大衍決 一築基期17
**元神**: 修練者の本質的な魂と精神の核。肉体が滅んでも存在し続け、奪舍や転生の可能性を持つ。
**神識**: 精神的な感知力、認識力。周囲の状況把握や細かい操作、他者の探知などに用いる。
韓立は相手の言葉を聞いて、何も口にせずにいた。白い光を放つ片手で、相手の元神をしっかりと掴んだまま、俯いて考え込む!
しばらくして、韓立はようやく顔を上げ、冷たく言い放った。
「もしさっき、不意を突かれてお前の元神に侵入されていたら、貴様は俺を見逃してくれたか? 貴様の法力は、この築基期の俺よりはるかに強いはずだ。十中八九、俺は貴様に喰われる羽目になっていたろうな」
韓立の言葉には、露骨な敵意がにじみ出ていた!
「秘密を教える! 絶世の功法をやる!」
林師兄は恐怖に駆られ、慌てて元神で念話を送った。
「秘密? 功法? まさかお前らの千竹教の『大衍決』のことか?」
韓立の淡々とした一言で、元神の緑の光が一瞬激しく輝き、どもりながら驚愕の声が返ってきた。
「な、なぜそれを知っている!? お前……お前は昨日、覗き見していた奴だ!」
その時、林師兄はようやく合点がいった。
「よし、お前も俺がお前らのことを何も知らないわけではないと分かったな。ならば、素直に全てを話せ! 今すぐお前の元神を潰してほしくはないだろうな?」
韓立はあっさりと言ったが、林師兄の元神は彼の手の中で激しく震えた。
「話すことなど何もない。師弟よ、お前は昨日、ほとんど聞いていたのではないか?」
林師兄は深いため息をつき、かすかに言った。
一方、陣の外にいる千竹教の者たちは、念話を送った後も陣内に何の反応もないことに業を煮やし、恥ずかしさと怒りから数多の傀儡に新たな攻撃を開始させた。陣の外は再び騒然となったが、陣の中は相変わらず平穏で、わずかに音と振動を感じるだけだった!
「師弟よ、これはなんという奇陣だ! これほど激しい攻撃を防げるとは、まったく信じがたい!」
その光景を見た林師兄は、話をそらし、わざと驚いたように言った。
「ふん、この陣が何かなんて知る必要はない。余計なことは言うな。それに、お前らの千竹教の内輪もめには、俺はまったく興味がない。俺が知りたいのは、その大衍決だ。お前もいくつかの功法を知っているのか? それを修練するとどんな神通が得られる? もし時間稼ぎをしようものなら、今すぐお前を潰すぞ」
韓立は眉をひそめ、突然、声の温度を急降下させた。
続けて、手に宿る白い光が猛然と強まり、指にほんの少し力を込めた。たちまち林師兄の元神は悲鳴を上げ、「やめて! もうしません!」と哀願した。
「この大衍決は、本教の開祖が独自に創り出した秘術であり、もっぱら神識を強化し、分神の術を修練するための秘法だ。これは我々千竹教が傀儡を使うための必修の功法でもあり、この術を修練して初めて、神識を数多の傀儡に付着させ、自由自在に操ることができる! そうでなければ、たとえどれだけ傀儡を煉製しても、同時に操れなければ何の意味もない」
韓立の手口を味わった林師兄は、これ以上ぐずぐずしていられず、慌てて一気に説明した。
「千竹教の基本功法なら、なぜお前はそれをわざわざ狙う必要がある? それに、半部という話もあるようだが、それはどういうことだ?」
韓立は色を変えずに問い続けた。
「隠すこともない。大衍決は我ら千竹教の基礎功法だが、同時に本教の根本でもあり、簡単に全ての教徒に伝えることはできない。だから今、千竹教の教徒が修練している大衍決は、正本の大衍決の第一層を簡略化したものに過ぎない。修練しやすいが、完全に修めても、正本の大衍決第一層の威力には遠く及ばない。正本の大衍決は、教団の上層部のみが修練できるのだ」
「外にいる連中は、正本の前二層を修めているからこそ、一度に百体近い傀儡を操れる! 俺は第三層の功法を修めたので、三百以上を制御でき、彼らより一歩抜きん出ている。しかし、第三層以降の大衍決は、代々教主と教主の後継者だけが修練する資格を持つ!」
「かつて千竹教で反乱が起こり、我が父は今の教主、金南天に暗算され、全本の大衍決までも奪われてしまった。当時、少教主であった俺は教団の外で教務を処理しており、この知らせを聞いても彼に対抗できず、身代わりを使って偽装死し、万里を超えて越国に逃げ込んだのだ。その時、俺は全本の大衍決は持っていなかったが、教主の一人息子として、前四層の功法は先に知っていた。それらをまとめて一冊の大衍決の上冊としたのだ」
「もともと、この地で一生を終えるつもりだった。だが、なんと大衍決が近く第三層を突破しそうになり、復讐心が沸き起こったのだ。一時の迷いで、当時の忠実な部下の一部に連絡を取り、後三層の口訣を盗み出させようとしたが、まさかこんな結末になるとは! 奴らが盗みに失敗して捕まったのか、それとも最初から俺を裏切ったのか!」
林師兄は今回は非常に詳細に、ゆっくりと語った。しかし、最後になると、声には怒りと無念が満ちていた!
韓立は冷たく相手の元神が不満を吐露するのを見つめ、何の行動も起こさなかった。相手が少し冷静になってから、ようやく遠慮なく詰め寄った。
「お前が言った秘密とは何だ?」
「それは……? まずは……」
「ああ! やめて! 言う! 今すぐ言う!」
林師兄の元神は少し躊躇し、何か条件を出そうとしたようだ。しかし韓立は彼に口を開く機会すら与えず、直接またもや大ダメージを与え、林師兄の元神を潰しかけた。相手は肝を冷やし、すぐに前言を翻した!
「身の程知らずな真似はよせ! 俺が知りたいことを全て聞き終わるまでは、条件など言い出さない方が身のためだ」
韓立の声は冷たく刺すようだった。
林師兄は一瞬、韓立の冷酷な手口に完全に圧倒され、恐怖に駆られて慌てて言った。
「実はその秘密も大衍決に関わることで、千竹教の上層部の間ではとっくに流布している。ただ、真偽は誰にも分からない! しかし父が存命の時、密かに俺に言ったところでは、この秘密は五、六割の確率で本当のことらしい!」
「いつからかは分からないが、我ら千竹教の歴代の上層部の間で、ひそかにこんな噂が流れている。大衍決を高層まで修めた者は、結丹が普通の修士よりはるかに容易で、修練時の壁も突破しやすい、と。なぜなら歴代の教主と教主継承者は、結丹に成功する確率が驚くほど高いからだ」
彼は声を一瞬止めてから、この秘密を口にした。
「結丹期に入る確率を高められるだと?」
元々無表情だった韓立の顔に、ようやく動揺の色が浮かんだ!
「そうだ! 師弟よ、俺に肉体を探し奪舍して再修練させてくれるなら、俺はまず前四層の口訣を師弟と共有する。その後、二人で手を組み、あの金という賊から残りの法訣を奪う方法を考えよう。そして共に金丹を結べば、これほど痛快なことはない!」
彼はまたもや口先で韓立を誘惑し始めた。
韓立はふん、と鼻を鳴らしただけで言葉を返さず、再び俯いて苦渋の表情で考え込んだ。林師兄の心は一気に不安に揺れた。
「五、六割の確率で、結丹の確率が上がるだけか?」
韓立は突然顔を上げ、眉をひそめながら呟いた。
「師弟よ、五、六割の確率は小さくない! これは金丹を結ぶことだぞ! 試すべきだ!」
林師兄はそれを見て、慌ててまたもや説得した。実のところ、彼の父親が彼に言ったのは五、六割の確率ではなく、三割の可能性だけだった! だが今、彼の口から出た確率は、瞬時に倍増していた。
「この大衍決は修練しやすいのか? 神識を増強する以外に、功力も増すのか? それと、林師兄はいつ築基に成功した? この大衍決を修練してどれくらいになる?」
韓立は突然眉を吊り上げ、冷たく問いただした。
「修練の速度はまあまあだ。功力も少しは増すようだ……。築基成功は、百数十年前のことだ。当時俺はまだ二十歳そこそこだった! 大衍決は築基後から修練を始めた。おや? 師弟はなぜそんなことを聞くのだ?」
林師兄は、相手が突然こんな一連の質問をしてくるとは思っていなかった。呆気に取られ、無防備だった彼は、最初の二つの質問にはごまかすように答え、後の二つにははっきりと答えた。
韓立の表情がほんのり和らぎ、相手の答えに満足しているようだった。しかし、林師兄の元神を掴んでいる彼の右手が、突如として白い光を強く放った! 続けて五本の指に力を込めると!
たちまち、手の中の元神は悲鳴を一度上げる間もなく、星の光の如く散り散りになり、この世から完全に消え去った。
「あいにくだ! 俺は生まれつき、他人に奪舍されるのが大嫌いなんだ。嫌な記憶を思い出させるからな。それに、確かに大衍決には興味がないわけではないが、この法訣は修練が容易ではない上に、法力も増やせない。どうして主功法として修練できようか!」
「よく聞け、もし法力すら築基期の頂点に達していないなら、大衍決をどんなに神妙に修練したところで、何の役に立つというのだ? 貴様の資質は確かに悪くない。この大衍決を百有余年も修練して、ようやく第三層の頂点に達しただけだ。法力も脇道にそれたせいで、築基中期をさまよっている。二兎を追う者は一兎をも得ず、というではないか。それに千竹教の歴代教主が両方を兼ね備えて金丹を結んだとしても、何の不思議もない。なぜなら、一教の教主になれる者など、皆、絶倫の資質を持ち、万人に一人の修練の奇才のはずだからだ。そうなれば、大衍決が結丹の確率を上げるという話の信憑性は、さらに低くなる! 俺は自らを決してそのような絶世の奇才とは思わない。大衍決も法力も高みに修めることなど、まったく自信がない!」
「最悪なのは、貴様の手には全本の大衍決の功法すらなく、俺を巻き込んで一教団を敵に回そうというのだ。自ら死を招く行為ではないか? それに、たとえ俺がお前を見逃したとしても、今日のことを恨みに思い、陰で俺に手を出すことはないと、誰が保証できようか!」
「さあ、これだけの理由がある。俺がどうしてお前を見逃せると思うのだ?」
韓立は、ついさっき一人の築基期修士の命を終わらせた右手を見つめながら、低く呟いた。




