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プロローグ

突然目の前が真っ白になり、俺は本に顔を押し付けた。


俺はさっきまで本を読んでたはず。目を覚ますと見知らぬ場所に立っていた。


ここはどこなんだ?


周りを見渡すと、自分の身長よりも高い窓があった。

その窓から差し込む陽射しが気持ちいいほどに暖かい。天井には豪華でまるで黄金のように光ったシャンデリアがあった。


それは、いつまでも見続けたいほどの神秘的な光景だった。


少し歩くと、地面には赤い絨毯が敷かれてあった。真ん中辺りの壁にダイニングルーム、書斎、浴室と書かれた地図が貼ってあった。


そこの上には紋章があり、それには見覚えがあった。


…これは! 俺の大好きなあのヒロインが出る俺が何度も読んでいたラノベのイラストに載っていた紋章だ。


鏡を俺は探そうと思ったが、すぐにその場所が何故なのだろう、分かったのだ。


木彫りの壁掛けの丸い鏡を覗いた。俺は後退り、しばらく茫然自失。


1時間経ったかもしれないほど動揺した。

息切れが激しく、頭を掻きむしって、泣きわめいた。


そして自分の置かれた状況を飲み込んだ。俺はこの世界に精神が飲み込まれたのだろうと。


状況を整理して、前向きになろうと決めた。

後ろ向きになろうが、何も変わらないなら…深呼吸をして、記憶を頼りに俺はこれから起こる出来事を思い出した。


この時間、は午後14時か。日付を近くにいた従者に聞いた。


なるほど5月1日か。この日付そうだあの出来事がある。


俺は結婚している。もう少し早い時期に転生していれば結婚は別の人としたかったのだが。


妻は悪役令嬢、その妹がヒロインなんだ。俺は妻と早く別れたい。妹を俺は推しているから。



そこで妻の妹のメイドと揉めることになっている。妻が妹のメイドを処刑台送りにして、妹と本格的に仲違いをし始める。


そこでだ、ヒロインのメイドを俺が救い離婚に持っていく。完璧な作戦だ。


ヒロインのメイドの肩を全面的に持てば、妻も愛想を尽かすはず。


俺は地図を見て確かめて、その場所に向かった。


女性のいい争う声が聞こえた。早速揉めてるな。



「貴女はどちらに従えているのか分かっておいでなの?」


この人物の記憶で分かる、俺の妻だ。


「私は…カレン様にお仕えしています。」


こっちはメイドのイザベルだ。



「はっ? 妹の名前を出すなんて…愚かなの。私に対する裏切りね。処刑を貴女に申し渡します。」


妻が眉間に皺を寄せて、人差し指を突き刺すように、イザベルに向けて言い放った。


俺は彼女の前に立って言う。


「待った。素晴らしいと思わないか? 自分が不利になるのに、仕えているとはっきりと言った! 彼女の忠義は本物だよ。処刑するなんてとんでもない!」



俺はもし死刑にすると言い張るなら、別れると伝えようと思ったが、意外なことにすぐに折れた。


「そうですわね…貴方の言う事に一理あります。私が間違っておりましたわ。今の話は無かったことになさってください。」


花開いたアサガオが、一気に萎むように彼女の表情が沈んだ。



あれれ? 悪役さん、どういう風の吹き回しだ?


どうして急に態度を変えたんだ…俺はその理由が知りたくなって、妻に聞いた。


すると、貴方の言う事に何か間違いがあったのかと、逆に質問されてしまった。


彼女は俺の頬に触れながら、上目遣いで見つめる。その仕草に俺は心臓の鼓動が速くなる音が聞こえてくるようだった。



俺は首を振り、再度質問をした。そうじゃなくて、何故態度を変えたのかとしつこく尋ねた。


夫の前だから、態度を同じ様にしてる貴族がいますかと、拗ねる様に言われた。


確かにいないだろうけど、それは人によっては、腹の立つことじゃないだろうか?



俺の前で態度をコロコロ変えたら、信頼を損ねると忠告した。そもそも俺がいないければ、態度が悪いならそれも問題だと叱りつける様に言った。


別れたがってる気持ちが先行して強すぎる印象を彼女に与えたかもしれなかった。


彼女は考える様に顎に手をやる。



「あと俺に黙って死刑とか、鞭打ちの刑を勝手に決めないでくれるかな? 実行に移す際は、必ず俺の許可を貰うこと。良いね?」


説き伏せるように言った。もちろん反論されれば、更に言い返すつもりだ。


ここで別れ話を使う手もあるが、流石に命のやり取りの話でそれは出さない方が良いと考えた。



「急になんですの? 頭でもお打ちになった?」


打ってないけどと言い、何故そう思ったか聞くと、いつも私のやる事に興味が無いのに、突然その様な事を言われるので、と言われた。


「私に感心がお有りになったのですか?」


正直感心などない。俺の推しと早く一緒になりたい。それだけだ。


それでも、今は夫の身分だし、人が苦しむのを減らせるなら当然、俺は行動する。


「あの、私はもう行っても?」


額に汗をかいたイザベルが言う。緊張で体が震えていた。


当たり前だろう。殺されかけたのだから。


「あら、貴女まだいたのシッシッ、目障りだから行って。」


彼女があしらう様に手を振り、俺の方を向く。


「分かりましたわ、必ず許可を貰うように致しますわ。」


分かってくれたら嬉しいよ。俺が笑顔で言うと、妻もとい、ナタリーが俺の両手を包むように握る。


フフ、これからも何か気になることがあればおっしゃってくださいまし。


…妙だな。俺の知ってるナタリーは、暴虐無人な我儘な性格で、俺の言うことなんてまるで聞こえないかのように振る舞ってたはず。


でもメイドをハエのように扱う仕草を俺は見逃してない。


俺にだけ神対応なんだ。


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