると、突然外から鋭く耳をつんざくような金切り声が響き渡り、続けて誰かが外で狂ったように叫んだ。


「大変だ! 魔道の連中が襲ってきた! 皆、出てきて戦う準備をしろ!」


 韓立は心臓が凍る思いで、表情を引き締めて静室を出た。


 その時、それぞれの土洞どどうで休息していた七派の修士たちも、韓立と同じように厳粛な面持ちで出てきて、互いに一瞥すると、次々と窯洞ヤオトンの外へと出て行った。


 掩月宗えんげつしゅう宣楽せんらくと霊獣山の築基後期修士・呂天蒙りょてんもうは、無表情で四煞陣しさつじんの下に浮かび、大峡谷の上方を見つめていた。


 彼らの背後で当直中の十数名の修士たちは、皆やや不安げな様子だった! だが支援の韓立らが出てくると、表情はようやく落ち着きを取り戻した。


 そして韓立が宣楽らの視線を追って大峡谷の上方を見ると、確かに敵の姿を発見した。人数は少なく、二、三十人ほどのようだった。


 しかし韓立はよく分かっていた。敵の後方深くまで潜入して奇襲を仕掛けるほどの者たちだ。おそらく全員が築基後の水準で、煉気期の足手まといを連れてくるはずがない。


 つまり、実力において彼らは依然として絶対的な劣勢なのだ! この一戦は、おそらくそう簡単にはいかないだろう。


 韓立たちの側には九名の築基修士と六十余名の煉気期弟子がいる。相手に比べればやや劣るものの、四煞陣を頼りにすれば、一戦を交える力はないわけではない。


 そこで宣楽の合図で、韓立ら修士は次々と上方へ飛び上がり、四煞陣の縁に身を潜めながら敵の動きを静かに注視した。


 魔道の襲撃者の姿が、韓立の目にはっきりと映った!


 彼らは主に赤と黄の衣を身に纏い、どうやら二つの宗派に分かれるようだった。


 最前列に立つのは、容姿は普通の赤衣の少女と、六、七十歳ほどの黄衫こうさんの老人だった。この二人の修為は特に驚くほどではなく、それぞれ築基初期と築基後期のようで、微笑みを浮かべながら何か話し合っていた。


「気をつけろ。こいつらは魔焔門まえんもん天煞宗てんさつしゅうの者だ」唯一、六宗と数度交戦経験を持つ呂天蒙が、左右の修士たちに慎重極まりなく言った。彼はこの二派の者をかなり警戒しているようだ!


 韓立ら修士はこれを聞き、当然十二分の注意を払い、ますます警戒を強めた。


 その時、上の赤衣の少女が話を止め、振り向いて淡々と何か言葉を発した。


 韓立らは距離が遠すぎて聞き取れなかった。しかし少女の背後にいた赤衣の者たちは全員、身を躍らせて前に進み出て、ゆっくりと峡谷の下にある四煞陣へと近づいて行った。


 同時に、黄衣の老人も黙って手を振った。すると彼の側の黄衣の修士たちは十数本の黄光こうこうとなり、四煞陣へと襲いかかった。なんと後発ながら先に着く勢いだった。これに四煞陣内の韓立らは思わず息を詰め、性急な者はすぐに法器ほうきを構えた。


 当然、これらの黄衣の修士たちは愚かにも直接陣内に突っ込むわけではなかった。四煞陣から十余丈じゅうよじょう離れた地点で一斉に止まり、姿を現した。そして、様々な法器がこれらの修士たちから飛び出し、凄まじい勢いで大陣へと迫った。


 法器の奇光きこうと四煞陣の青・赤・藍・黄の四色の禁制きんせいが衝突し、雷のような爆裂音ばくれつおんを立てた。下にいる七派の者たちは顔色をわずかに変えた。


「半分の者はこの天煞宗の連中を相手にしろ。陣を破らせるな。残りの半分は魔焔門の修士たちに警戒を怠るな!」掩月宗の宣楽は一瞬考えた後、果断かだんに言った。


 そして陣外へと飛び出し、真っ先に一振りの真っ白な小さな剣を放った。それは白虹はっこうと化し、四煞陣の外で一振りの飛刀ひとうたまのような形状の法器を食い止めた。


 この言葉を聞き、宣楽の一隊に従う修士たちも、それぞれの法器を放って陣外へ飛び出し、相手の攻勢の大半を引き受けた。韓立も当然その中にいた。彼はすでに使い慣れた「金蚨子母刃きんぷしぼじん」を放ち、数本の金光きんこうが織りなす金網で一振りの青色のほこ状の法器を封じ込めた。


 韓立が選んだこの法器の持ち主は、彼と同じく築基初期の水準だったため、戦いは金網と青戈せいかが渦巻いて激しいように見えたが、実際には韓立は楽々と場をコントロールしており、時折他の戦場を盗み見することができた。


 状況はどうやらまずまずのようだ!


 韓立たちの側で戦っている修士の大半は煉気期の修為で、法器も相手に遠く及ばず、およそ五、六人がかりでようやく一人の築基期修士の攻撃を凌いでいた。しかし陣の庇護ひごがあったため、危機の際にはいつでも陣内に退避でき、今のところ死傷者は出ていなかった。同じく築基期の他の数名の修士は、当然彼のように一人で一人の黄衣の者を相手に、互角に渡り合っていた。


「これが魔道六宗の実力か?」


 韓立は少し奇妙に思った。もし敵の実力がこの程度なら、霊鉱を守るのは問題なさそうだ!


 彼がそう考えている時、魔焔門の赤衣の者たちがようやくのろのろと四煞陣の側に到着した。これにより、まだ手を出していなかった呂天蒙ら修士は即座に警戒の目を向け、若手の七派修士の中にはやる気を見せる者もいた。


 赤衣の者たちはすぐに戦闘に加わらず、互いに奇妙な陣形を取った。そして一人の指示のもと、皆が一柄の火紅色の大きな旗を取り出した。旗には金烏きんう烈陽れつようが描かれ、紅光こうこう燦然さんぜんと輝き、一見して並の物ではないことがわかる。


「まずい! こいつらは狂焔修士きょうえんしゅうしだ! 青陽魔火せいようまかを放とうとしている。止めろ!」


 呂天蒙は赤衣の者たちが落ち着き払っている様子を見て、一抹の不吉な予感を抱いていた。彼らが陣形を取り旗を抜いた時、六宗大戦に参加した際に目撃した衝撃的な光景を思い出し、思わず顔色が青ざめて叫んだ。


 続けてこの霊獣山の修士は、ためらわず陣外へと飛び出し、腰の革袋かわぶくろを急いで放った。すると袋の中から二匹の数尺すうしゃくの長さの飛天蜈蚣ひてんむかでが飛び出した。


 この二匹の蜈蚣は全身に黒黄色の恐ろしい斑紋はんもんがあり、半透明の碧緑色のはねを一対持っていた。呂天蒙の数声の短い口笛の合図で、眼光を鋭くして赤衣の者たちへと突進した。


 まだ手を出していなかった他の七派の修士たちもこの言葉を聞き、「狂焔修士」や「青陽魔火」が何かは知らなくとも、築基後期の隊長がこれほどまでに顔色を変えるものが、並大抵のことではないと悟り、躊躇せずに続けて攻撃に出た。


 特に数名の築基期修士は、その身を呂天蒙のすぐ後ろに従え、彼らの法器も二匹の毒蜈蚣と共に赤衣の者たちの目前に迫った。


 その時、十余名の魔焔門の者たちはまだ旗を握り、口の中で呪文を唱え続け、体は微動だにせず、眼前に迫る攻勢をまるで眼中にないかのような態度だった。これに呂天蒙ら修士は大喜びした。


 真っ先に魔焔門の修士たちの頭上に達した二匹の蜈蚣のうちの一匹が、大口を開けて墨緑色の毒霧を激しく噴き出そうとした。


 しかしその時、人々を震撼させる事態が起きた!


 この巨大蜈蚣の毒霧がまだ口から出る前に、その体に数本の細長い銀色の光が走り、その光の軌跡に沿って体が突然四つ裂きになり、一塊ずつに切り分けられて落下したのだ。


 呆然ぼうぜんとする七派の修士たちが反応する間もなく、同じことがもう一匹の蜈蚣にも起こった。これには呂天蒙が顔色を変え、急いで身を止めると、小さな盾を取り出してすぐに祭り出し、自身の前に立てた。


 彼の背後にいた他の修士たちも、恐怖に駆られて様々な防御法器や符箓ふろくを一斉に繰り出し、蜈蚣と同じ末路をたどらないよう必死だった。


 しかしさらに途方もないことが起こった!


 蜈蚣の後に続いて到着した数点の法器が攻撃を仕掛けようとした時、前方に無数の細い銀糸ぎんしが突然現れ、それらの法器を包み込んでしまい、全く動けなくしてしまったのだ。


 こうして陣を飛び出したばかりの七派の修士たちは、呆気あっけに取られて互いを見合わせ、しばらくはどうしていいか分からなかった。


霊光術れいこうじゅつを使え! 赤衣の連中の前に他の者がいる。奴らは何かしらの透明秘法を使っている!」一人の法器を失った築基修士が、目に青い光を宿らせた後、驚愕して叫んだ。


 この言葉に他の修士たちもようやく悟った。しかし霊光術を使えるのは築基期修士だけで、煉気期の修士はただ呆然と見ているしかなかった!


 韓立も同様に霊光術を使い、その場所を見た!


 先ほどの光景は、彼も目に焼き付いていて、同様に驚いていた。他人の指摘で霊光術を細かく使って見ると、確かに旗を握る魔焔門の修士たちの前に、幾つかのかすかな白い人影が現れていた。これらの人影は片手に剣のような細長い武器を持ち、もう一方の手からは条々(じょうじょう)の銀糸を放って、動けなくなった法器たちを操っていた。


 この時、呂天蒙ら修士は白影を発見した後、様々な法術や法器を一斉に放って白影を猛攻したが、それでも白影に完全に阻まれてしまった。どんな法器や道法も、白影にはほとんどダメージを与えられず、まるで不死身のようだったのだ。


 しかし幸い、これらの白影は手にした武器で素早く斬りつけることと、もう一方の手で銀糸を放つという二つの手段しか使わないようだった。接近を許さなければ大したことはない。さもなければ、誰が攻めて誰が守るか分からない状況だった!


「一体何の化物ばけものだ?」


 韓立は大いに驚嘆した! これらの人影は明らかに普通の人間ではない。何らかの祭煉さいれんされた鬼霊きれいなのだろうか?


 彼は思案しながら、適当に前方の金刃きんじんを操っていた。この上の空の態度が、ついに相手の天煞宗の中年初年修士の逆鱗げきりんに触れた!


 この男は無言で顔を曇らせながら、青戈せいかを操って韓立の金刃と絡ませる一方、黙って貯物袋ちょぶつたいを叩いた。すると中から、くるくると回転する白いしゅが飛び出した。


 この珠は祭り出されると、風に乗って家屋ほどの大きさに膨れ上がり、悪意満々に韓立の頭上へとぶつかってきた。


 韓立は少し気が散っていたが、相手がこれほどの大げさな動きをすれば、見逃すわけがない。


 彼は慌てずに片手を虚空こくうに一振りした。すると丈余じょうよの青い剣芒せんぼうが手を離れ、真っ直ぐに珠を斬りつけ、珠は数度跳ね返された後、しばらく前進できなくなった。


 そして韓立はようやく貯物袋から一対の「烏龍奪うりゅうだつ」を取り出すと、崩れかけていた剣芒に代わり、たちまち相手の珠を支え、再に膠着状態こうちゃくじょうたいを作り出した。これには相手の天煞宗修士も非常に腹を立てたが、しばらくはどうしようもなかった!


「まずい!」


 呂天蒙の焦燥しょうそう極まる叫び声に、韓立の心臓が一瞬止まり、急いでまた一方を見た。すると赤衣の者たちは呪文を唱えるのを止め、同時に手にした旗を斜め上方へ掲げ、旗の先にはかすかに青いほのおが現れていた。


「これが青陽魔火か…」韓立は目を見開き、青い火の粉をじっと見つめ、内心不安が湧き上がった。


 相手が術を完成させようとしているのを見て、呂天蒙の心は少しずつ沈んでいった! しかし目の前のこれらの白影は、短時間で突破できるものではなかったのだ!


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