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XIII-2暗黒の島

□□□


「子供」

膝に埋めていた顔を勢い良く上げました。驚いたことに、いつの間にか男の方が目の前に居たのです。

「あ……あなたは、闇の精霊さんでしょうか」

「そうだ」

異様に白い無表情な顔を崩さず、彼は答えました。何者なのかわかっただけなのですが、私はこの空間に独りぼっちではないとわかると、無性にうれしくなりました。

「あの、お尋ねしてもよろしいでしょうか。セリナ――私の友人は何処にいるのかご存知ですか?私、彼女とワグナー・ケイを集める旅をしていて、それで――」

「アルケモロスならここにいる」

「彼女に会わせてください」

「そのうち」

「本当ですか!?」

「そこでじっとしていろ」

闇の精霊さんはすっと闇に溶け込んでいかれました。


○○○


 陰気な蝋人形な精霊が姿を消してからしばらくして、ふと思いついた。ディスティニーと連絡はつかないだろうか。

 耳飾を2度叩き、応答を待つ。――やっぱダメか。精霊に近付くとダメだって言ってたっけ。

「誰か構って〜」

また1人ぼっちになった事が寂しくて仕方がない。

 ディムロスがいたらどうにかしてくれたのかな……。

 ああ……ここにいない人に頼ってもだめだ。意味がない。

 けど、暗闇だという事に変りはないが、心情的にさっきまでとは違っていた。闇の精霊がまた来るような事を言っていた。たったそれだけのことなのに、この闇に耐えられるんだ。それに、少しだけど、闇が薄くなったのも助けてくれてる。

「――あっ」

すうっと、無明の闇から溶け出すかのように精霊が姿を現す。

「お帰り!」

言った途端、人形の表情が崩れた。初めて人間らしい表情を見せる。けれども、それはすぐに消えてしまった。

「子供、目的は」

「あなたと光の精霊が持つワグナー・ケイをもらって世界の崩壊を止める」

今度はちゃんと言えた。説明すれば彼から何か条件を――

「あの詠か。……興味ない」

「………はい?」

「興味がないと言った。人間が死のうがこの世界がなくなろうが、私には関係ない」

「なっなんで!?なんでそんな……」

「私は、かの“力”に従うのみ。世界の破滅が望みならば、それに従う」

ロボットみたいな精霊とは逆に、

「“声の人”がそう望んでいるっていうの!?そんなの――だったら、どうして私たちに崩壊をくい止める方法を教えてくれたの!?」

我ながら感情を露に反論した。

「彼らの意図は掴めない。又、彼の事を教える事はできない」

「だからなんで!!」

「お前達はすでに深く関わりすぎている。我ら精霊はかの“力”について語らない。語ることができない。――これ以上この件に関して質問することを禁ずる」

禁じられてしまえばもう何も聞けない。ここは云わば、精霊のテリトリーなんだから、わたしを閉じ込めるなりなんなりできるだろう。

「じゃあさ、ナギに会わせてよ。この中に入ったはずなのに、いないんだけど?」

「……そのうち」

「ええ!?――あっちょっと!逃げないでよー!!」

また消えられてしまった。


 それから、何度か精霊は消えたり現れたりしながら、何気に話し相手をしてくれた。この闇は人間が長時間耐えられるものではないから、闇の精霊はわたしとナギの間を行ったり来たりしてるみたい。だったら、2人一緒にいさせる方が楽じゃないかって思うんだけど……どうも、そうもいかない理由があるらしい。

 そして、

「ね〜ぇ〜、お願いだからさぁ、いいかげんケイ譲ってよ!ナギに会わせてよ!!」

何度目かに再び姿を現した闇の精霊にダダをこねる。いい加減、飽きた。

「……そんなに欲しいか」

「あったり前でしょ!?それ集めなきゃ、わたしのせいで世界がなくなっちゃうんだよ!?そんなの嫌だ!」

淡々とした問いに、即座に答えた。すると彼はしばらく考え込み、

「本心か」

「もちろん」

「何があろうと、我らのケイを集めると?」

「今までもそうしてきた」

「ならば―――」














『ならば、お前達を試す』





















 「った!」 「きゃあ!」



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