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第十六話 世界大戦とオオトリの乱

今回は世界観の話になります。

「我々が知っているこの世界の歴史の話をしよう」


 グッドマンはそう言うとゆっくりと語り始めた。


「昔、そう世界大戦前の事だ。この大陸には数多の国があった。科学技術も今よりはるかに発展していたという。人々は今よりも大勢いて、道路は車が行き交い、街中電気で作られた光が灯っていた。遠い場所と話をすることが出来たし、人を乗せて空を飛ぶ乗り物があったり、港には大型の船がひっきりなしに入港していたそうだ。中には空を突き抜けて、天、そう太陽のある天空まで物を打ち上げていた国もあった。


 そんな国々が微妙なバランスの上で生存しており、小競り合いはあったが、何百年と平穏な時代が過ぎていった。


 ある時、海の向こうにあるグルジニアという巨大な国が全世界に戦争を仕掛けてきた。これが世界大戦だ。


 当初、グルジニアは戦線を広げることが出来ずにいた。何せ一国対世界だ。いかに準備していたとしてもあまりにも相手が大き過ぎた。しかしある有能が人物が将軍になったことで戦局が動き始めた。それまで世界が一致してグルジニアに対抗していたのだが、巧みにその間に割って入り、連携が崩れ始め、個別に撃破されたり、仲間討ちを始めたりして、徐々にグルジニアに支配される国々が増えてきた。


 かつてこのイシュタリアの地にあった国は最後の最後まで侵略を防いだが、ついにはグルジニアの前に屈してしまったのだ。


 そこからグルジニアの支配が始まった。

 支配と言っても直接支配するのでは無く、まず宗教を作った。それがエルバート教だ。エルバート教を全世界で広め、世界の各地で教会が支持する者を王として王国を作った。人々を直接は王が支配し、それを裏からエルバート教、すなわちグルジニアがコントロールするという構造を作り上げたのだ。表面的には王国と教会とはあまり仲が良くないように見えるが、実態は教会が王を支配下に置いているという状態だ。


 それで、エルバート教は太陽を信仰対象にしているな。この天にはいくつもの人工衛星というものが飛んでいる。はるか上空だ。それらが常に地上を監視しているのだ。地上をつぶさに監視し、不穏な動きがあればそれを潰す。それで世界大戦後、三百年の間、反乱はほとんど起きていない。夜、外を出歩いてはいけないというのも、暗いと人工衛星から地上が見えなくなるからというのが理由だ。


 また、エルバート教は科学技術を徹底的に潰した。必要最低限のもの以外は排除し、新たに自分たちに歯向かうような科学技術が育たないように監視している。


 エルバート教は教会への寄付と称して、多額の寄付を集めているが、あれも民衆が過度な富を持たないように徴収しているのだ」


 グッドマンは一気に話した。ここで一息入れると、テーブルの上の紅茶を一口のみ先を続けた。


「さて、次はオオトリの乱だ。これはお前たちも知っていると思うが、イシュタリアにあった名家『オオトリ家』の反乱だ。先ほど反乱はほとんど起きていないと言ったが、これは反乱が起きた稀なケースだ。


 おそらく教会からオオトリ家が教義に反したことをして、教会に責め立てられた末に起こした反乱と教えられていると思うが、事実は違う。教会からの重い寄付の徴収に度々意見を言っていたオオトリ家の当主だったが、ある年、異常天候で農作物が凶作になった。民から寄付の農作物を取り上げては民が生きていくことが出来ない、と教会に懇願したのだが、教会は聞く耳を持たず、頑なに寄付を要求してきた。オオトリ家が徴収出来ないのなら教会が代わりに徴収すると言われた。そうなるとまずい。そこで人民思いのオオトリ家当主は反乱を企てた。


 普段なら反乱を思い立ち実行に移す前に教会側の知る事となるのだが、人望の厚い当主は周囲の助けもあり、秘密裏に進め、反乱蜂起に成功した。


 イシュタリアの約半分の領主が仲間に加わった反乱は、一時、王国首都の城下まで迫る勢いだった。しかし、グルニジア本国から救援が来てしまい、激戦の末、失敗に終わってしまった。


 オオトリ家はお家断絶。仲間も重い処分を受け、領地と家名の没収がされた。


 その時一緒に戦ったのが、わしの親父だ。親父はオオトリの当主と仲が良くてな。反乱を起こす時、真っ先に飛んで行ったそうだ。それで反乱に敗れて、わしらイーグル家は処分されて、あちこちをさすらっている内にこの世界大戦時の基地を見つけて、教会に対抗する時期を見計らっているのだ!」


 最後の方はやや興奮気味になり、ついつい大声になってしまっていた。


「いや、すまんすまん。つい興奮してしまった。それでこの基地、オオトリ本部と名付けたが、ここはすごいぞ。この山丸ごと要塞になっていてな、発電設備から工場、居住区、農業もできるようになっておる。コンピューターと言ってわしには何がなんだかわからんが、エドガー、あ、ここの技術主任だが、彼が言うにはなんでも出来てしまうそうだ。何よりこの山脈は常に雲がかかっているので、例の人工衛星から覗かれないのがいいんじゃ


 と、まあ、一方的に話してしまったが、質問も色々あると思うが、いつでも聞いてくれ」


 グッドマンはそう言うと、話を終わりにした。

継ぎはぎな科学技術はグルジニアが必要最低限のもの以外を潰したため。

夜、外を歩いてはいけないのは人工衛星から見えなくなるから。

かつて存在した名家「オオトリ家」。彼の仲間であったグッドマン=イーグルが今も反旗を翻す機会を窺っている。

そんな彼らに転機が訪れようとしていた。

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