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憎悪騎士シリーズ

醜悪な姫と憎しみの騎士R2

作者: リィズ・ブランディシュカ



 俺は、幼い頃から憧れの騎士になるために、血のにじむような努力を重ねてきた。


 子供の時、国の記念日に広場を整然と行進する騎士達がまぶしくみえたから。


 だから騎士になりたいと思って、毎日様々な努力を重ねてきたのだ。


 魔物を倒したり、指名手配犯とやりあったり。


 自警団として活動して実績を積んでいった。


 そして、数年後、その努力は実った。


 実力を認められた俺は、騎士になる事ができた。


 騎士は、国の誇りだ。


 一握りの実力ある人間しかなれないエリート。


 俺は嬉しかった。


 しかし増長などはしたりしない。


 騎士になった俺は、さらに高みに上るべく努力をかさねていった。


 幸いにも成長期だったのだろう。


 力はどんどんのびていった。





 それから三年後、姫の護衛を任されるまでになった。


 その時の俺は、なんて名誉な事だろうと思った。


 国の頂点にいる者を守る。


 それ以上の名誉などそうそう存在しない。


 だから俺はめったにないほど浮かれていた。


 俺が仕える姫はさぞかし素晴らしい人間なのだろうと、何の脈絡もなく信じていた。


 しかし、姫は醜悪だった。


「こんにちは! 初めまして素敵な騎士様! 貴方は私を守るために騎士になったのね」


 その姫は自分を中心に世界が回っているのだと考えるような人間だった。


 国の中で唯一の姫。


 王の一人娘だ。


 おそらく今まで、甘やかされて育ってきたのだろう。


 境遇には同情できる。


 しかし、俺は自分の努力を、思いを踏みにじるその言葉が許せなかった。


 理屈ではなく感情が、姫を許せないと判断していた。


「パーティー会場の皆が私をみているわ。私の様になりたいのねきっと」


「蝶が手元のお花にとんできたわ。私がお姫様だからきてくれたのかしら」


「誕生日にこんなにたくさん贈り物をくれるなんて、皆が私を愛してくれてるわ」


 なんてお花畑な思考なのだろう。


 泥水をすするような思いをして強くなった俺には受け入れがたい思考だった。


 お姫様だから。


 立場があるから。


 だから周りの人間は、お姫様に都合のいいように行動しているにすぎない。


 けれど、そういった事情を姫は理解していないようだった。


 自分が素敵だから、愛されている。


 自分が可愛いから、何もかもが望み通りになっている。


 それはなんと傲慢な考えなのだろう。


 だから、俺はだんだんと姫の事が嫌いになっていった。






 そして運命の日が訪れる。


 他の国が侵攻してきた時、俺は姫とともに逃げ延びた。


 けれどそれは、その姫を生き延びさせるためではなかった。


「どうしてこんな事をするの? もしかして私を愛していて、独り占めしたいと思ってるの?」


 逃げ込んだ洞窟の中。


 人里離れた場所。


 最後まで傲慢な姫に俺は剣をつきつけた。


 ここなら、誰にも見られない。


「いいえ、俺は貴方の事が大嫌いでしたよ。さようなら傲慢な姫」

「ああ、私の美貌があなたを狂わせてしまったのね、かわいそうに」


 かわいそうなのは姫だった。


 お姫様は最後まで、俺の気持ちを理解する事がなかった。



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