JOINT
「にしても…親父がその時使ってたのは戦核の試作型だよな?」
「うん。現行の戦核よりも大きかったし、きっと出力や取り回しも今より難しかったと思う」
俺たちは当然戦核に詳しいわけじゃあないが、それでも開発初期段階の戦核で戦い抜いた親父の腕はやはり只者じゃないと思う。
「もっと戦核を使いこなせるようにならねぇとな。それがさっき森の言ってたことに繋がるだろうしな」
そう、今はただでさえ知識が足りない。
「鈴鹿でいいよ」
森は優しく笑いかけてきた。
なんつーか…すげぇグッとくる…
女の子に優しくフレンドリーに来られると何とも言えないモヤモヤに包まれるような気がすんだよな。
「お、おう…鈴鹿…」
「私も天磨くんって呼ぶから」
鈴鹿はなんだか嬉しそうに言ったんだ。
休み時間が終わり、いよいよ初めての授業が始まる。確か「戦核基礎」だったか?いきなり有益そうな内容じゃねぇか。
生徒たちは息を呑んで授業の開始を待っていた。
「お待たせーーーー!!」
ガラガラっと音を立ててひとりの女教師が教室へ入ってきた。
なるほど、いかにもマニアックな技術者って雰囲気の人だ。
「はじめまして諸君!ワタシは平賀錦だよ!戦核基礎を担当するよーーん!」
めちゃくちゃ元気な人だ…
「突然だけど君たちは戦核についてどれだけ知っているかなぁ?…ん!きぃみぃ〜〜〜!!織田天磨くんじゃなぁい!!!?」
げっ…目が合った…
「何ですか…?」
「君の戦核には個人的にめちゃくちゃ興味があるんだぁ〜〜!それは君が思っている以上の可能性を秘めてるんだよーー!?」
「はぁ…そうなんですか?」
「当然!!いいかい!?そもそも戦核というのはね…」
平賀先生は興奮しながら何やら黒板に書きつけていく。
「召霊」「縁」「御魂」「具現」「言霊」
……知らないワードが次々と書き連ねられていく。
「まず、戦核が何で出来ているか?それはね…「召霊石」という特殊な素材と、「マテリアライズ合金」という独自に開発された金属とで形成されているんだ」
平賀先生は淡々と続けていく。
「それぞれの役割を説明するね!召霊石というのはその名の通り、"霊を呼び寄せる性質"を持っているんだ。ただし、霊といっても悪霊じゃない。うん、俗に"英霊"と呼ばれる類だね」
「問おう、あなたが私のマスターか?ってわけっスか!?」
家虎が何やらキモい質問をぶつけた。あいつ死なねぇかな。
「なかなか筋のいい質問だねーーー!」
マジか…。
「じゃあどんな英霊が呼び寄せられるの?って話になるよね?それを決めるのがこれ…縁だよ!君たち一人一人に、それぞれ運命で定められた縁がある。縁というのはね、"繋がり"のことだと思ってもらっていいよ。君たちが…何世代も前の前世の時代に結んだ縁、それを現代に紡いで呼び寄せるってわけ。それらの英霊を御魂と呼ぶんだ」
にわかには信じられない話だが…
「どうだい?ロマンチックだろ〜?」
「戦核の具現化の仕組みはどうなっているんですか?」
鈴鹿が質問する。
「君たちもよく知る通り、式鬼に対して通常の武器や兵器は意味を為さない。そこで用いられるのが…召霊を通じて具現化された戦核だね。具現化に必要なのはマテリアライズ合金と、そして言霊さ」
「マテリアライズ合金というのは、戦核をそれぞれの御魂が持つ能力に応じて武器の形へと変形する特殊な金属でね。もちろんこのままではただの金属だ」
「戦核を武器として具現化させるための具現詠唱。これが言霊の役割を担うんだ。言霊というのはね、縁で繋がれた英霊と心を通わせるための、いわば「呪い(まじない)」みたいなものだね。君たちは戦核に触れることで英霊と心を通わせ、その力を言霊を通じて現世に具現化させて借り受けるというわけ!!」
なるほど意味不明だ。
「クスリか何かやってらっしゃいます…?」
俺は恐る恐る聞いた。
「好奇心という劇薬ならキメてるよー!!」
平賀先生はすっげー嬉しそうにそう答えた。
戦核への理解を深める道は険しそうだ。俺は気が遠くなりそうだった…