第十二話 西へ
「さて、話もまとまったことじゃ、さっきの部屋に戻ろうか」
四人は先程いた部屋へと移動した。
「山脈への行き方じゃが、注意することがいくつかある。まず、日の登っている間は移動してはならん。『空の目』に見つかってしまう。二つ目にトラックは置いていくこと。とてもトラックが通れる道はこの先ないからな。三つ目には『影の者』に出会ったらこの荷物のハンコを見せることじゃ」
老人は前に出した右手の指を一つずつ立てながら話した。
「『空の目』とか『影の者』とかは何なんですか」
アモンは当然の質問をした。
「詳しい話をしている時間はないのじゃ。『影の者』は会えばわかるじゃろう、こちらから信号を送っておく。迎えに来てくれるはずじゃ。『空の目』については向こうで聞いてくれ、色々教えてくれるじゃろ。お前さんらは夜が明ける前にここを離れなくてはならん。とにかく時間が無いんじゃ。食料や必要なものは下の倉庫から持っていっておくれ」
老人は立ち上がると部屋の片隅にある本棚へと歩いていった。そこにある本を何冊か退けると奥にボタンがいくつも見えた。そのボタンを決まった手順で押すと、三人の方を振り向いた。
「さて、下へ降りるぞ」
老人に従って先程来た階段をおり、聖堂へと戻った。
すると聖堂の一角の床がズレて開いており、地下へと続く階段が現れていた。
「ここを降りるぞ」
老人は階段を降りていった。階段の先には明かりが見えた。それは揺らぐ炎の光ではなく、一定の明るさで光続けるライトであった。
地下の部屋に入ると倉庫になっており、天井には電気で光る明かりが点いていた。
「なんでこんなところに電気が・・」
アモンがつぶやいた。
「細かいことは向こうに行ったら聞いてくれ。とにかく時間が無いんじゃ。こっちに食料、そっちに日用品、あっちに旅に必要なもの、大抵のものはここにあるから、必要なものを持っていっていいぞ」
そう言われ、三人は各自必要をそうなものを集めた。
アモンは主に食料と野宿用品、ハナは食料に自分の着替えを準備した。
リンシャは奥にある銃器のコーナーに行った。そこの弾丸のストックを見て驚いた。
「え、これって『ブルーローズ』?何でこんなに沢山、しかも狙撃弾から拳銃用まで、ほんとにこれ持ってっていいの?」
まるで欲しがっていたおもちゃを目の前にした子供のようにはしゃいだ。
「もちろんだとも。お前さんが使う分持ってっていいぞ。こういう時のために貯めてあるんだからな」
そう言われると、自分の銃の銃口にあった弾丸をできるだけ多くカバンに入れた。
「さてそろそろいいかな、お前さんら、先に上がってくれ」
老人は一番最後に倉庫を出ると、倉庫の入り口のボタンを押した。すると音がして倉庫の扉が閉まり、ピー、ピーとどこからか電子音がした。
「ほれ、ささっと登れ」
三人が先に聖堂に出、最後に老人が出ると、音はピ、ピ、ピと小刻みになり、最後にピーと長くなルト、聖堂の床が元に戻った。
「さて、今度は馬小屋に行くぞ、お前たち、馬は乗れるな」
老人は急かすように先に行った。
厩舎には馬が数頭おり、そのうち2頭を引いてくると鞍をつけた。
「ほれ、これに乗りなされ。そしたら、この子たちに身を任せれば、小一時間ほどで洞窟に着くはずじゃ。そしたら、この子たちは解放してやってくれ。その洞窟を進むと、出口が森になっておる。そこまで行けばひとまず安心だ。そこからは森の中を歩いて、あの白い光の場所を目指してくれ。大体の方角が分かれば大丈夫じゃ。『影の者』が迎えにい来てくれる」
老人はそれから道中の道の様子や、森の中での注意事項を話した。
「準備ができたら出発じゃ。暗いうちに洞窟まで着かなくちゃならんからな」
そう言われ、アモンのの前にハナが乗り、リンシャは一人で乗った。
「何だか分からないけど、ありがとうございました。ご老人は一緒に行かないのですか」
「わしはここに残って、やることがある。追手の連中にはうまく言っといてやるから時間は稼げるはずじゃ。だが、油断はするなよ、相手はお前らが思っているような教会ではないのだからな。くれぐれも明るいところでの行動は慎むようにするのだぞ」
老人はそう言うとアモンの乗っている馬の尻を引っ叩いた。
とにかく急がせる老人。暗いうちに出発して日が登る前には洞窟に着かなくてはならない理由は。
電気の通っている教会の地下、大量の最高級闇弾丸『ブルーローズ』。この教会の役割は何なのか。この老人の正体は。




