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第20話 自宅でお料理勉強会をしよう




 改まった駿平からそんな言葉があった次の日、早速秋人のアパートの部屋でお料理の勉強会をすることになった。


 あの後詳しく駿平から話を聞くと、どうやら体調が悪く寝込んでいた間に幼馴染である東雲が毎日様子を見に来てくれていたようで、そのお礼がしたいということだった。会ったら即言い合いを繰り広げる二人だが、こういうところは律儀というか、殊勝な心がけである。



「いやぁ、悪いな秋人。本当なら俺ん家でするべきなんだろうけど、なにぶん実家暮らしだし母ちゃんが全部仕切ってっから気軽に台所は使えねえんだよな」

「あはは、気にしなくて良いよ。ちょっと古風だけど、台所って女の領分なイメージがあるからねぇ」

「そうそう。良かれと思って洗い物したり調理器具とか食器を片付けたら、配置が違う!って怒られたり……」

「なら今回はオーブンとか使うお菓子作りだから、尚更こっちの方がいいかもね」

「すまねぇ、恩にきる」



 手を合わせながら若干の申し訳なさそうな表情を浮かべる駿平だったが、秋人は気にしなくて良い旨を伝える。


 料理は料理でも今回はお菓子作りの方。勝ち気な性格をしている東雲だが、その実甘いものや可愛いものが好きなのだそうだ。


 一通り基本的な料理であれば何でも作れる秋人の意見としては、料理初心者にはお菓子作りはハードルが高い。なので一度駿平に駅近デパートなどの市販品のお菓子を購入して渡したらどうかと提案してみたのだが、気持ちがこもっていないみたいだからと却下されてしまったのだ。


 市販品だから気持ちがこもっていないとでも言いたげな駿平の言葉に少々複雑な気持ちになった秋人だが、お礼がしたいという彼なりの真っ直ぐな思いに間違いないようだ。本人は借りを作りたくないだけ、と言っているが、きっと照れ隠しだろう。


 彼の性格からして素直に母親に料理を教えて欲しいと言うのはなかなか難しいだろうし、とはいえ料理初心者が一人でいきなりお菓子作りを挑戦するのも危うい。ならば料理に慣れた秋人の自宅で料理の勉強会をしつつ、駿平の幼馴染である東雲へプレゼントするお菓子を作ろうというのが今回の顛末だった。



(ま、頼ってくれるのは素直に嬉しいよね)



 今回作るのはメレンゲクッキー。サクサクとした甘い食感で口溶けがふんわりとした、特に難しい作業工程がなく手軽に作れる簡単なお菓子である。これならばきっと料理初心者である駿平も飽きずに作りやすいだろう。


 既に必要な食材をスーパーで揃えていた秋人たちはさくら荘へ向かうべく歩みを進めていた……のだが、一つだけ気になる点があった。



「ところで()()()()。本当によかったの?」

「ん、よかったって?」

「あぁいや、女の子の意見を貰えるのは助かるんだけど、色々予定とかあるんじゃ……?」

「ううんっ、気にしないで平山くん。今日は全然大丈夫だから」

「そ、そっか。よかった」



 ふわり、と花が咲いたような笑みを浮かべる三嶋にそのように返事を返す秋人。どうして今回のお菓子作りに彼女が同行しているのかというと、昨日の教室での件がきっかけ。

 駿平が素直に東雲にお礼を言った直後に、互いに照れ隠しだったのかまた言い合いが始まったのだ。またかと呆れつつ、その合間に三嶋へお菓子作りのことを話したら私も参加したいとの言葉があったからだった。


 妹である鈴華へというならば入れ物の好みは熟知しているのだが、今回は駿平から東雲への贈り物。ちょうどラッピングはどうしたものかと悩んでいたので、同じ女の子である三嶋が一緒にいるととても心強い。

 そういった事情もあり、秋人はありがたく彼女の申し出を受け入れたのだった。



「…………むしろ役得というか、ありがたいというか」

「え、なんか言った? 三嶋さん?」

「う、ううんっ! これから平山くんのお部屋に行くの楽しみだなぁって思って!!」

「そ、そう? 引っ越してきたばかりだから特に変わったものはないけど……?」



 少々足早になりながらるんるんと上機嫌な雰囲気を醸し出す三嶋にこてんと首を傾げる秋人だったが、急に首元に腕を回してきた駿平に耳打ちされる。



「おいおい秋人、もうちょいラノベを見て勉強した方がいいぞ」

「読んでるけど……?」

「そういうことじゃないんだよなぁ。こりゃ先が思いやられるぜ」



 やれやれ、とでも言いたげな表情を浮かべる駿平に思わず肘鉄を喰らわせたくなった秋人だったが、グッと我慢。


 今回のお菓子作りを一緒にするお礼として今度学食を奢ってくれる約束なので、一番高い物を注文しようと心に決めながらアパートへ向かうのだった。

 




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