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XII-7白銀の島

□□□


 今のは……何、だ……?


 何故セリナが、あんなところで寝ているんだ。


 彼女の下から染み出て、雪を溶かしているモノは、何だ?背中から突き出ているものは……何だ。


 アフェクは何をしている。


 彼女を茫然と見下ろす者は、誰だ。





 これは……悪い夢なのか………?





「おいおい、殺しちゃいねぇだろうな」




 しん……と静まり返っていた庭に、能天気な口調で俺と対峙している者が呟く。


 胸の中で、何かがぞろりと蠢いた。



 「どーした。さっさと運び出しやがれ!!片方だけでも確実に手に入れろ!!」


 引き寄せられるように、彼女の方へ足が動いた。


「おぉっと!テメェの相手は俺様だろう!?行かせねぇぜ!!」



 俺の行く手を阻む者がいた。



 何だ……こいつは……






 邪魔だ






「どけ」


「あァ?」







「どけ!!」







 “力”が、爆発した……









□□□


 「――――っ!?」

 突然、炎の風が吹き荒れた。熱風ってもんやない。本当に、炎を含んだ嵐のような風やった。降り積もっとった雪が見る見るうちに溶けてく。ワイは腕で顔を守りながら、風がどこから発生しとるのか探した。

 それはすぐに見つかった。

 アイツや。

 どないしたんいうんや?何でいきなりあんな“力”を……?

 相手しとった頭は、1番近くにおったせいでひっでー火傷を負っとった。それでも構えを崩さず、ニヤついとる。どういう神経しとるんや。

 ゆらり、と炎の塊が動く。ディムロスの周りを火を含んだ風が壁を作っとる。そっからこぼれた風が、ワイらに牙剥いてきやがる。おそらく、制御しきれんのやろ。そこら中で鎌鼬(かまいたち)が発生して、木やら人やらをスパスパ切ってく。幸運なことに今んところ、仲間にゃ当たってない。


 ―――と、ゆっくり歩いとったディムロスの姿が消えた

 思うたら、バタムラバの頭の右腕が消えとった。



 ほんまに、一瞬のことや。



 ワイがかろうじて見ることができたんは、アイツが頭の後ろで切り落とした腕を剣ごと灰にしちまった所だけや。どこをどう移動したのか、どう腕を切り落としたんかさえ、わからんかった。

頭ハンは自分の腕との別れに気付いたやろか?一歩も動けん内に延髄を峰打ちされて昏倒したから、気付いてへんやろなぁ。


「―――!?ちょお待てディムロス!!」


 頭を殺さんかった事にホッとしたワイは、次の光景に背筋が凍った。ワイは全速力で風の壁が消えたディムロスに駆け寄り、ウェーアードを振り下ろす手を止めた。こいつはおっそろしいほど無表情で、セリナ嬢ちゃんを刺した胸倉を掴み上げて、今にも串刺しにしようとしとった。

「おい!止めや!」

こいつが無表情なんは、ものっそー怒ってるっちゅー証拠や。それはどうにか感情を押し込めよう思うてる証拠で、少しは自我が残っとるっちゅー訳やけど……。

「放せ」

今回はちーっとばかしヤバイかもしれん。

「てこでも放さんで。殺したらあかん言うたのはお前さんやろ!お前は人を殺すためにその命救ってもらったんか!?」

「黙れ」

空いた左手が炎と風に包まれる。アカンわ……剣なしでもディムロスはこいつを殺せるんやった。

「やめぇ!お前はエウノミアルやろ。何のためにお前は選ばれた思うてんのや!!」

「黙れ!なぜ選ばれただと!?知ったとこか!!少なくとも、友人を、大切な人を失うためではないだろう!何故情に流されてはいけない。私怨を抱いてはいけない!?」

「そうは言っとらんやろ!お前は仕事に縛られすぎなんや。な?自分でもわかっとるんやろ?」

「…………」

すうっと、火と風が薄れていった。表情はまだ戻らんけど、少しは落ち着いてくれたみたいや。

「……すまない……」

静かに、ゆっくりと力が抜けてった。せやけど怒りはまだ残っとったらしく、逃げ出そうとした男を殴り飛ばした。こっ、こえぇ。

「セリナ!!」

ウォルターはんが相手しとったバタムラバの一味も、ここに転がっとる奴らのようにのされとった。

「セリナ…セリナ、ねえ……起きて?目を、開けてよ……セリナ…」

あーアカン。ナギ嬢ちゃん、泣き出してもうたわ。苦手なんよなーこういうの。

「……まだ、間に合う。シビア、治療所に連絡を。ウォルターとアフェクは彼女を中へ。トルバはバタムラバを縛り上げて牢番人に通知だ。―――カデナ、話がある。来い」

表情ないまま指示したディムロスは、喚くカデナを引きずって逃げるようにここから姿を消した。



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