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竜騎士と秩序の天秤  作者: 竹笛パンダ
第1章 竜騎士と秩序の天秤
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ギルドからのおねがい

 

 エリックが帰ってきて、みんなご飯を食べた。

 けど、そのままお酒を飲む会になって、楽しくやっていた。

 だから、エリックからのお話は次の日の朝に聞くことになったの。


「おはようございます、エリックでございます。」


「まぁエリック、待っていましたよ。さ、中へ。」


 そう言って洞窟の中へ招く。洞窟の中はサポニスが作り出した光の魔石で明るく照らされている。


 入り口には昨日みんなで楽しんだ大きな食卓があるの。

 そこから奥へ1段上がったところに扉があって、その中が謁見の間。

 森の守り手の応接室。


 そこから奥が私のお部屋と、秩序の天秤があるお部屋。

 そんな簡単なつくりになっている。

 けれども、母さんのような立派なドラゴンに成長しても頭がぶつからないぐらいは大きな部屋になっている。


「それで、今日はどのようなご用向きで?」


「それが、先日の窃盗団の捕縛の際に助けられた住民たちが口々に、

『森の主様のお計らいによって助かった』と言うものや、窃盗団からは、

『森の主を怒らせた』と言うものまでいて、どうにも収拾がつかなくなっていまして。」


 それって、ネルフが「森の主様に感謝を」と言って住民を助けたり、

 カイルが「お前たちは森の主様を怒らせた」と言って盗賊団を退治したからでしょう。


「ああ、わかったわ、エリック。

 あのときの話なのね。」


 まぁハイオークやオーガが人間を助けたり、人のために協力するなんてことはありえないし、悟られてはいけなかった。

 だから、すべて「森の主様の思し召し」にしてもらっていたの。

 まさかそれがこんな騒ぎになるなんて。


「どうしようサポニス。」


「うむ、まだ森の主がお嬢様であるとは、知られていないようでありますな。」


「どうやら、そのようだけど。」


「第一皇子が、ギルドを通して森の主様にお目通りを願い出ております。

 今回の依頼は『森の主様との面会の約束を取り付けよ』というものでして、どうしたものかと思い、ご相談に上がった次第です。」


「その第一皇子の目的は?」


「ただ、『森の守り手様に会い、礼がしたい』それしか伺っておりません。」


 その皇子の父、現国王が私の母様を連れて行ったのよね。


「お礼を言いに来るだけなら、軍勢にはならないでしょ。

 それに、秩序の天秤があれば、この森で騒ぎを起こそうとするものは拒まれるから、一度呼んで、反応をみればいいのかな。」


「そうですね、ではそのように手配いたしましょう。」


 私の母様を連れ去った国の第一皇子、いったい何の目的があるのでしょう。


 その夜、サポニスと相談したの。

 第一皇子が会いに来る。

 するとサポニスが、この森の主がまだ幼いドラゴンと知られるのはよくない。

 今のうちにと討伐される危険があるため、ここは姿を変えて対応しましょうと提案したの。


「エルフの秘術で姿を変える魔法がございます。

 人の間で暮らしていくには、エルフであることがわからないようにすることも、必要ですからな。

 ただし、竜の魔力を使おうとしてはなりません。

 使おうとすると変身が解け、しっぽが出てきます。

 それから頭の上には角が、背中に翼が生え、元の姿には戻れません。

 どうかご注意ください。」


 私はサポニスに、ウサギの姿に変えてもらった。


「そう、これよこれ。

 これでかわいがってもらえる。

 恐ろしいドラゴンの姿では、できないことね。」


 私は念願の『かわいがられる』ができるようになって、とてもうれしかった。


 それから数日後の出来事

 第一皇子アルスと、その姉である第一皇女アイリス、それから数名の身の回りの世話をする者たちの非戦闘員と、4名の護衛とつけて竜の森へ向かっていた。


 ところがこの車列をこっそり待ち伏せする者がいた。

 それが第二皇子と大臣の二人。

 それから戦闘員20名。

 どうやら第一皇子たちが森の主に会いに行くことを聞きつけ、ここで亡き者にしようとたくらんだようだ。


「ベスパー、首尾はどうだ?今まで何度となく暗殺に失敗しているうえに、呪いまで解いてしまうとは、つくづく強運の持ち主め。」


「は、アルゴ殿下。

 此度はお二人で、わざわざ死地に赴くようなものです。

 森で魔物におそわれたと言ってしまえば何の証拠も残りません。

 これ程のチャンスがほかにあるでしょうか。」


「我が国に皇子は二人も要らぬ。

 我こそが皇子であると認めさせるのだ。」


 アルゴたちは、アルスたち第一皇子一行が森の中に入るのを確認し、背後から襲うつもりのようだ。

 彼らは入り口付近で待っていた。

 どうやら森に入ってから始末するらしい。


 秩序の天秤がその存在を許さず、アルゴの悪意を察知していた。

 秩序の天秤が揺れ始め、魔法陣は警戒の赤い光を放った。


 竜の森は生きているかのようにざわめきたち、敵を飲み込むように霧を広げた。

 悪意ある者たちの排除にかかったのだ。


 森の奥から白い霧が立ち込め、アルゴたちの視界を奪うと今度は様々な幻影を見せ始めた。

 白い霧の中を黒い影が近づき、消えたかと思うと不気味な笑い声。

 アルゴが連れてきた騎士たちは幻影におびえ、森の外へ逃げ出していった。 


 そしてアルゴとベスパー、二人だけが森に取り残された。


 白い霧の中、静かに忍び寄る黒い影、それはネルフたちの包囲網であった。


「さて、いずれの国の貴人とお見受けする。我が森に何用か?」


 二人は恐怖におびえ、腰を抜かしていた。


「いや……我らはただ道に迷っただけの、通りすがりであるよ。」


「そうか、では森には入らぬように。

 よこしまな考えを持つものは、森の主様の怒りに触れるのでな。」


「いいか……覚えていろよ!」


 そうしてネルフが森の外のほうへ戦斧を向けると、一目散に逃げて行った。


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