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竜騎士と秩序の天秤  作者: 竹笛パンダ
第1章 竜騎士と秩序の天秤
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ふたりのきずな

 

 私はかつてお姉さまたちが母様に呪いを解いてもらった時のことを思い出した。

 あれは高位の竜の魔法。

 今の私にはできるかわからない。


「ラヴィ、アイリスを信じて。

 二人のきずなを信じるのです。

 あなたたちなら、きっと大丈夫。」


「お姉ちゃん、おきて。」

 というとお姉ちゃんの竜の紋章が輝き、私の額の紋章にも力が加わった。


 全身に力を込めると、眩い白い光が身体から溢れ出した。


「今ならできる。

 愛する仲間のため、力を貸して」


「竜の慈愛」


 白い光がラヴィの全身から溢れ、その場の全て包み込む……視界のすべてが真っ白になり、黒い影が消え去った。

 私にまとわりついていた黒い帯も消えた。


 ワイトキングが驚愕の声を上げた。


「何故だ……!?

 我が漆黒の闇が……消える?」


 3人の足元にまとわりついていた幻惑の闇魔法が、焼かれるように消え去った。

 ワイトキングが召還した石像が纏っていた影も消え去り、石像は音もなく崩れ去った。


 しばらくの静寂の後、光は収まっていった。


「残るはワイトキングただ一人です。

 お嬢様、アイリス殿下はそのまま攻撃をしていてください。

 アルゴ殿下は炎の極大魔法、私は聖属性魔法を用意します。

 お二人は時間を稼いでください。」


 お姉ちゃんの槍がワイトキングを捕らえた……しかし手ごたえがない。

 確かに槍はワイトキングの骨を貫くが、そのたびに黒い霧がその身を再生させた。


「我は不死身と言ったであろう、それでは我は倒せぬ。

 ではこちらから行こうか。」


 ワイトキングが呪文を唱えて杖を振りかざすと、ドラゴンゾンビが姿を現した。


「まさか、災害級の魔物……。」


 サポニスが言っていた魔物はこれなのね。


 私はドラゴンブレスを放った。

 しかしドラゴンゾンビの闇のブレスにかき消されてしまった。


「ははは、我が軍門に下れ、さすればお前たちも命を超えて強くなれるぞ。」


「ファイヤーエクスプロージョン」


 アルゴの炎の爆裂魔法がドラゴンゾンビをひるませた。


「今です、お二人ならやつを倒せます!」


「わかりました。ラヴィ、行くよ。」


 お姉ちゃんは私の背中に乗ると、二人の前に立ち、ワイトキングの正面に出た。


「ラヴィ、一緒にやるよ、いい? 今よ!」


「ホーリーブレイズ」「ドラゴンブレス」


 二つの魔力による神聖術は、強力な一撃をドラゴンゾンビたちに与えた。


 ワイトキングは後方によろめき、

「ぐぬぬ、ボーンソルジャー」


 そういうと床から強大なスケルトンが6体ほど出現した。


「メガフレア!」


 アルゴの炎の爆裂魔法がドラゴンゾンビとともにスケルトンを葬り去った。


「ホーリーアロー」


 サポニスの聖属性の光の矢がワイトキングの上方から降り注ぐ。


「押しています、いけます。」

 とサポニスが励ます。


「いけぇ、姉さん」と言ってアルゴも応援した。


 お姉ちゃんは竜騎士のジャンプで空中高く舞い上がり、さらに上から、

「ホーリーブレイズ」


 ワイトキングが大きくよろめいたその瞬間に、

「回転しっぽアタック」


 ワイトキングは竜になった私の攻撃をまともに食らい、骨がばらけて、元の大魔導士の姿に戻っていった。


 しばらくして、大魔導士ネビュラは意識を取り戻し、

「おお、森の賢者殿か。

 それに新たな竜騎士アイリス殿、森の守り手ラヴィ殿であったか。」

 大魔導士は穏やかに話し始めた。


「じいちゃんなのか」

 とアルゴが話しかけると、大魔導士は静かにうなづき、アルゴの頭をなでながら、

「森の賢者殿、この度は我の心の隙に魔物が生まれてしまい、この帝国は魔の手に落ちた。

 これもすべて我の強欲が招いたこと。

 謹んで裁きを受け入れよう。

 ただ心残りは幼いアルゴには後ろ盾がないこと。

 どうかこの子を正しき道へ、導いてほしい。

 我はアンデッドになり果てたが、あのような魔物がいつ我を依り代に復活するやもしれぬ。

 どうか我に最期の裁きをお願いいたす。」


 その時、竜騎士の槍がお姉ちゃんに問いかけた。


「汝、最後の審判を行うか? すべてを焼き払う覚悟はあるか?」


 お姉ちゃんの手が震えていた。


「最後の審判を下せば、この帝都は浄化の光に焼かれ、忌まわしい闇の支配は終わる……。」


「お姉ちゃん、私たちが作る未来って、みんな消しちゃうことなの?」


「……違う。

 私は、守るために戦う!

 優しい未来を作るんだ!」


 お姉ちゃんは槍に答えた。


「いいえ、それではすべてを破壊してしまいます。

 せっかく国を救っても、そこには草木の一本も生えないところでは、弟も困るでしょう。」


「そうだね、この力は誰かを守るために使うんだよね。」


 サポニスはその二人の会話に、胸をなでおろし、うなずいていた。


「さてアルゴよ、わしは誤った選択をしてしまった。

 次の世代の王として、この過ちは教訓にせねばならない。

 しかし、そのわしに勇気をもって立ち向かったお前を誇りに思うぞ。

 大魔導士ネビュラの名において、我が後継をアルゴに託す。」


 アルゴは大魔導士の傍らで泣いていた。


「お別れじゃ、アルゴよ。

 もうわしには生きる気力が残っておらん。

 わしが死ねば、この地にかけられた呪いも解けるであろう。

 そのあとはお前に託す。

 最後に話ができてうれしかったぞ、アルゴよ。ではな。」


 大魔導士は静かに目を閉じた。


 お姉ちゃんがアルゴを連れてサポニスの傍らに集まる。


「先ほどお二人で力を合わせたとき、大きな力を発揮しましたよね。

 では同じようにお二人で神聖魔法の癒しをこの地に与えてみてはいかがですか。」


「そうだね、これで呪いが解けるのなら、もうここは大丈夫になるね!」


「ええ、やってみましょう。

 さぁラヴィ、力を貸して。」


 私たちは向かい合ってお互いの手を取り、お姉ちゃんは右手で竜騎士の槍を高らかに掲げた。

 私も竜騎士の槍を左手で持ち、右手はお姉ちゃんと手をつないだ。


「竜の力よ、目覚めよ。」


 私がそう念じると私の額の竜の紋章と、お姉ちゃんの右手の紋章、竜騎士の槍の紋章が輝き出した。

 やがて、私たちは白い光に包まれた。


「いくよ」

 とお姉ちゃんが私に合図をした。


「ホーリーレイン」「竜の慈愛」


 二人の魔力は槍の先端に集まり、そこから天空へと一直線に延びてゆく。

 上空で街を包むように広がり、帝都には光の雨が降り注いだ。


 帝都の闇の呪いは解けたのだ。


「じいちゃん……。」

 アルゴが大魔導士に縋るが、その姿は崩れ去っていった。


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