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竜騎士と秩序の天秤  作者: 竹笛パンダ
第1章 竜騎士と秩序の天秤
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さしいれ

 

「はいはい、お昼ごはんの時間だよ。

 今日は王城からのお遣いが来たのでね、ちょいと豪華だよ。」


 食堂の円卓には王城の料理が並んでいた。

 もちろんこれは、王城からの若者への差し入れだった。

 サポニスたちエルフの一族には季節の果物と野菜。

 肉好きな魔物やドワーフたちには食用に育てられた牛が一頭丸ごと贈られた。


 若者たちは歓喜に湧き上がる者もあれば、懐かしさに涙するものもあった。


 ナギおじさまが、こっそり酒を持ちだしたので、そのまま宴会になってしまった。


「もう、誰だい昼間から酒なんて出したのは。

 これだから呑兵衛どもは。」


 チコおばちゃんもそう言いながら、楽しそうにしている王城の若者たちの様子を見てほっとしている。


 当然午後の授業はお休みになり、お姉ちゃんも羽を伸ばしていた。


 アルスは、仲間の騎士とともにカイルから宴会芸を真剣にならっていた。

 なんでも新人騎士見習の合宿で、先輩として披露する計画らしい。


 しかし、このにぎやかな宴の中に、深刻な顔をしている者がいた。


「エリック、ご苦労様です。

 して、王城はなんと言ってきているのですか?」


「はい、機密事項なので、こちらに。」

 と言って親書をサポニスへ渡した。


「どうやら魔導帝国が動きを見せ始めましたか。

 魔導生命体の大群というのは厄介ですね。」


「ええ、それらを指揮して竜の森の攻略を担当するはずだった指揮官からの情報です。」


「はずだった、とは?」


「アルゴ第二皇子が自ら投降し、捕虜になったとか。」


「ほう、あの皇子も土壇場で人の心を示しましたか。」


「なんでも、大魔導士殿のやり方があまりにも非人道的で、嫌気がさしたとか。

 母親の死をきっかけに、魔導帝国を出奔したとのお話です。」


「では、信頼できる情報であるな。

 ここに情報伝達のため、王の許印もある。

 しかし困ったことになりましたな。」


「と、申しますと。」


「魔導生命体が『生き物を喰らう』というのは、決して大げさではない。

 森の木々すら、奴らの通った跡は枯れ果て、まるで瘴気のごとく、生命を蝕んでいくのだから。」


 エリックは改めて敵の本質に恐怖を覚えた。


「私たちハイエルフが扱う聖属性魔法は基本的に『癒し』と『守り』なのですよ。

 今回のような敵を打ち払うことはできません。

 もちろん強固な魔法障壁を展開して、この森を守ることはできます。 

 おそらく敵は魔力で無尽蔵に生み出せる魔導生命体、この世の理から逸脱した者たちです。

 これには通常の魔法では歯が立ちません。

 物理的な攻撃もあまり意味がないでしょう。」


「では、どうやって戦うのでしょうか。」


「そうですな。そもそもあやつらは死を自覚しない。

 死を恐れるということがない。

 なので、腕を切られようが足を切っても向かってくる。

 生き物のもつ生命力を求めてひたすら前進するのだよ。」


「そんな。成す術がないとは。」


「いかにも、奴らを倒すには、焼き尽くして灰にするか、細かく切り刻むか、聖属性の魔法で完全に消し去る以外に方法はありません。」


「本当に、大丈夫なのでしょうか。」


「いや、こればかりわからぬ。

 だが方法はないわけでもないが、これも定かではない。

 王には、方法がないわけではないが今のところ不確かだ。

 ただ、王都への侵攻はこの森が防衛に当たるとする。

 そう返事をしておいてくれ。」


「はい、承りました。」


「それから、若者たちへの差し入れ、有難く頂戴したともな。」


「はい、お伝えいたします。」


「エリック、次は酒でも一緒に飲もうぞ。

 お互い無事であればの話だがな。

 さて、我らも宴に参加するとしよう。

 早くしないと若者に全部平らげられてしまう。

 特に最近雑食になったドラゴンもおるからな。」


 私は大きなくしゃみとともに、その場にサポニスがいないことに気が付いた。

 きっとエリックと難しい話でもしているのだろう。

 今日はそんなことはお構いなく、チコおばちゃんとお姉ちゃんにはさまれて、みんなでおいしいご飯を食べている。

 チコおばちゃんにお姉ちゃんが王城の料理を説明して、私と一緒にとにかく食べてみる。


「あら、とてもおいしいわね。

 今度は私が王城に習いに行かないといけないわね。」

 そんな冗談を言って笑っていた。



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