第四話
「嬢ちゃん、大丈夫かい?」
アモンは盾の内側に匿った少女に声を掛けた。
少女は何か小包を両手で抱えて、目の前に山のようにそびえるアモンを見上げ、ウンウンと何度もうなづいた。
「よし、じゃあこの盾の内側の、そう、そこ、窪みがあるだろ、そこに足を引っ掛けて、お兄さんにしがみつくんだ。」
そう言うと、視線を女将に戻した。
「一体、今のはなんだったんだろうね。あ、アモンちゃん、お会計ね。パイナップル一個で5,000ベルタにしといてあげるよ」
アモンは腰の袋から1,000ベルタ硬貨5枚取り出し女将に渡した。ほぼ同時に背中側に少女の体重がかかるのを感じた。
「よし、これで買い物も済んだし、宿に戻るか。奥さん、ありがとね、また来るよ」
そう言うとアモンは両手と荷物とで少女が見えないように位置を調節し、リンシャの待つ宿屋へと戻った。
二人の寝泊まりしている宿は、肉屋兼宿屋の二階、通りに面した部屋だった。他にも宿泊客はいたが、ほとんどは数泊で、二人の様に何週間も泊まっている客はいなかった。二人は狩った獣を店主に売って、そのお金で宿に泊まっており、お互い持ちつ持たれつの関係だった。この日のホワイトバッファローもなかなかいい値段で買い取ってくれており、リンシャは上機嫌だった。
「兄さん、おかえり。おやっさん、80万ベルタで買い取ってくれたよ」
アモンが部屋に入ると、リンシャの大きな声がした。
「おお、それはよかった。お前の好物も買ってきたぞ」
アモンは左手に下げたパイナップルの袋を前に掲げるとリンシャに見せた。
「ありがとう、兄さん、夕食の準備を始めよう」
リンシャがアモンから袋を受け取り、テーブルの上に置いて中身の確認を始めようとした。
「ちょっと、その前にこの子をみてくれ」
アモンはマントを捲ると、盾の内側に足を引っ掛けてアモンにしがみついてる少女を見せた。
「えっ?えっ?何?誰?どうしたの?」
リンシャは驚いて、言葉に詰まりながらも聞き返した。
「実はな、さっきそこで変な男に追われていたのを咄嗟にかくまったんだ。で、そのままにするのもかわいそうだから連れてきた」
アモンは笑いながら言った。
「連れてきたって、兄さん。少女誘拐になったりしないの、どうするの、大丈夫なの?」
「あ、そうか、あまり深く考えなかったわ。すまん、すまん」
アモンは少女の方を向くと
「で、どうかな、これは誘拐になるかな?」
少女に尋ねた。
「兄さん、なに馬鹿なことを言って・・・」
リンシャが言いかけると少女が遮った。
「ううん、ならないよ。助けてくれてありがと」
怯えながらもはっきりとした声で答えた。
「だってさ、リンシャ。少女誘拐にはならないって」
リンシャの方を向いて言った。
「はあー、もう、そう言う事じゃないんだけど・・」
リンシャは頭を掻きながらアモンの能天気な性格を考えると、この件はこれでおしまいにするしか無かった。
さて、謎の少女との出会い。これから物語はどう動いていくのか。
この後書きには何を書いたらいいのか。
三日坊主にはならなかった事を祝して?次話に続く。