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I-4長い一日

 「ここは…」

 わたしは真っ白な空間に立っていた。

「塔の中かな?何にもないね、ナギ」

「そうね。ここが塔の中なら窓があるはずなのに…」

 周りを見回しても、突き当たりも壁も何もない所だ。

 まるで処女雪のような、純白の世界。

 それにしても、一体どうやって中に入ったんだろう。私たちはただ壁を触っただけなのに。

『こんにちは。ようこそタイレイム・イザーへ』

低い機械音がしたかと思うと、突然辺り一面から声が聞こえて来た。

「な、何!?」

「どちら様でしょうか?」

声の主が見えないことにうろたえていると、のんびりとした答えが返ってきた。

『僕はディスティニー。ここに住んでいるモノさ。君たちは?なんていう名前なんだい?』

優しそうな声だった。それにしても、どこかで聞いたことがあるような…

「私、私はナギです」

『ふむ。よろしく、ナギ。そっちの子は?』

「わたしは…セリナ」

なんだろう。どうしてこんなにも懐かしい感じがするんだろう。

『よろしく、セリナ。二人ともいい名前だね。―――さて、顔も見せずにお話しするわけにはいかないよね。悪いけど、君たちから見て左の方に来てくれないかな。ずーっと行くと扉があるからそこまで、ね』

声はプツリと途絶えてしまった。

「セリナ、セリナ?どうしたの?」

ナギの声にハッとしてごにょごにょと言い訳をする。どうやらぼーっとしていたみたいだ。

 私たちは言われた通りに左へ道をとった。

 いくら歩いても景色が変わらないので、どれだけ歩いたのか、本当に歩いているのかわからなかったが、

「うわっ!」

目の前に突然丸いドアが現れた。横から覗いても、真っ白な空間が広がっているだけ。ドアだけがそこに存在していた。

 わたしとナギは視線を交わし、左右それぞれの戸に手を掛けた。

 ―――が、開かない。押しても引いてもスライドさせてもびくともしなかった。

「何で開かないの?偽物?私たち、騙された?」

と、混乱していると、またさっきの声が相変わらずのんびりと言った。

『ごめんよ〜、言い忘れてた。その扉を開けるには合言葉がいるんだ』

「合言葉、ですか?」

『そ。大丈夫、君たちも知っているよ。――ヒントをあげようか。君たちは、重い扉を開けるとき、なんて言う?』

「あぁ」

「「――スマトバーズ!!」」

『大当たり〜!!』

 すうっと、滑らかに扉が開かれた。

 中から漏れる光に目を細めながら一歩入ると、そこには―――


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