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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第二卷: 煉気編一初めて世間に·血色禁地
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人々

 

 巨大な蜈蚣むかで屍骸しかばねの前に歩み寄ると、韓立は容赦ようしゃなく手にした金刃きんじんで、屍体の頭部、背部、そして尾部をそれぞれ突き刺した。結果、やはりその背中の外殻がいかくが最も硬く、金刃で突き刺してもわずか半寸はんすんしか入らず、さらに力を込めてようやくゆっくりと切り込めることが判明した。


 韓立はこれを見て、ためらうことはなかった! 即座に回収したばかりの八振りの金蚨子刃きんぷしじんを全て放ち、蜈蚣の背殻を苦労しながら切り刻み始めた。


 間もなく、数尺すうしゃく大の硬い殻の破片が幾つか、韓立によって強引に切り離された。彼はそれらを慎重に収納袋しゅうのうたいへ収めた。頂級法器ちょうきゅうほうきの全力一撃にも耐えられるこれらの品は、貴重な宝物だ。簡易な内甲ないこうに加工すれば、きっと大いに役立つに違いない。


 実際、韓立の本心では、この蜈蚣の外殻を全て切り取り持ち去りたかった。しかしそうすると時間がかかりすぎる。今の韓立にとって、時間こそが最も乏しい資源なのだ!


 だから韓立はやや悔いを残しつつ洞窟どうくつを出た。そしてすぐに、次の採薬予定地へ向かって疾走しっそうした。そこにも、まだ成熟していない「天霊果てんれいか」がいくつかあるはずだった。


 ***


 韓立が計画通りに休みなく動き回り、様々な未成熟の霊薬れいやくを収集しているまさにその時、他の幾つかの有名な霊薬成熟地点では、精鋭せいえい弟子たちの間で大規模な衝突が勃発ぼっぱつしていた! 結局のところ、霊薬の成熟地点を正確に予測できる場所は限られており、各派の「高手こうしゅ」の大激突は避けられなかったのだ!


 韓立の南東方向にある静かな谷間では、三人の者が韓立が入手したばかりの「紫猴花しこうか」二株を巡って、膠着こうちゃく状態に陥っていた。


 ただしこの二株の紫猴花は、淡い青色ではなく極めて鮮やかな輝く紫色をしており、濃厚な異香いこうを漂わせている。二株の紫色の奇花の前方には、燃えるような赤い一本角を生やした奇怪な鹿が、首と胴が分離した状態で血の海の中に横たわっていた。とっくに息絶えている。


 そして怪獣の屍体からそう離れていない場所で、服装の異なる三人が三角の位置に立っていた。しかし誰も手を出そうとせず、互いを非常に警戒しているようだった。


「お前たち、いったいどういうつもりだ? この炙角鹿しゃかくろくは俺が独力で仕留めたんだ。霊薬は当然俺のものだ!」ついに一人が怒りに満ちた顔で口を開いた。


 話したのは二十歳前後の青衫せいさんの青年だった。端整たんせいな顔立ちで、背はすらりと長い。片手には青い飛叉ひさを握り、もう一方の手には黄色い珠を載せている。両方の品は霊光れいこうを放ち輝いており、一見して頂級法器とわかる。道理で彼が一人で、あの非凡ひぼん上級妖獣じょうきゅうようじゅうを仕留められたわけだ。


道友どうゆう、まさか今年もお会いするとは。貴殿と私は本当に縁が深いようだな!」今度口を開いたのは、杖をついた青衫せいさんの老人だった。慈悲深そうで温和な顔立ちだが、青年の詰問きつもんには全く耳を貸さず、代わりに別の中年の道士どうしに話しかけた。


「そうだな、私もまさか今年も李施主りせしゅと再会するとは思わなかった!」道士はさや付きの質素な長剣を背負い、平然と言った。彼もまた青年を一瞥いちべつもしなかった。


 天闕堡てんけつほうの青年は激怒した。彼は幼い頃から類まれな資質ししつを持ち、家柄いえがらは名門、容姿も端麗たんれいで、どこへ行っても注目の的だった。だが今、この二人の男にこれほど侮辱ぶじょくされるとは! 恨みを抱かないわけがない!


 しかし彼が再び口を開く間もなく、老人と道士の次の言葉は、即座に彼の顔色を変えさせ、慌てふためかせた。


「昔話はさておき、ここには霊薬が二株ある。ちょうど我々二人で折半せっぱんし、一株ずつ分け合うのはどうか?」老人は無駄口を叩かず、向かいの清虚谷せいきょこくの道士に、霊薬を分け合うための連携を提案した。


 中年道士はそれを聞いても驚いた様子はなく、少し考え込んだ後、うなずいて承諾した:

「よかろう。我々の実力は互角ごかくだ。戦い続ければ共倒れになるだけだ。そうしよう、異存はない」


 青年は二人の対話をはっきりと聞き、内心驚きと怒りが入り混じった!


 相手二人が連携すれば、自身の法器の威力には自信があっても、到底敵わないと理解していた。だが手に入れかけていた霊薬を諦めるのは、どうしても納得できなかった!


 そこで脳内で急速に考えを巡らせた後、青年は突然後方へ激しく飛び退いた。二株の霊薬へ一直線に向かう。霊薬を掴み取り、即座に逃げ出すつもりだ。


「死にたけりゃ仕方ねえ!」


 青年が動いた瞬間、青衫の老人は顔を曇らせ、手にした杖を投げ飛ばした。それは一道の青光せいこうと化し、青年へと一直線に飛んだ。この杖が変じた青光はあまりにも速く、ちらりと光ったかと思うと、後発ながら先に青年の前方に到達し、行く手を阻んだ。


 青年は驚愕した。これは何という法器だ? どうしてこれほど速い? だが事ここに至って、深く考える暇もない。手を上げると、手にした青い飛叉ひさを迎撃に放ち、体勢は全く止めずに前進を続けた。どうやら霊薬を手に入れなければ引き下がらないつもりらしい!


小友しょうゆう、もう遅い! 速やかに立ち去るのが賢明だ。今日は殺生せっしょうせずに済むように!」青年が二歩も進まないうちに、背後から道士の落ち着いた声が聞こえた。まるですぐ後ろにいるかのように。青年は魂が飛び出さんばかりに驚いた!


 青年は顔面蒼白がんめんそうはくで振り返った。果たして道士はわずか一丈いちじょうしか離れていなかった。にこやかに彼を見つめている!


 顔色の青ざめた青年はもはや何も言わなかった。即座に方向を変え、谷の外へ必死に走り出した。もう二度と振り返ろうとはしなかった。彼は心の内で理解した。自分とこの二人の実力差は大きすぎる。霊薬を狙い続けるのは自殺行為に等しい。相手が自分を見逃したのは、すでに信じがたいことだったのだと!


「へへっ! 道兄どうけいの**霊狐歩れいこほ**は以前よりさらに上達したな。まさに神業かみわざだ!」老人は道士が青年を見逃したのを見て、大いに不思議に思ったが、それでも手出しはせず、むしろ相手を称賛した。


「大したことではない。取るに足らない小技しょうぎに過ぎん」道士は青年が消えた背中を淡々と一瞥し、ゆったりと言った。



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