門出
馬車に揺られながら昨日見た夢のことを考えていた。似たような夢を昔にも見た気がしたがあまり覚えていない。確か見たこともない建物の中で、ちょうど今の俺と同じくらいの年の奴が数人いて全員が変な服を着ていて...そしてなぜか死ぬ。そこで夢は終わる。他にはどんなことがあったっけ。起きてからすでに1時間以上経っている。それ以外のことは頭の中に靄がかかっているようで思い出せなかった。昨日神父に言われた小言も半ば忘れかけていた。
それにしてもこのあたりはまだ風が冷たい。やはりもう少し厚手の服でも着てくるべきっだったか。いや、どうせ向こうに着けば暖かいだろうし邪魔になるだけだ、と思い直した。そんなことを考えているといつしか彼は眠りについていた。
今年で18になった主人公は今日、故郷である村を出て王国の冒険者になることに胸を高鳴らせていた。
冒険者で生計を立て、独り立ちし、行ったことのない場所へ冒険する。それを目標に今日まで鍛錬を積んできていた。幸い彼には剣の才能があった。それもかなりの。彼は用心深かったがそれでも今回の門出は楽しみにしていることが多かった。一つ気がかりなことをのぞいて。