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第九話 インターネット

「う、うーん……」

目を覚ますと、目の前には心配そうなシズネと、相変わらず気だるげなアミーダがいた。

「チャリオネちゃん、大丈夫?」

「えっと、私は一体……」

「三十分くらい、気を失ってたよ。どしたの?」

「ちょっと、箒が暴走しちゃって……」

「まったく。シズネさん、あんたが無理言うからだよ」

「ごめんね、ほんとに!」

シズネは、手を合わせて謝った。

ところで、周囲を見渡す限り、私たちは相変わらず屋上にいる。

二人とも、三十分間もここで私が目を覚ますのを待っていたんだ。

「もう、大丈夫ですので。早く行きましょう」

私はそう言うと立ち上がり、屋上の扉を開けようとした。

「ん?」

開かない。

押しても引いても無駄だ。びくともしない。

「鍵がかかってるみたいね」

シズネは、横から覗き込んで言う。

「鍵を開ける魔法とか、使えないの?」

鍵を開ける魔法?

これも一年生の一学期に習う程度の、極めてシンプルな魔法だけど、私には使えない。

「どいてなよ」

アミーダはそう言うと、思いっきり扉に蹴りを入れた。

ガチャン!ガチャン!

しかも、連続して。

「ちょっと、何やってるのアミーダちゃん?」

「何って、扉壊さなきゃ行けないでしょ」

「アミーダちゃんも、鍵を開ける魔法は使えないの?」

「使えるけど、一々めんどくさいなーって」

「でも、壊すのはちょっと……」

ガタン!

シズネがそう言い終わるか終わらないかのうちに、扉は音をたてて倒れた。

「ほらね、簡単でしょ」

アミーダは、中に入ってのんびりと階段を降りていく。

「魔法使いにも、いろんな人がいるのね……」

「彼女はちょっと、特殊なので……」

それはもう、ほんとに。


私たちが階段を降りると、そこには何とも言えない光景が広がっていた。

謎の大型の機械が多数ある売り場もあれば、野菜などの食料を売っている場所もある。

「布団の売り場は、どこだったかしら……」

「あの、すいません」

私には、一つ提案したいことがあった。

「何?」

「私たち、この世界のこと、何も知らないですよね。何か、この世界のことを知れるような物って、ありませんか?」

とても、重要なことだ。

このままでは、あまりに語彙力が足りなさすぎる。

それに、一々シズネに聞いていても効率が悪い。

「そういうことなら、インターネットを使えばいいのよ」

「インターネット?」

「インターネットには、たくさんの情報が載ってるの。気になったことを一つ一つ調べていけば、この世界について理解が深まるんじゃない?」

「そのインターネットという物は、どこで売ってるんですか?」

「インターネットは物じゃなくて、特別な機械を通して閲覧するものよ。そうね……、例えばパソコンなんかいいんじゃないかしら」

「パソコン……ですか」

「ちなみに、布団のこだわりとかはあったりする?」

「特にないですけど」

「あたしもないわ」

「じゃあ、パソコンと布団は私が買ってきてあげるわね。その間、ここで待っててくれる?迷子にならないようにね」

シズネはそう言うと、機械の売り場の方に足を向けて行った。


「お待たせー」

三十分くらい経っただろうか。

シズネは、大きな袋をたくさん台に乗せて戻ってきた。

「ずいぶん、大量だね」

「うん。どっちも大型の物だから」

「じゃあ、帰りましょうか」

私たちは、シズネの荷物を分担して担ぎながら、家路についた。


さて。私たちは今、パソコンを開いてインターネットを見ている。

私もアミーダも、パソコンの使い方は一通りシズネから教わったところだ。

「何を調べればいいのかしら」

「試しに、『布団とは』で、調べてみたら?」

「そうですね」

私はシズネの言った通りに、文字を打って検索してみた。

すると、画面にたくさんの情報が出てきて、大文字で『寝具』と出てきた。

「ああ、こういう感じなんだ」

「そうよ。これで気になったこと、どんどん調べてみて」

シズネはそう言うと、立ち上がって何かを準備していた。

「どこか、行くんですか?」

「今日、ほんとは仕事だったでしょ。さっき学校に連絡をとって、今から行くって話になったのよ」

「お時間とらせて、本当にすみません。あと、お金も」

「ううん、気にしないで。私がしたくてしたことだし」

「では、いってらっしゃいませ」

「はい、行ってきます」

シズネは微笑むと、コートを羽織って出て行った。


「さて、寝るか」

アミーダは、畳の上に寝転がった。

「ちょっと!この世界のこと、勉強しないと」

何言ってるの、この人は。

「あー、あたし勉強とかめんどくさいの嫌いなんだわ」

「でも、生きていくのに困るじゃない!」

「ま、何とかなんでしょ。シズネさんもいることだし」

アミーダは欠伸をすると、私に背を向けていびきをかいて眠ってしまった。

「はあ……」

本当にやる気がないのよね、この子は。

まあいいわ。私がこの世界の知識をマスターすれば、特に問題ないもの。

私は、このインターネットで、この世界の情報をたくさん仕入れるべく、文字を打ちまくるのだった。









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