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竜騎士と秩序の天秤  作者: 竹笛パンダ
第1章 竜騎士と秩序の天秤
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ラヴィのとっくん

 

「さてお嬢様、シルフとの追いかけっこも終わり、だいぶ飛行の腕を上げられたようですな。」


「うん、大きい体でも、ぎゅ~んと曲がったり、止まったりすることができるようになったよ。」


「では、次の課題です、シルフを背に乗せて、飛んでみましょう。

 私はここからお嬢様たちを打ち落とそうと魔法を撃つので、よけながら飛ぶのですよ。

 その時にシルフを振り落とさないようにするのです。」


「え、サポニスの魔法って、そんなのが当たったら死んじゃうよ。」


「まぁ、お尻が少し赤くなる程度ですかね。

 いやならすべて避ければいいことです。

 ほら、行きますよ。」


「きゃ~ぁ、サポニスずるいよ! 速すぎる!」


「ほほぅ、敵はお嬢様を待っていてはくれませぬぞ。」


 サポニスの魔法は、飛んでいる私たちの背中を後ろから狙って飛んでくる。

 私はそれを旋回して避けるが、背中のシルフを落としてはいけない。

 とにかく夢中でサポニスの魔法から逃れようと必死で飛び回り続けた。

 だって、体に当たると少し焦げたようなにおいがして、ヒリヒリするんだもの。


「どうしました? 逃げているだけではこの私には勝てませんよ。」


「そんなこと言ったって、どうすればいいのかわからないよ。」


「お嬢様、私にお任せを。風魔法で吹き飛ばしてみましょう。

 ですがそれにはサポニス殿へ近づかなければなりません。

 あの攻撃をよけながら、サポニス様の正面に行きましょう!

 そうすれば私の魔法が届きます。」


「うん、やろう」

 と言って空中で大きく旋回して、サポニスに向かっていく。


 サポニスの魔法の弾幕が容赦なく降り注ぐけど、さらに速くサポニスに近づいていく。

 魔法がほほをかすめてもそのまま突撃した。


 そこからシルフの風魔法がサポニスを吹き飛ばそうと発動した。


 その時、

「惜しい、もう少しでしたね。」

 と言って杖でシルフの魔法を消し去った。


「とても素直な攻撃でしたので、正面から向かって来ることも、シルフが魔法を唱えることも全部見通せました。

 もう少し工夫が欲しかったですね。

 とはいえ初めて私に反撃しましたね、よく頑張りました。」


 これって強者の余裕だよね。

 シルフと悔しそうに、そう語るサポニスを見ていた。


「お嬢様の背にアイリス殿下を乗せるということは、『竜騎士』としての第一歩を踏み出すことになるのですぞ。」


「今までは一人で飛んでいたのを、これからは二人の呼吸を合わせなければならないのね。」


「竜と騎士が『一心同体』になることこそが、真の竜騎士なのです。

 ではさっそく明日から、アイリス殿下を背に乗せて飛んでみましょう。」


「え? もう大丈夫なの?」とサポニスに聞くと、

「一度も竜人の姿に戻らずに、戦い続けていたではありませんか。」

 と言ってにっこりしていた。


 私たちが訓練を終え、お姉ちゃんの訓練を見学に行くと、槍術の「月下の槍突」を練習していた。

 以前よりも下半身に力が入り、腕の振り、槍先の動きが洗練されていた。


 そこへサポニスが、

「そろそろいいでしょう。

 アイリス殿下、その飛竜の槍の先端に魔力を込めてみてください。」


「こうでしょうか。」


 そう言うと、飛竜の槍の先端が淡く光った。


「そのまま先ほどの槍術をお願いします。

 ネルフ、お願いしますよ。」


「おう、それでは私が受けますので、遠慮なく打ち込んでください。」


 ネルフはお姉ちゃんとは距離を置いて盾を構えた。

 そこだと届かないよう。


「魔力を飛ばすイメージでお願いします。」

 とサポニスが助言した。


「では、参ります。」


 お姉ちゃんは気合を入れてひと突き、ネルフに向けて槍術を放った。


 すると、飛竜の槍の先端から風の刃が起こった。

 ネルフが大盾で受けるが、後ろに押され、地面に足跡が直線に伸び、体二つ分後退して止まった。


「良い出来ですぞ、アイリス殿下。

 基本がしっかりしたので、技が安定しておりますな。」

 とネルフが褒めた。


「明日はその技をお嬢様の背中に乗った状態で試してもらいますよ。

 それから飛行訓練も始めましょう。」


「はい、頑張ります。

 ラヴィ、よろしくね。」


「うん、頑張ろうね。」


 二人とも笑顔だった。

 初めての飛行訓練に、ワクワクしていた。


 それからアルスと従者の騎士たちとカイルが模擬戦をしているところへ見学に行った。

 アルスと3人の騎士は、連携しながらカイルを責め立てるようにまでなっていた。


「ほお、動きに無駄がなくなり、体が動くようになっているではないか。」


 ネルフが褒めていると、カイルが、

「はい、ここまで。だいぶ様になってきているようだな。

 では明日からは盾をつけて2人ずつ相手をしよう。

 剣の使い方がだいぶ器用になって、速度も上がっている。

 攻撃をかわしながらのカウンターを教えてもいい頃だろう。」


 それぞれが成長している姿を見て、サポニスは満足そうに笑っていた。


 本当カイルやネルフたちの訓練は、遠慮なくやるからきつかった。

 私もたくさん泣かされて、でもそのおかげで強くなった。

 きっとお姉ちゃんたちも、そう思っているに違いない。


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