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呉起戦記

作者: 高木紀久

魏の文侯(呉子=呉起の主君)は、先のいくさに参戦した者たちに対し、宴席を設けて、その労をねぎらった。即ち、最も戦功のあった者を上客じょうきゃく、次に手柄のあった者を中客ちゅうきゃく、戦果のなかった者を下客かきゃくとし、それぞれ、一品いっぴん二品にひん三品さんぴん、の礼をもって、もてなしたものである。


魏の文侯(呉起の主君)は、ある時、呉起を呼んで、今後将来、他国が攻めてきた場合の対処策について、聞いた。

呉起、独白して曰く、

「人器、一長一短あり...。」

ややあって、応じて、曰く、

「いいでしょう。わたくしめに、先の戦いで、功のなかった者たち(三品の者たち)をお貸し下さい。いざ、事有らば、彼の者たちの力をもって、必ずや、敵勢を大破してごらんにいれましょう。」


はたして、そののち、敵軍到来の報が、魏国内を駆け巡った。隣国の秦が、軍旅を発し、魏との国境線の付近にまで迫ったのである。その数、五十万。騎馬隊、甲車隊、強弩隊、歩兵隊、輜重隊、そのいずれもが、手柄を立てない間は、生きて国に帰らじ、と気勢をあげる者ばかりである。


秦軍到来の報告を受けた文侯は、呉起に命じて事に当たらせた。呉起は、かねてより訓練していた兵らを率いて、秦軍を迎え撃った。結果は、魏の大捷であった。かつて、三品の礼をもって遇された将兵たちが、奮戦して、秦の大軍を惨々に撃ち破ったのである。今回のいくさで戦功第一と賞されたのは、かつて文侯から三品の品格で饗応を受けた者たちであった。


いくさは、魏の勝利に終わった。魏の文侯は、戦いに参加した将兵らの労をねぎらうと、呉子(呉起)を招いて、彼とその統帥をたたえた。

呉子曰く

「眼前に在る、敵勢一軍、即ち、騎(騎兵隊)、甲(甲士隊)、弩(弩隊)、徒(歩兵隊)、ことごとくこれを破し、寇軍を退せしむるとも、一金いっきんの戦利とてなかりせば、ことごとくそも無事むじにも等しい...。」(正面にする敵の一大勢力、つまり、騎兵隊などの諸部隊を、全て撃破し、敵軍を退却させたとしても、一銭の戦利品も無いようでは、全ては最初から何事もなかったのと同じようなものである。)

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