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幕間4「モモが怖いもの」

ローゼアさんが姿を消し、フランがモモをなだめてローゼアを探しに行った後のお話


side:モモ



「フラン様……」



 フラン様に言いつけられた通り、部屋で留守番することになってだいぶ経ちました。

 モモは今、ベッドの上に座って、足をプラプラさせています。




 最初は、モモもお姉さまを探しに行こうって思ってました。

 でも、フラン様の言いつけを破るのも嫌だなって思って。……ただ待つのも嫌で、必死にモモが今できることを探しました。


 宿の人にお願いをして掃除道具を貸してもらって、三人で旅をするようになってからずいぶん慣れた掃除をしました。



 お姉さまとモモの部屋だけじゃなくて、フラン様のお部屋も掃除したけど、掃除はすぐに終わってしまって……。

 それでもやることを探して、旅をするための荷物もまとめました。



 でも、お姉さまが準備する荷物に触るわけにも、フラン様の荷物に触るわけにもいかず……。

 結局、モモがやることは、すぐになくなってしまいました。



 空が綺麗な青空で、お日様が高く昇ったころ。

 モモは、ベッドに座って、体の中を巡っていく魔力と血が全身を巡っていくのを意識することにしました。

 モモが昔からやってる、暇つぶしで、瞑想、って感じでしょうか。

 ただ、モモが魔族なんだって認識できて、生きているんだなって感じられるだけで、あんまり意味はありません。


 ふと気が付いたら窓の外を眺めていて、ぼうっと代り映えしない空をじっと見つめている……それぐらい、なにもありませんでした。


「フラン様とお姉さま、まだかな……」


 誰もいない部屋にモモの独り言がくるくる回って返ってくる。


 余計に一人でいることを感じてしまって、デートの時とも違ってお姉さまが帰ってくるかもわからないんだって思うとソワソワとしてしまいました。


「そういえば、昔もお姉さまが一人で行っちゃうことがあったなあ……」


 足をベッドの上でばたつかせていると、そういえば、と思い出す。



 今とは違いますけど、昔、お姉さまが一人で出かけちゃったときがありました。

 あの時の……雨が降り続いていた穴で住んでいた時を思い出してしまって、ふっと目を細めてしまう。



 だってモモは、あの時から一人でいるのがなんとなく苦手になったんですから。







 昔……まだモモが小さくて、お姉さまと二人で洞窟とかで暮らしていた時です。

 両親は知りません。魔族は、弱肉強食が常で、いつの間にかお姉さまとモモは二人で暮らしていました。


 子供だったから、お金も魔力も無くて、交換する余裕もなかったので、お姉さまが取ってきてくれる魔物を食べれたりするときもあれば、木の実や野草で過ごす日も多くて、大変でした。

 獣魔族の人に追われて、何日もご飯を食べずに隠れていた時もあった気がします。




 そんな、ある日の事でした。

 お姉さまが、ご飯を探しに行くって言って、モモを残してどこかへ行ってしまいました。





 洞窟の端で降り続ける雨を眺めて、今みたいにぼうっとする。

 気が付いたら、お姉さま何日もお姉さまは帰って来ませんでした。



 捨てられちゃったのかな、とかお姉さま……お姉ちゃんは死んじゃったんだなとか。

 色々考えて、お姉さまはもういないんだなって考えると、すごく寂しくなったのを覚えています。


 何日も、何日も、何日も………………。

 モモは、ずっと一人でお姉さまを待ってました。


 だから、お姉さまが帰ってきてくれた時は、すっごく嬉しくて、泣いちゃいそうになりました。

 モモは捨てられたんじゃないんだ、お姉さまが死んじゃったんじゃないかって、ほっとしたのを覚えてます。


 でも、その時のお姉さんは角が折れてないのが奇跡だってくらいボロボロでした。

 腕は血だらけで擦り傷も、切り傷も……青あざもいっぱいあって、這う事が出来るのも不思議で……。

 両脚も骨が見えるぐらいにぐちゃぐちゃになって、どうして生きてるのか分からないくらいボロボロでした。


 魔族は魔力と命さえあれば、時間をかけて体を直すことは出来ます。なので、魔力不全という病気や、魔力を封じる武器とかで切られない限り、大事には至りません。

 だけど、帰ってこなかった可能性もあったって考えて、嬉しくてたまっていた涙が、ポロポロって零れました。



 初めて、これが怖い事なんだなって思いました。




 後で、色々聞いてもお姉さまは大丈夫だって言って、何も教えてはくれません。

 最近になって、ようやくご飯を探しに行ってすぐ崖に落ちて、魔力を使って回復して無理やり這って帰ってきてくれたって教えてくれました。



 あの時から……お姉さまがどこかへ行くと、モモはソワソワするようになっちゃいました。





 ベッドの上、気が付くと、ベッドシーツを指先で擦って、体をなぞって唇に当てる。

 でも、今日はフラン様も一緒だ。

 また、目を細めて、洞窟に住んでた時と同じみたいに窓の外を眺める。



 あの時とは違って、雲があんまりない空と町が広がっていました。



「まだ、かな」


 そろそろ、魔力の流れを感じていても暇になってきてしまいました。

 首元の……お姉さまの首輪と無理やりお揃いにしたチョーカーに触れて、きっと、お姉さまを見つけてくれるフラン様に、思いを馳せるのでした。




 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 他物語でも登場するフランの、外伝的な物語として、楽しんでいただけのなら幸いです。


 少し中途半端な場面ですが、一冊分の区切りが良いのがここしかなかったので、書き貯めていた投稿分は終了します。





 少しでも面白い、続きが読みたいと感じていただけたなら、↓にある☆を増やしたり、投稿待ちとしてブクマをしていただけると、続きを書く際の指標や優先順位、今後の活動の指標になりますので、よろしくお願いします。


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