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第二十話 オウル老人

「叔父さん、間一髪でしたね」


 オリバーは老人と向かい合わせに座り言った。


「オリバー、無茶しやがって。もう駄目かと観念しとったが、お前達のおかげで助かったよ」


「お礼なら、このアモンと、あっちのリンシャに言っておくれ。叔父さんを助けに行くって言った時、二人がどうしても着いていくって言うし、二人のおかげで処刑寸前に助けることが出来たのだからね」


 オリバーはそう言うと、荷台で後方を警戒しているアモンと、トラックの横を並走しているバギーに乗ったリンシャを示した。


「お前さん達、ありがとうな。おかげで命拾いしたわい」


 アモンは振り返ると答えた。


「いえいえ、俺たちもあの節はあなたに助けていただいたので、その御恩に報いたいと思って来たまでです」


「いやぁ、それにしてもマスケット銃が弾き飛んだのは、どんな手を使ったんだ?」


「あれはリンシャが撃ったんですよ。ノーザリアの西の入り口から」


「なんじゃと、地方庁舎はノーザリアの東地区にあるんだぞ。1km以上ある距離をあんなに正確に撃ったと言うのか!」


「ええ、リンシャの銃の腕前は非常に素晴らしいです。我々の仲間の誰よりもうまい。常人では想像できないほど正確に撃つんですよ。おかげでおじさんの処刑に間に合いました。私たちがノーザリアについた時には処刑開始の空砲がなっていました。そこから地方庁舎の方を望遠鏡で覗くとまさに処刑されようとしていました。そうしたら、彼がスコープ付きのライフルで射撃したんです。ノーザリアの西の入り口と地方庁舎、処刑場が一直線上で助かりました」


 オリバーが言うと、老人はひとしきりリンシャを褒めた。

 リンシャはバギーの上から老人に向かってピースをして見せた。


「アモン殿も素晴らしい身体能力の持ち主です。あの大盾を軽々と扱い、飛んだり跳ねたり、盾での剣の受け流しも非常に上手です。アモン殿がいなければ、私だけではあの女剣士から叔父さんを守り通せたかわかりません」


「そうじゃな、あの赤髪の剣士。なかなかの腕前じゃった。突きは鋭いし、一つ一つの動きが次に繋がっておった。お前の剣捌きじゃすぐに串刺しじゃったな」


「叔父さん、きつい一言を。しかし、アモン殿もいなければ助かりませんでした」


「改めて礼を言おう、アモン殿。おかげで命拾いしたぞ。それにしてもあんな大きな盾をよくも扱い切れるもんじゃ」


 老人に言われ、アモンは後方に追手か来ないことを確かめると向き直し座った。


「いえいえ、この盾は見た目ほど重くないんですよ。他の鉄製の盾と比べて明らかに軽いんです。あまり人には触らせないんですが、ちょっと持ってみますか」


 アモンはそう言うと、盾を外し足元に置いた。

 老人は盾に手をかけ少し持ち上げてみた。


「どれどれ。なるほど、見た目ほど重くは無いな、この手触り、チタンか」


 そう言うと、老人の目つきが変わった。


「チタンか、そうか。この大きさ、なかなか作れるもんじゃないな。この形は。そうか」


 独り言をぶつぶつ言いながら、盾を触っていた。


「ところでアモン殿、この盾をどこで手に入れたのかな」


 老人は先ほどまでとは打って変わった、厳しい目つきでアモンを見た。


「これは私達の育った教会の神父さんが、旅立つ時にくれたんです。なんでも私達が幼い頃、旅人が私達を預ける時に一緒に預けたものらしく、大きくなったら渡すように頼まれていたとかで」


 それを聞くと老人の目が輝いた。


「それは誠か。もしそれが本当なら!うん、うん。まだ早い。確かめなくては。おい、オリバー。このあとどうするんじゃ。追手も直にくるだろうから、ちゃんと手筈は整えているんだろうな」


 老人はやや興奮気味にオリバーに言った。


「はい、叔父さん。今頃別働隊がエルバンス教会を処分している頃だと思います。私達はこれから太陽が沈んだ後、二手に別れて逃げます。叔父さんとアモン殿たちで徒歩でクルノーの森を目指してもらいます。私達は日が明けたら、この2台の車を目立つように処分してから後を追います」

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